表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/17

神田じじの謎

神田じじの謎



子供たちは夏休みの絵日記を書き終えると、いつものように神田じじのいる畳の部屋をを訪ねた。


愛ちゃん「じじ、遊んで…」

純ちゃん「じいちゃん、夏休みの宿題手伝って…」


しかしこの日は声をかけても返事がなかったので、子供たちはつまらなそうにリビングに戻ってきた。

神田じじは部屋の中央に座っていたが、一言も発せず微動だにしない。


純ちゃん「パパ、畳の部屋のじいちゃんから返事ないんだよ」

如月誠「どうしたんだ。じいさん、この二、三日座禅に凝ってるのか。

愛ちゃん、純ちゃん、今日はパパと出かけようか?」

サッチィン「みんな、反応なしね。すっかり、じいちゃんを頼ってるから」

愛ちゃん「パパ、じじはどうしたの?」

如月誠「じいちゃんも何か大事なことがあるんだろうぜ。

愛ちゃんもあるだろう」

愛ちゃん「うん」

如月誠「偉いぞ」

サッチィン「じいちゃんはマーチャンには話をしてくれそうだから、

聞いてみてくださいな」

如月誠「わかった」


夕食の時間が近づいたころ、如月は畳の部屋のじいちゃんを訪ねた。


如月誠「じいさん、開けるぞ…。畳の部屋で座禅か。それとも何か妙なことでもあったのか?子供たちが話しかけても全然返事がなかったんで、心配していたんだぞ」

如月の問いかけに反応し、じいちゃんはようやく口を開いた。

神田じじ「あ、マーチャンか、ちょうどよかった。

磁場ゼロに行った時、少し話をしたことだが…」

如月誠「あー、あのことか。磁場ゼロは巨大断層地帯で

中央構造線がある。だから地球のエネルギーが凝縮されている

ところだよな」

神田じじ「その通りじゃ。そしてその中央構造線上に

諏訪大社と伊勢神宮がある」

如月誠「そうだったのか。それであの場所は何か得体のしれない力が働いているのを感じたんだ」


じいちゃんは突然まじめな顔つきになった。


如月誠「じいさん、今日はいつもの『エロじじい』じゃないな。

オーラが強すぎる。じいさんはその伊勢神宮と関係があるのか」


如月も真剣な顔で迫ってきたので、じいちゃんはついに自身の正体を明かした。


神田じじ「あるも、ないも、わしの本当の名は神田明神でな」

如月誠「俺もなんとなく気づいていたんだが。やっぱりな…。だから、悪い心を持った人間にはじいさんの姿が見えなかったわけだ」


じいちゃんの夢と二〇二三年九月X日について


神田じじ「もう大方のことは知っておったのか?それなら話は早い」

如月誠「最初にじいさんと会った時、『わしが見えるのか』といった。

神田大と名を明かしたので、いろいろ調べてみた。

マジックといって術を使ってた。サッチィンやみんなに

渡したアイテムは、霊気増幅装置だな」

神田じじ「さすが、マーチャン、いや如月誠。

君にはすさまじい潜在能力と分析力がある。

そしてサッチィンは諏訪大社の神主が父で、武道家の母を

持つその力は無限大。まだ、知らないだろうが、純ちゃんと

愛ちゃんの隠された能力がすごいしな」


神田じじは神妙な顔つきになった。そして神田明神としての思いを少しずつ語り始めた。


如月誠「それで、じいさん、いや神田明神。俺たち家族全員の細かいところまですっかり見抜いていたんだな。ところでこれからどうしようというんだ」

神田じじ「今から話す」

如月誠「だけど、ずっと疑問に思ってたんだが、神様は人間には普段見えるはずがないだろう?それなのになんで人間の姿になって現れるんだよ」

神田明神「これも術でな。神通力じゃよ。

人間に見えないとわしの『夢』も叶えられないしな」

如月誠「叶ったのか?」

神田明神「ああ、あれは本当のホンマものでな。

ここに来て人間の温かさと親子の良さを体験させてもらったよ」

如月誠「そりゃ、よかったな。それで、本題はなんだ」

神田明神「二〇二三年九月X日は本当に危機がやってくる。

それを阻止したい。協力してもらえないだろうか」

如月誠「神田明神様に頼まれて、『いやです』というヤツがいるか。

それこそ、バチアタリだ」

神田明神「なるほど。それとこの三日、あるお方に通信して、

協力していただこうと思ってる」

如月誠「神田明神様より、偉い方はどちらにいらっしゃるんだ」

神田明神「今日、ここに来られる」

如月誠「えー。本当に来ちゃうのか」


出雲と伊勢と神田明神


神田明神は急に立ち上がって、両手を上から下に円を描くように

回して体の正面の胸あたりで、左手を表にして、右手はグーに結んで

よー、ポンと手を叩いた。


神田明神「ぽん…。どうぞ、こちらへ。むさ苦しいところですが

お座りください」


如月の目の前に突然二人の人間が現れた。

いや、人間というより人間の姿をした神といったほうが良いのだろうか。

さすがの如月も予期せぬ出来事に面食らっていた。しかも二人は如月のよく知っている人の姿をしていた。


如月誠「むさ苦しいって、おれの家だぞ。それよりなんで『ぽん』とか、いったい何の合図だ?それに何でおれの知ってる人間の姿で現れるんだ。まぎらわしいんだよな」


日本の神々は時々人間の姿で現れることがあるらしい。

如月がよく知っている人間が二人も現れたので、彼の狼狽ぶりは尋常ではなかった。


神田じじ「そのお二方は天界でいつもいっしょだから頼み安くての。

それに如月の潜在意識にある人間の姿が一番使いやすい。

今後の計画の中にあるでな」

如月誠「あるでなって…、その姿はまずいよ。サッチィンにばれたら、

おれ、殺されるぞ、まじで、やばい…。わー、ほんとに来た」

伊勢の神「わたくしは伊勢の神です」

出雲の神「私が出雲の神です」

如月誠「どうして、伊勢の神がおれの幼なじみでモトカノの姿なんだ。

それに、どうして出雲の神が駅前のスナックみどりのママの姿なんだよ」

伊勢、出雲の神「このほうが、後々よろしいと神田様がおっしゃった

ものですから。あら、ハモリましたね」

如月誠「あなた方、息が合ってますね、はい」


そんな言葉を返した如月だったが、内心は穏やかでない。二人を直視するのも気が引けるし、心臓の鼓動も早くなっている。さらに動揺で汗も出てきた。それで少しうつむき加減になっている。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ