2/26
何がどうなっているのかわからないが、将来的にこんなこともあったなと笑い飛ばせるようにという希望を込めてこうして文章に残す。日記というのはこういうものだと信じる。
昼過ぎにハドマトさんが訪ねてきた。来客だと言われた時は俺が応対しなくちゃいけないのか最悪とも思ったが、ハドマトさんだったら、当主として、今のアップリテル家がどうなっているのかを報告しにきただけだろうと気楽になった。そこまでだったが。
俺を姿を見たハドマトさんは、怪訝な顔で父さんはどうしたのかと訊ねてきた。俺としてはむしろハドマトさんの方こそ何か知っていると思っていたのだが、どうやら全く知らなかったらしい。
こうなるとオルボール家絡みの可能性が一番高くなるのだが、それこそ手の出しようがない。
俺にも関係がないわけじゃないからと教えてくれたのは、テアマット家とアップリテル家の共同事業である宝石加工の会社『深刻社』に、俺とヒルドの婚約破棄の噂が僅かに広まっているという話だった。
それはつまり兄貴とヒルドの浮気という醜聞が広まる前兆であり、情報が漏れた経緯について何か知らないかを訊きに来た、という要件だったらしい。それこそ俺が知りたい話だ。
ハドマトさんに隠す意味も無いと思い、ドロア嬢にも話を訊かれたということを伝えると、文字通り頭を抱えていた。後継ぎの長女の醜聞がこうも広まったらそりゃな。元後継ぎだった。
当事者の二人なわけがないし、テアマットもアップリテルも自家の醜態なんか広めるわけがないので、そうなると犯人に目星なんかつかないわけだ。
まあ、現状一番怪しいのはアッセクア家か。
ドロア嬢ではなく、狂気極まる現当主。
可能な限り噂の拡散を押さえるとは言っていたが、それも時間の問題だろうし、ハドマトさんも分かっているのだろう、肩を落としながら帰っていった。
父さんがいなくなって三日、婚約破棄してからおおよそ一か月。
状況は悪くなるばかりだ。




