快気祝い
読んで頂きありがとうございます。
今日は妹、、王女殿下ミラ様の快気祝いだ。
朝から城が騒がしく動いている。国をあげての催しらしく
勇者パーティーの皆はミラ様とパレードをするみたいだ。
城から城下におり正門まで行き帰ってくるルートらしい。
そして、映像と音声を伝える魔道具【ハイビジョン】という物で各国に勇者達を紹介するみたいだ。
僕にも声は一応来たが、遠慮しといた。
城を後ろにしてミラ様と勇者達クラスメイトは壇上へと登る。
僕は後ろの方で見ている。
「皆様、本日はこのような催しを開いて頂き感謝します。そして、暗い時代へと徐々に流れる今を明るい未来に変えてくれる勇者様方を紹介させて頂きます」
うん、やっぱり元気で笑っている方が良いね。
悪い虫がつかなければ良いが。
「僕は勇者 セイギ マジメです。僕達に何が出来るかはまだわかりません、ですがっ!僕は悪を許しません!僕の正義にかけてこの世界を救ってみせます!」
大きな歓声が鳴り響く。
勇者スマイルで民衆の心を掴んだみたいだ。
順にクラスメイト達が紹介されて行った。
なんだろう?真締のやつミラ様に近くないか?
少し動けば肩が当たる距離じゃないか?
ミラ様は嫌がってはいないみたいなので良いのか?
それより担任の変川のミラ様を見る視線が気持ち悪い。
何かしたら容赦しない、、
「最後となりますが、勇者様方は私達の身勝手な願いによってこの世界に召喚されたという事をどうか忘れないで下さい。勇者様方にも帰る場所帰りたい場所があると言う事を!
私達は支えていかねばならないのです!」
帰りたい場所か、、、僕にはもう、、
「ナナシ様?大丈夫ですか?」
カーティルさんが心配そうに声をかけてくる。
「あ、うん!大丈夫だよ」
無事何事もなくパレードは終わり城の中でパーティーが開かれた。
「勇者様方、今日はどうか楽しんで下さい!」
いつもより豪華な食事が並び、演奏が心地よく流れる。
ミラ様はクラスメイト一人一人に話しかけて行っている。
僕はそれを見ていたらミラ様と目があった。
やばい!逃げなきゃ。
別に逃げなくて良いのだけど逃げたくなった。
後ろを振り向き、トイレに行こうと扉を開ける時
「あ、あの!ナナシ様ですよね?」
遅かったか、、、諦めて振り返る。
僕はまだこの国の言葉は話せない事にしているので
頷き頭を下げる。
「お初にお目にかかります、私はミラ-フォーゼン-ヴァン-ラカスと言います。ナナシ様には翻訳術式が発動していないと聞きました、大変なご迷惑をかけてしまい申し訳ありません。何か不自由はしていませんか?」
まるで自分のせいみたいな悲しい顔をしてミラ様はいった。
嘘をついていることが嫌になる、、、兄だと伝えたくなる。
身振り手振りで大丈夫だと伝えた。
「そうですか、、お優しいのですね、なんでかは分かりませんが私はナナシ様ともっとお話がしたいです」
そんな、、喉から言葉が出る直前
「ミラ!なにをしている?そやつはお前が話す様な者ではないぞ?それと父上が呼んでいるぞ」
偽りの兄、シュヴァルツ殿下がこちらに歩いてきた、、、
ばれていないよな、、?
「そんな!兄様といえどそのような発言看破できません!
撤回してください!」
「出来んな、こやつは王の間を吐物で汚した下賎な者仮にも王族ならばそのようなこと許すわけにはいかない。
それより早く行った方が良いぞ?」
「この話は後でしっかり話し合いたいと存じます!
ナナシ様申し訳ありません。少しはずさせていただきます」
頭をさげてミラ様は王様の方に行った。
「思い上がるなよ、平民が。我が妹は慈愛に溢れている
貴様など本来ここにいて良い存在ではないのだ、分をわきまえよ!」
腹の底でなにかが煮えたがるが、我慢だ、
僕は大袈裟に怯えて頭を深く何度も下げる。
「ふんっ!どうやら杞憂であった様だな。
二度とミラに近づくでないぞ?」
なんであんたに決められなきゃいけないんだ?
その場所は僕の場所だっ!!と心の中で呟き頭を何度も上下する。それに満足したのか彼は去って行った。
「ナナシ様、、」
後ろで聞いていたカーティルさんがなんとも言えないようなかんじで名前を呼ぶ。僕は小声で
「大丈夫だから」と言った。
僕はそっと扉を開けて、自室へと戻りベッドに飛び込んだ。
くそがーっ!!
心の中で言ったこともないような汚い言葉で叫び続けた。
、、、どうやらいつのまにか寝てしまっていたようだ。
もう外は暗い。
「ナナシ様、お目覚めになられましたか?」
カーティルさんがそう言った。
「うん、ふて寝していたみたいだ」
「あの、、ご命令とあれば、シュヴァルツ殿下を暗殺する事も可能だと考えます」
怖いな、、カーティルさん、、でも、暗殺か、、
なんてね。王妃様も王様もミラ様だって彼を失えば悲しむ。
「それはだめだよ。僕はいいんだ」
「、、はっ!失礼いたしました。それでなのですが、お一つお耳に入れて頂きたい事があります」
ん?なんだろ?
「どうしたの?」
「ナナシ様とご一緒に召喚なされた、ワザト ヘンカワについてでございます」
あの人の話?
「あの人がなにかしたの?」
「メイド業の同僚が彼の専属使用人なのですが、最近様子がおかしく少し探ってみたのです。それでワザト ヘンカワは彼女に調教をしている事がわかりました。
私達はあらゆることを想定して召喚者達の専属使用人として選ばれました。なのでここまでならば態々報告はしないのですが、彼はシオリ ホウジョウ、ミラ様までもをその毒牙にかけようとしているのです」
豊穣さんとは関わりがないけどミラ様を?、、
確かにミラ様を見ている目が気持ち悪かったけど
調教師だからそんな事がまかり通るとでも?
「確証はあるの?」
「ッ! はい。探りを入れた時に自室で話していました」
そうか、、
「それで先程シオリ ホウジョウがワザト ヘンカワの部屋に行くのを見かけました」
「場所を教えてくれるかな?」
「御意」
僕はズボンのポケットの中に魔力創造で作った拳銃をしまい
自室をでた。使わないにこしたことはないが、、、
ありがとうございました。