表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/32

神の手


李儒りじゅ(文優)は、董卓の政治参謀である。

極めて有能な政治家でもあるが、元々はこの国に12人しかいない博士でもあった。

ありとあらゆる古典に通じており、物事の吉兆も的確に知ることができるという。

それだけではない。ついこの間、先帝と太后が投身自殺をしたと言われるが、直接手を下したのがこの男だと噂されてもいる。多分、本当の事だ。

学問の真髄を極めた人間が、こうも冷静に非道徳的なことができるものなのか、それとも、“だからこそ”なのか、俺にはわからない。

ただ、この李儒という男が、董卓の腰巾着のような者どもとは異質の存在であることは確かだろうと思う。李儒は、天文や易学の研究を通して、むしろ自分の手で「天意」を実現しようとしているのかもしれない。

彼は董卓の命や忖度によって帝を殺害したのではない。そうではなく「天命によって」自発的に、帝殺しをしてのけたのである。ひょっとすると董卓などはこの李儒によって操られているだけの人形に過ぎないのかもしれない。俺は李儒のあの落ち窪んだ暗い目を見ると、人間ではない何かと話をしているような、得体のしれない恐ろしさを感じるのだ。


「奉先どの。あなたは異国の本を研究して居るそうですな」

ある時李儒が俺に語りかけてきた。

「大秦国の本であろう?」

「李儒どのはあの本を知っているのですか?」

「この世でワシの知らぬことなど、在ってはならぬのだよ。森羅万象を把握し、天の意思を上申することが本来の私の仕事なのだからね。君が傾倒している安理巣徳アリストテレスという者も”我々”と同じような考えを持ってたのだろう。」

そう言って不気味に笑った。

「呂将軍。この世は五つの属性と陰陽で成り立って居る。君の生まれた年月はいつだね?

ならば属性は火だ。火の属性が陽の気を放っている。漢王朝は土の性質を持つ王朝。火は土を生む。

君のような英雄が居る限り、漢王室は安泰であろう。」

そういうと笑って宮中の闇に消えていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ