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 母さんが帰ってきた。兄貴の謹慎が解除され、近々卒業ということもあって、今を逃すと帰るタイミングを失うと思ったのかもしれない。それでも別に俺に何かを言ってきたりはしてこなかったので、思いの外俺は家族に恵まれていたわけではないことを再認識せざるを得なかった。

 頼れる兄貴、賢い婚約者、優しい両親。

 少し前まで俺の世界はそういう物で構成されていたはずだが、虚構が崩れる時は瞬く間だ。別にそんなはずがないとか子供みたいに駄々を捏ねるつもりはないが、何が駄目だったのかを考えたりはする。

 俺がもっと兄貴に気を遣ってればとか、ヒルドと親密になってればとか、親孝行をもっとしておけばとか、そういう、毒にも薬にもならないような想像を。

 結局、俺は何もかも持っているという勘違いをしていただけで、始めから俺の手の中は空っぽだったのだろう。笑えない話だ。笑い話になんてなりゃしない。

 怒っていない自覚がある。悲しくない自覚がある。それはつまり裏を返せば、俺が始めから何も持っていないことに無意識ながら気づいていたことの証明なのかもしれない。

 実際には失っていないわけだから、文句なんて言いようがない。


 案の一つとして記述するが、『探索者』になるのはどうだろうか。魔法の適性もそれなりに高いし、仲間に土壇場で裏切られても驚かない自信もある。人生のマイナスを、如何にプラスに変えるかという点で、なかなかありな選択肢では。

【メモ】

探索者になるなら


家を出る〇


卒業を待つ必要はない?〇

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