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ボランティア活動参加のため多摩川の土手に行く

ボランティア活動参加のため多摩川の土手に行く


夜とは違って昼の多摩川はさわやかで、時折吹いてくるそよ風の心地よさを神田じじは感じ取っていた。


神田じじ「こうして多摩川の土手を歩くのはいいものじゃ。ボランティアとは何をするのかの」

サッチィン「毎月、一回、土曜日に議員の間黒先生と近所の方で、ゴミ拾いをしてます。多摩川をきれいにすれば気持ちがいいですからね」

純ちゃん「ママ、ゴミひろったよ。神田じいちゃんはできる?」

神田じじ「ほ、ほー、純ちゃんはすごいの。やってみようか」

愛ちゃん「ママ、愛ちゃんもひろう」

サッチィン「愛ちゃん、ありがとう」


サッチンは遠くのほうから誰かがこちらに向かって歩いてくる姿を確認した。どうやら地元の議員の間黒氏のようである。

間黒先生は多摩川の土手を見回りながらサッチンに近づいて来た。毎度のことだが、今日も何か忙しそうな様子である。


間黒氏「如月さん、毎月ご苦労様です。よろしくお願いしますよ。

ゴミ袋はいつもの二子玉川の駅で回収します」

サッチィン「おはようございます。わかりました。あー、間黒先生…。気がつかないで先に行かれたわ。神田さんを紹介しようと思ったのに、      まるで全然見てなかったような…」


間黒氏が去った後、じいさんはサッチィンに質問した。


神田じじ「間黒先生とはどういった方かの」

サッチィン「この付近にお住いの方です。地方議員を四年やっていらして、二子玉川駅の開発にたずさわったり、行政に関して多くのことを手掛 けていらっしゃったりしています。ちょっと噂耳にしたこともありますけど…」

神田じじ「噂ですかいの?」


ゴミ拾いを終えた神田じじとサッチンは、二子玉川駅近くのごみ集積所にやってきた。いつもの近所の奥様方が五、六人集まっていてワイワイ、ガヤガヤと話をしていた。ボランティアでごみ拾いを続けている人たちなので、今月もみんな頑張ったわねと慰労の言葉を掛け合っていた。


サッチィン「あー、奥様、おはようございます。ご苦労様です」

近所の奥様方「毎月、あなたも偉いわね。こちらの方は?」

サッチィン「主人の知人で神田さんです」

近所の奥様方「まあ、神田様、お疲れ様です。では今日のお仕事は終わりましたので、私たちは帰宅いたします。ごきげんよう」

神田じじ「お疲れ様ですじゃ」


大人たちだけで会話をしていたので子供たちは退屈し、疲れた様子でぐずってきた。


愛ちゃん「ママ、愛ちゃん、がんばった。おなかすいた」

サッチィン「みんなありがとう。いつものお店にいきましょうか」

純ちゃん「わーい、やったね」


二子玉川の商店街


子供たちは神田じじの手を引いて、商店街を歩いて行った。

二子玉川の駅はちょっとおしゃれなお店が多い。

その中に、サッチィンお気に入りのお店があった。

閑静な住宅街の中にある隠れたお店だ。一見すると何の変哲もない民家のようである。


サッチィン「ここが、いつも行くお店。月一回、皆へのご褒美なんです。

子供たちの好きなハンバーグやパスタなど、和食もありますよ」

神田じじ「いい感じじゃ。ママさんはセンスがいいの」

店員 A「いらっしゃいませ。四名様ですね。

お客様、何を召し上がりますか?」

サッチィン「きょうは、ランチタイムメニューのこれで、

子供たちはお子様セット。神田さんは何がいいですか?」

神田じじ「わしもランチタイムメニューのこれにするかの」

店員 A「かしこまりました」


この店の特徴は家族連れでも気軽に食事ができることだ。

そのうえファミリーレストランのようなせわしない雰囲気でもなく、時間を気にせずゆっくり食事ができる。

店員に対する教育も行き届いていて、接客態度もよく、料理はおいしそうに盛られているし、食器類も素敵な絵が描かれている。

もちろん味も最高だ。


サッチィン「神田さんから頂いたペンダント、水晶ですよね。

これつけていると、いつもより力が溜まってくるのですが、

これは魔法ですか?」

神田じじ「ママさんは鋭いの。そのペンダントの力はこれから必要な時がきますじゃ」

サッチン「そう…何か楽しみね」


家族の会話の妨げにならないよう店員は気を使いながら、食事を運んできた。


店員 A「お食事をどうぞ。ごゆっくり」


実はお店の中に入った時から、何者かが如月家のみんなの様子をうかがっていた。

サッチンはお店に入った時からなんとなくその視線が気になっていた。

端のテーブルから、男がこちらを見ているようだ。サッチンがそちらのほうに顔を向けると、男は目を合わせないようにする。


純ちゃん「ママ、あのおじさん、さっきから何度もこっち見てるよ」


サッチィン「あー、あの方、以前、如月のおじいさんの骨董品を

見てくれた人で、宗谷さんだったかしら…」

神田じじ「なにか、けげんな顔ですな」

サッチィン「宗谷さんは一見、人の良い顔立ちですが、裏では良くない取引に手を染めているという噂もあるらしいです。表向きは有名な骨董商ですが最近世間の評判は悪いようですね」

愛ちゃん「ママ、あのおじさん、こっちにくるよ」


宗谷は何かを確かめたいという雰囲気だった。彼の目に映ったのはサッチンと二人の子供だけだった。どうやら、神田じじの姿は見えていないようである。三人しかいないテーブルに四人分の食事が出されているの見て不思議に思ったのだろう。


宗谷「しばらくです。たしか如月さんでしたか…。

皆さんこんなにたくさん食べるんですか」

サッチィン「えー、いいえ。こちらの神田さんが…。

宗谷さん、見えませんか?」


宗谷の顔つきが険しくなった。理由はわからないがどうやら怒っている様子に見える。それを見て周囲の人たちがざわついてきた。宗谷の顔が青くなった。

宗谷本人は自覚はできないものの、どうやら自身の身に何か異変が起きていることを感じていた。店員は宗谷の様子がただならぬと見て困惑していた。


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