表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/39

16.未だ心は騎士として

皆様。ブクマ、評価、感想等、いつもありがとうございます^-^




 バンッ――――――、


 盛大な音を立てて、ダンスホールの扉が開く。

 それと同時に、クレアは駆けだしていた。


(足音は三十人ほど……けれど、一度に扉を通れる人数は限られている!!)


 人影が見えると同時、クレアは跳躍してその首へと短刀を叩き込む。倒れる襲撃者の剣を奪うと身体を回転させて一閃、二人目の頭を叩き割った。


「「なっ……」」


 言葉を失う襲撃者達に剣を向けて牽制しつつ、クレアは考える。


 今の第一騎士団は、単身で警備を突破できるほど甘くはない。ならば取る方法は、侵入する部隊と警備を妨害する部隊を作ること。建物まで入ってきた襲撃者はおそらくここに居るだけだろう。

 三十人ほどの襲撃者達は全員がフードの付いた黒いローブで顔まで隠し、その手に剣を持っている。破落戸(ゴロツキ)には持てないような、最低でも軍支給品レベルの品質の剣だ。少なくとも民衆の反乱ではない。


(貴族か、愚王か、はたまた他国か……どれかが絡んでやがるな)


 敷地の外からも剣撃が聞こえる。おそらく人数は全部で二百ほどだろう。となると第一騎士団は、たった百人で百七十人を抑え込んでいることになる。

(ほれ見ろ。やりゃぁできるじゃねぇか!)

 じゃぁこっちも頑張らねぇとなと、クレアは深く息を吸って気合を入れる。


「不躾なお客様ですこと。ドレスコードのなっていない方はお帰りくださいませ?」


「ナメてんのかぁぁっ!?」

「ブッ殺してやらぁぁ!!」

 襲い掛かってくる二人。扉の片方は事前にクレアがロックを掛けていたので、正確には『二人しか同時に襲い掛かれない』のだ。

 クレアは催眠魔術を両手に展開する。効果は微弱。けれど感覚を一瞬だけ麻痺させる程度の効果は出せる。

 襲撃者の肘の力が抜けるよう魔術を掛け、敵の手の上から剣の柄を握り、押し返す。

 二本の剣はそれぞれの襲撃者の喉へと突き刺さっていた。


「皆さん、お聞きください!!」


 続く襲撃をダンスホールの入り口で防ぎながら、クレアが叫ぶ。


「現在、外では百五十人以上の襲撃者を第一騎士団の皆様が抑えてくださっています! 西側の扉から外に出ることができますが、安全とは言い切れません! アメストリア家のアベルとカインが誘導いたしますので、指示に従ってください!! 兄さん! 最優先は皇族の方々とプリメラ様、次いで宰相閣下よ!」

「分かっている! クソっ……クレア、そちらは任せたぞ!」

「時間を稼げばいい! 避難を済ませたら戻ってくるから!!」

「ええ。ですけど、倒してしまっても構わないのでしょう!?」


「クレア、俺も残るよ!」

 ヴィンセントの言葉に、クレアは舌打ちする。

「邪魔です足手まといですお荷物です、あんたは要警護者だって言ったつもりだったんですけど話聞いてましたか、このお馬鹿!! あんたがこの国の王将(キング)なのよ。愚王は死んでもスペアはいるけど、あんたの替えは居ないのよ!」

「だが君一人に任せるなんて……」

「余裕よ、あんたが居なければね! 大丈夫、わたしは死なないわよ。この戦いが終わったらわたし、結婚するんだから!」

「えっ、誰と?」

「あんたじゃぁぁぁっ!! わたしははやく政治にがっつり干渉したいの! この国を立て直したいのよ!! 分かったら早く逃げなさいっ!!

 フォルクス様、ガイル様、すみませんがこの馬鹿お願いできますか!?」

「ああ、悪いがそうさせてもらうよ!」

「クレア嬢、君もどうか無事で!」


 二人がヴィンセントを引きずっていくのを横目に、クレアは七人目にとどめを刺す。

 しかし次の相手へ振り下ろした短剣は受け止められ、そのままクレアは押し返される。


「よぉよぉ、大人しくしてもらおうじゃん!?」


 女の声。不敵に笑う口元だけが目の奥にこびりつく。この女だけは別格だと、ただ一度の剣撃でクレアは悟った。

 クレアが押し返されたことで、襲撃者達がダンスホールへとなだれ込む。クレアは女と距離を取り、催眠の魔術を添えた針を襲撃者の背後から投げつけた。


「――チッ、針が足りない!!」


 三人、取り逃がす。

 西の扉へ向かう襲撃者へ短剣を投げて、まず一人。握った剣を振りかぶって追いかけ、背後から左胸を突き刺して、二人目。

 しかし最後の一人は、すでに丸腰のヴィンセント達へと迫っていた。

 クレアが間に合わないと悟った、その時だった。


 ズドンッ――――――


「えっ……」


 ヴィンセントと襲撃者の間の床に、魔術で作られた氷柱が突き刺さる。

 襲撃者が足を止めたこの好機に、クレアは襲撃者の首を跳ね飛ばした。


「あの氷柱は……」


 辺りを探すが、既にそこには誰もいない。

 どこからか火の手が上がったようで、次第にダンスホールが炎に包まれていく。


「余所見とか余裕じゃん!? 安心するとか早計じゃん!? アタイがまだいるって、忘れられたら寂しいじゃんよぉ、なぁ!!」


 背後からの斬撃をクレアは屈んで回避し、足払いで女を転ばせる。しかし女はクレアの胸倉を掴んだ。咄嗟に応戦しようと構えた剣はその手から弾き飛ばされ、床に背中を着いたのはクレアの方だった。


「あんたの顔、腕、胸、腹、きれいな身体全部!! 滅茶苦茶のぐちゃぐちゃにしてやっから、泣き叫んで喚き散らして吐瀉物と糞尿垂れ流して無様に死んじゃえばいいじゃんよぉ。あぁもう……想像しただけで(たかぶ)ってきちまうじゃん? なぁ!?」


「くっ……」


 そして襲撃者の女は、笑いながらその手の剣を振り下ろした。




     //////////




 翌日。舞踏会で起きた襲撃事件が新聞に載った。


 襲撃者は総勢二百二名。うち百八十五名死亡。第一騎士団が五十名程度を捕縛したものの、仕込まれていた魔術によりその全員が死に至ったという。

 皇族所有の舞踏会館は全焼。消火活動は尚も続けられている。


 奇跡的に、舞踏会に参加していた皇族、貴族、従者、料理人、使用人に死傷者は無し。

 ただし、行方不明者が一名。




 更にその翌日。事件から二日経った朝。

 焼け落ちたダンスホールの中で、一人の女性の遺体が発見される。


 その遺体は、手に握っていた短刀とドレスに付いていたブローチから、クレア・アメストリアのものであると断定された。




第一章はここまでとなります。第1.5章を同時掲載しましたので、そちらもご覧ください。

おそらくこの幕引きは賛否両論、好き嫌いが分かれると思います。

よろしければ評価や感想等でお知らせいただければと思います。

(先の展開は決めてますが、それとは別に興味があるのです)


第2章から(次話から)は、不定期更新となまります。

これからも、何卒よろしくおねがいします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女子高生異世界コメディ書いています。
異世界転生した瞬間、目の前に魔王がいるんですけど、それってちょっとヒドくないですか?

コメディ多め、ちょびっとシリアス。勇者な少女の武勇伝です。
良かったらこちらもお願いします。

小説家になろうSNSシェアツール
小説家になろうアンテナ&ランキング
小説家になろう 勝手にランキング
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ