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試しにとりあえず三日ほど寝てみた。
『深刻社』とアップリテル家の賛同を得られたので、そうなるとあと必要なのは周囲の無理解、他人の無理解だ。俺が当主を継ぐに相応しくないと、誰もが納得できる確実な理由こそが、今回の件から見出された、数日間ぶっ続けで寝るという欠点。
いつか忘れるかもだからここに書くけど、これを思いついた時は我ながら頭いいと思った。
我が身で食らったから理解したことだが、おじいちゃんが俺に掛けた阻害系、眠らせる効力を持ったそれは、巷で知られている睡眠の魔法とは少々異なっていた。
便宜上名付けるならば、『仮眠』とでも言おうか。
本来の阻害系は、見る者が見れば、調べる者が調べれば、阻害系の影響を受けていることがわかってしまうはずなのだが、この『仮眠』はそれがない。ただ眠っているのと何の違いもない。
おじいちゃんが開発したのか、あるいはどこかの誰かから教わったのかはわからないが、いずれにせよ、なんとなくコツは掴めた。だからこそ、これを使って俺は次期当主の座から降りることにした。
つまり、いつどこでどのくらい寝るかわからない、非常に不安定な人間というレッテルを張られることで、貴族の次期当主など務まるはずがないと言外に示したのだ。
眠らされているのではなく、ただ眠っているだけ。
俺が五日間もの長い時間を寝続けても大した騒ぎにならなかった理由はそこにある。
自分で自分に『仮眠』を掛けて、俺に当主の資格が無いことを証明する。
とりあえず明日にでも、父さんに話してみようと思うわけだが、どこまで理解してくれるものか。あるいは、どこまで理解してくれないものか。
責任だけを俺に押し付けた二人には、きっちりと俺の思惑に従ってほしいものだ。
頭いいと前述はしたが、多分これは、おじいちゃんから俺への、最後の贈り物だったのではないかと思う。こうなるのがわかってて、だからそれから逃れるための手を用意しておいてくれた。
女装爺とか書いてごめんとは思うが、それはそれとして無責任だとも思う。
日記にここまで詳しく書く必要はないが、何かの理由で俺が記憶を失ったりする可能性が無いとも言えないので、まあまあ見られたら困る程度には書いておいた。いざとなったら燃やしてくれ。企みが無に帰すくらいなら燃やした方が本望だ。




