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やゆよ  作者: 毛 飛猿
4/5

失われたのは意外な物。馴染み深い不思議な話

一人の男の子は激昂性質なのか、唯一男で泣きながら何かを訴えていました。二校、前半の課題曲で、八十年代前半に国を代表するヒットメーカによってつくられた誰しもが口ずさんでしまう歌謡曲。なだらかな曲調に誰しもが身に覚えのある切ない気持ちを巧妙な擬人法で表した歌詞。その曲を選んで歌った二つの高校の生徒らが泣き、悔しがる。


指定された自由時間の終わりが迫り、各校の生徒らは家族や友人に別れを告げ、控え室に戻り前半戦の結果を知らされ、後半戦の歌う順番を聞かされる手順。様子がおかしい、二校の生徒らはなかなか控え室に帰ろうとしない。家族らが、時間が迫っているようだからと促し、主催者側の係の大人が傷ついた他人の子供を親の目の前ということもあり、より一層、丁重に控え室に帰るようにと導く。


ホールからようやく歌い手の高校生らの姿がなくなった。しかし、泣いていた二校の家族らが腑に落ちないように「どうしたものか」と全国大会のこの一日のためにこれまでの夏休みを献上して頑張ってきた我が子の泣く姿に複雑な感情が生まれていた。親心というものなので理解の範疇なのだが、不機嫌な主催者側の人間が慌てふためいて右に左にとホールを駆け巡るのが気掛かり。五十代前半の音響責任者が梅干しのように真っ赤な顔をしている。


運営関係者が二校の顧問ではなく、部の部長先生に必死に説明している。一人の部長先生は冷静な対応でいるが、優勝に手が届くと予想されていた私立校の定年間際の部長さんは「納得がいかない」の一点張りで、後半の歌う順番の再考慮をするように係の人間にすごんでいる。前半で主催者側による音響の不備があり、選曲制度を取り入れ、歌謡曲を選んだ二校だけが、被害を受け減点された。歌い手も肌で体感できるほど不備だったということになる。


予定された各校の自由曲による後半戦は時間がきても始まらなかった。


「どうしてだ?きちんと点検したのではないのか?」とコンクールに責任ある男が本部で部下らを並べて説教していた。頭ごなしに怒られ、不満げな部下ら。気概がある部下の一人が意見を言った。


 「ええ。ですが、人員不足です。そもそも、担当がまだ来ていないんです。僕らもその中で最善を尽くしたのですが見当たらないです。」


 「本来ならば始まる前に全て運ばれていなければいけないものを!!いつ気がついたんだ!?」と責任ある男が問いただす。


 「インターの高校が先陣を切るので英語を先に運びました。担当がいなく、皆それぞれの仕事で一杯でした。本部に戻ってきてまだ金庫が開けられていないのでまさかと思い、中をみるとびっしりつまったままでしたので、前半の歌う高校と課題を確認して運びました」青年係員のまっとうに仕事に向きあう姿勢に責任ある男もそれからは問いただす真似はしなかった。

青年は合鍵を使って金庫を開け運んだ。コンクールを始めるためにとった最善の行動。生徒らが舞台に立つ前にステージの所定の箇所に並べる。よって歌い手は発音し、エンジニアは音として聞き手に音の波として伝えることができる。英語26、かな文字50に同数のカタカナ文字に加え濁点二種類。本来の仕事を終え、運ばれていないのに気がついた係らが本部からステージへ一つ一つ運んだ。一番最初が英語26を利用するインターだったので先にアルファベット26個を運び、所定の位置へと並べる。


 一組目が歌っている最中にかな文字らをなんとか並べようとした。責任ある男は係らがきちんと運び、並べているのを確認し、あとは残らず同じ作業を繰り返すだけだったので、自分は運ぶ作業から抜けて全体の再確認に回っていた。ホウレンソウが行き届かなかったようだ。二組目の課題曲は日本語の合唱コンクールの定番ソングを見事な練習に練習を重ねたという出来栄え。三組目に馴染みある歌謡曲、観客の中にはもろに世代で、この曲と共に青春を過ごした人らはイントロを聞いて手を叩いて喜ぶ。

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