さいきょうの、きしだんちょう
ブックマークや感想をありがとうございます。
やっぱり、このお話は入れたいよねっ、というわけで、アグニスさんのお話〜♪
それでは、どうぞ!
私の名は、アグニス・ドルク。一年前、栄えあるリーリス国で騎士団長という役職を賜った男だ。王家からの信頼も厚く、この国で最も強い男として、己の体を鍛える日々。
「ありがとうございました」
そんな私には、とても優秀な弟子が居る。いや、弟子、という言い方はおこがましいかもしれないが、私にとっては、大切な弟子であって、心の中でそう思うことくらい許してもらおうと考えている。彼の名は、イルト・ラ・リーリス。このリーリス国の第二王子であり、黒目黒髪であるがゆえに、不遇な人生を送ってきた王子だ。
「お強くなりましたな。殿下が王子という立場でなければ、息子にしたかった」
「それは無理です。僕は、ユミリアの婚約者の立場を揺るがすようなことは、絶対にしたくないので」
一年前、フィアス侯爵家当主であり、当時、騎士団長であったその人は、なぜか、修行の旅に出たいと宣言して騎士団長の地位を返上し、自身の弟に領地を任せてこの地から旅立った。私は、副団長であったため、自動的に騎士団長という地位へ就く。ただ、前騎士団長と私の実力は五分五分であったために、イルト殿下の剣術や体術に関しては、私と騎士団長の二人で教えていた。
殿下は、昔から筋が良く、婚約者を守りたいという純粋な気持ちで鍛錬を積んでいた。初めて出会った時はどう接して良いのか分からない、雲の上の人ではあったが、今では、かけがえのない教え子。だから、私の言葉に、殿下がそう返すことは分かりきっていた。
「殿下がそこまで想っておられる女性ですか……いつか、お会いしてみたいものですな」
噂では、彼女は黒の獣つきらしいが、大切な弟子がこんなにも想う相手が悪い者であるはずがない。殿下を相手に畏れ多いとは思うが、殿下のことは、息子のように大切に思っている。だから、いつかは、どんな方なのか会ってみたかった。
「……騎士団長を辞めないのであれば、ユミリアと会っても構いません」
すぐに叶うとは思わずに呟いた言葉に、殿下はそんな許可をくださる。
「よろしいのですかっ!?」
「後で、誓約書にサインしてもらいます。その内容に納得できたのであれば、次の休みの日にでも行きましょう」
そんなおかしな言葉を、私は疑問に思うことなく受け入れる。誓約書には、アルテナ嬢の家で何を見ても、何を感じても、騎士団長を辞めることは許さないといった内容で、特に問題はないとばかりにサインをした。……してしまった。
よく考えれば、前騎士団長は辞める前日に、殿下と出かけており、その行き先がアルテナ家だったのだが、私は、そこまで頭が回っていなかった。ただただ、殿下の想い人を見てみたい一心で、そんなことを忘れていたのだ。
次の休みの日、騎士団長の私でさえ目にも止まらぬ速度で鍛錬する使用人や、ドラゴンを担いで調理をするよう料理長らしき人と話すメイド、フェンリルと思われる魔物を手懐け、時折鍛錬に参加して、とんでもない手練としか思えなかった使用人をあっさり下すアルテナ嬢。そんな光景を目撃した私は、翌日、寝込み、ようやくあの誓約書の意味を理解する。
リーリス国最強の男と呼ばれる私は、アルテナ家で目撃した悪夢に魘される日々を送ることとなった。
プライド、バッキバキのボッロボロ♪
いやぁ、こうやってへし折るの、楽しいなぁ〜。
それでは、また!