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昼頃に父さんが帰って来た。自分で言うのも何だが、出迎えた時の俺の威圧感は過去に類を見ないものだったと思う。ここ数日のストレスフルな環境が余程心身に支障をきたしていたと見える。
どこで何をしていたのかと半ば尋問のように聞けば、今日の朝まで意識が無かったのだという。『深刻社』に向かう途中、乗っていた車が事故を起こし、そのまま今朝まで病院にいたと。
その話を聞いて俺は、いや、二人揃って形容しがたい微妙な表情をしていた。
父さんの手荷物を調べればうちに連絡することは容易だっただろうし、事故のことも俺の耳には入ってきていないし、一昨日の様子から見て、アップリテル家の方も同様だろう。
その経緯自体が目覚めてから看護師に聞かされた話であり、信憑性は限りなく薄い。詳しく聞こうとしたがにべもなく追い出されてしまったという。
そもそも『深刻社』に向かっていたのは呼び出されたからであり、その要件もとにかく急ぎだからの一点張り。目覚めてから連絡してみればそんな連絡はしてないとのことで、話の全てに怪しさと不自然さしか感じられない。
事故に遭った記憶も無いとくれば、これはもう丸ごと嘘だと考えるしかない。どこかの誰かが何かを企んでいるのだ。
ここ数日の話をしたところ父さんから、アッセクア家が婚約破棄について知っていたのは父さんの記憶を読んだからではないのかと言われたが、父さんが行方不明になる前からドロア嬢は婚約破棄についての情報を手に入れていた。
だからこそ逆に、今回父さんが何かに狙われた理由が不明なのだけれど。
とりあえず俺がドロア嬢に情報の仕入れ先について聞いてみることになった。昨日もう声かけちゃったしなあという感じ。
兄貴の謹慎は今日限りだそうだ。今月が短いのを忘れていた。明日から三月。
学園を卒業した兄貴が、正式にテアマット家の後継者になる日が近い。




