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3.……いると思わせなくちゃいけないなんて!

お読みいただきありがとうございます!

変なサブタイですね。2話のと繋げてお読みください。


 玄関、廊下、階段、ついでにもう一回廊下で同様に優等生の受け答えをし、教室に着く頃には辟易した気持ちを表情に出さないようにするのに一苦労だった。


「ごきげんよう、皆さん。申し訳ありません、ご心配をおかけしました」

 集まってきたクラスメイトにもう何度目かの言葉を口にし、頭を下げる。

 良く言えば立派な淑女の模範的な礼、悪く言えば型通りの社交辞令。周囲には前者として受け止められたようで、逃げ場のない教室という空間で三十分間、自分を捨てた男と婚約者を奪った女を困り顔で擁護しつつ、傷ついた少女の演技をすることになる。


 ここ数日でヴィンセント達の登校時間は始業ギリギリになったと聞いていた。

 クレアが「皆さん、そろそろ……王族の陰口は皆様の家にとってもあまりよろしいものではありませんので」と解散を促せば、「やはりクレア様も本当は……」などと、思った通りの反応をしてくれる生徒も何人かいた。

 またこれで噂が回るだろう。クレアがヴィンセントの言葉に反論できなかろうと、それは王家の権力のせいだと。そして表立って言われることが減る分、影でのヴィンセントへの批判はより容赦のないものへと燃え上がっていくはずだ。


 始業五分前。教室の扉が開く。

 クレアは席を立つと、入ってきたヴィンセントとプリメラに小さくお辞儀をする。


「ごきげんよう。ヴィンセント様、プリメラ様」


 教室のほとんどの生徒が二人から目を逸らす中、率先してクレアが挨拶をしたことには、さすがのヴィンセント達も驚いたようだった。


「ご心配をおかけしてしまったとお伺いしました。申し訳ありません」


 ちなみに誰からもそんな話は聞いていない。

 社交辞令+ちょっとしたリップサービスだ。これ、結構なキラーパスよ? だって、ここで『心配していた』って一言言ってしまえば、この後の印象が良くできるもの。

 それなのに……


「ふんっ! お前の心配などしていない!」


 ほら。やっぱりそう言うと思った。キラーパス(絶好のチャンス)に殺されてちゃ世話無いわよ、本当。

「ほんの少しも……ですか?」

 変なところで意地を張るから、こうして見す見す付け入る隙を与えるのだ。


「わたしは食事が喉を通らず、夜も眠れないぐらいに苦しかったというのに! 忘れたいと思うほどあなたの顔が思い浮かんで、夢ならいいのにと何度思ったことか……それでもヴィンセント様は、わたしがどうなろうとも全く気にならなかったというのですね!!」


 ()()()()涙を流し、声を荒げる。

 令嬢としては見苦しい行為。けれどだからこそ、令息令嬢の集まるこの教室では、それが本気の言葉として彼ら彼女らの目に映る。


「いや、その、少しぐらいは……」

「嘘ですっ!! ヴィンセント様は四日前まで婚約者だったわたしのことでさえ、なんとも思ってないのでしょう!?」


(ってか、普通に『テメェなんか嫌いだ』ぐらい言えねぇのか、皇子様よぉ? 婚約破棄騒動で大々的にやらかしてんだから、今更外面取り繕ったって無駄だって気付かねぇかなぁ……まぁ貴族連中は噂が大好きみたいだし、そう言えないように仕向けたのもわたしだけどな)


「……どうしてよりにもよってあんな方法で!! わたしに嫌われれば罪悪感が薄れるからですか!? それともわたしが何を感じようと関係ないからですか!?  せめて正規の手順を踏んでくだされば、心の準備もできたというのに!!」


(夢見がちな皇子様よぉ、『本当の愛』だの何だのってメルヘンな言葉は言わせねぇぞ? 『正式な手順を使わなかった王家の落ち度』って方向に論旨が挿げ替えられたことにさえ気付いてねぇみてぇだがな)


「王家の正式な言葉があれば、わたしも父も婚約解消に頷くしかなかった。それだけの権力も、表面上は穏便に済んだように見せる方法もあったはずでしょう!?

 それなのにヴィンセント様は、公衆の面前でわたしを(はずかし)めて……わたしが無様に這いつくばる姿も、感情を抑えられずに大声を上げる様も、そんなに見ていて楽しいですか!?」

「言い方ぁぁぁぁっ!!」

「えっ? あっ……」


 自分が何を言ったのかを気付き、さすがのクレアも頬を赤らめる。

 アメストリア家は武門の家系なので、男連中の話す下ネタにはクレアもそれなりに耐性はある。

 それでも自分で言ってしまったことにはさすがに羞恥の気持ちがあり、同時にまだちゃんと乙女の心が残っていたことにクレアは安堵した。


(いや、狙って言ったわけじゃねぇんだけど……こりゃ昼休みの噂の種は決まりだな)


 始業のチャイムが鳴り、担任が教室に入ってくる。

 クレアの最後のポカのせいで、張り詰めていた空気はどこかへ飛んで行ってしまったようだった。



クレアは策略家でもあります。でもときどきポカします。

戦っても強いですが、その話はいずれ書ければと思います。

強い女の子に書けるといいなぁ……


打って変わって、すてらはメンタルが絹ごし豆腐です。

ブクマ、評価、感想、レビューに飢えています。

餌付けしてくれる方、いつでもお待ちしております!


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女子高生異世界コメディ書いています。
異世界転生した瞬間、目の前に魔王がいるんですけど、それってちょっとヒドくないですか?

コメディ多め、ちょびっとシリアス。勇者な少女の武勇伝です。
良かったらこちらもお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 意外と乙女なクレアカワイイ でもその有効性を冷静に分析するところはカッコいい
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