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謎の老人はマジシャン

謎の老人はマジシャン


二人は家の玄関まで来る。如月は一度深呼吸をする。

じいさんはまかせろと言ったが、正体不明の人物を警察にも連れて行かず、ここまで連れてきてしまった。もはや覚悟を決めるしかない。


如月誠「じいさん、まさか、変な企みじゃないよな。おれの家族に何かおかしなことはしないだろうな」


なぞの老人「ただのマジックを見せて、みんなを驚かせるだけだよ」

如月誠「急にマジシャンですか…」

マジシャン「わしの姿をおまえが見えた通り、家族にも見せよう」

如月誠「何かやるのか?ドアを開けるぞ」


ガチャと音がし、ドアが開いた。そこにサッチィンと二人の子供が玄関口にいた。いつもと全く変わりない様子で出迎えてくれた。


サッチィン「マーチャン、お帰りなさい…」

如月誠「ただいま~」

サッチィン「この方ね、マーチャンお知り合いのマジシャン。

どうぞ寒かったでしょ」

子供たち「パパ、ママが言ってたマジックのおじいちゃんだね。

こんばんは」

マジシャン「こんばんは。おじゃましますよ」

如月誠「おい、じいさん、まだ自己紹介してないぜ。どうなってんだ。

いつのまにおれの知り合いのマジシャンになったんだ」

マジシャン「これが、マジックです」

如月誠「なんじゃそれ、うまくだまされているのか」

マジシャン「とにかく、中にはいりなさい」

如月誠「入りなさいって…、おれの家ですけど…」


如月はちょっとほっとしている。

マジシャンはリビングの椅子のところに案内された。毛糸の帽子とヨレヨレのコートを脱いだ。如月の家族に老人がマジックを披露することになった。如月誠は普段着に着替えた。みんなはリビングのテーブルについた。

如月はじいさんの紹介を始めたが、よく考えてみると自分自身がこの老人のことを何もわかっていない。それでもその場の勢いで老人を『マジシャン』ということにして家族に紹介した。


如月誠「はーい、みんな集まって。この方がうわさのマジシャンです」

みんな「うおー!パチパチパチ」


歓声と大きな拍手が巻き起こった。


マジシャンを囲んだ食卓


如月誠「マジシャンにみんなを紹介するよ。

妻の幸子、黒髪が長く美少女系です。長男の純、

小学校一年生。パパを小さくしたような好奇心旺盛な子です。

長女の愛、三歳。もう、目がかわゆく、ふりふりのスカートが

似合う愛くるしい娘です。そんなところでお見知りおきを」

マジシャン「いい家族じゃ。さっそく、挨拶のマジックを見せよう」

純ちゃん「わー、すごいの見たい。ワクワク」


マジシャンは紺のジャケットをポンポンと叩いて花を出現させたり、「ジャンジャカ、パーン」などと言いながらいろいろなところから複数のアイテムを出したりした。ハトやトランプなどを用いた、定番のマジックである。みんなの目が輝いていた。


マジシャン「では、手から突然バラの花束とペンダント。はい奥様に。

毛糸の帽子から、はっ、魔法のえんぴつ。

純ちゃんにプレゼント。

最後にヤァー。蝶の形の髪飾りは愛ちゃんにどうぞ」

全員「オーー」

サッチィン「マジシャン、ありがとうございます。

キムチ鍋ですが、いっしょにお食事をどうぞ」

マジシャン「ご親切に。ゴチになりますぞ」

 

いつの間にかマジシャンは、如月の家族に溶け込んでいた。

食事をしながらのマジックショーをみんなは十分堪能していた。

プレゼントをもらった子供たちは大喜び。次から次に続くマジックパフォーマンスにみんなは大喜び。

でも如月だけは怪訝に思っていた。

如月はマジシャンの隣でヒソヒソ話しをし始めた。


如月誠「なんか、うまくこなしたな、じいさん」

マジシャン「マジックじゃからな。それより、みんないい人じゃて。

しばらく、ここにやっかいになるぞ。マーチャン」

如月誠「なれなれしくマーチャンと呼ぶな!

おれのこと、マーチャンというなら、じいさんはなんて名だ」

マジシャン「まあ、神田大…。神田だ」

如月誠「神田じいさんか、みんなにそう言うぞ」


サッチィンは如月とマジシャンがひそひそ話をしている様子を不思議そうに見ていた。サッチィンがマジシャンのお茶を入れに近くに来た。


サッチィン「マーチャン、マジシャンの方、お名前はなんていいますの」

如月誠「今、紹介するよ」


如月はサッチィンの勘が鋭いことを十分知っていたので、ここははっきりさせなければいけないと思った。

如月はみんなに聞こえるように話した。


如月誠「マジシャンの名前をみんなに紹介するよ。神田さんだ」

純ちゃん「神田じいちゃん」

愛ちゃん「神田じじだね」

神田じじ「ほい。ほい。ああー、いい響きじゃな」


神田じじは気分がよくなってきた。みんなに慕われてしまったようだ。

如月は、じいさんの耳元に小声で話しかけた。


如月誠「いい気になるなよ。まだ本当のところ何者かわからないんだからな」

神田じじ「わかってるわい」

如月誠「それよりじいさん、記憶を無くしているわりに、いろいろやれるじゃないか」

神田じじ「わしゃ、何も聞こえなかったぞ」

如月誠「調子がいいな」

神田じじ「気にするな。いずれわかるでな」


食後の団らん


如月誠「ごちそうさまでした」

如月誠「パパが片付けるぞ。お皿を持ってくるんだ」


如月は立ち上がり台所に向かった。


純ちゃん「はい、パパ」

如月誠「純はえらいぞ。愛ちゃんの分も持ってこれるか?」

純ちゃん「今、持っていくよ。パパ、神田じいちゃんはおもしろいね。

あの魔法のえんぴつは書けるのかな?」

如月誠「神田じいちゃんに聞いてみたらいいぞ」

純ちゃん「うん、わかった」


食事を終えて神田じいちゃんは居間の長椅子に移っていた。

子供たちは神田じいちゃんのそばにやってきたてじじを囲んだ。


愛ちゃん「パパ、愛の髪も見て、見て、チョウチョだよ。かわいい?」

如月誠「ちょーかわいいよ。愛ちゃん」

愛ちゃん「ほんと…、神田じじにも見せる。じじ、見て、見てー」

神田じじ「ほ、ほー。愛ちゃん、かわいいじゃて」

純ちゃん「神田じいちゃん。このえんぴつはどうやって使うの?」

神田じじ「そうじゃな。まず、普通に鉛筆として書ける。次にエンピツを左手に持つ。真中に小さい取っ手のようなものがある。それを右にひくと、ほーら、鉛筆が広がった。横向きに見ると画面になっているのがわかるじゃろ。インターネットも使える」

純ちゃん「すごいね。これ小さいスマホみたいだ」

愛ちゃん「すごいのもらったね、純ちゃん」


如月はさすがにサッチィンには、本当のことを言わないといけない気がした。じいさんがまだ何ものなのか如月にもわからない。

子供たちの安全のことや、今後のことで相談しておかないといけないと思った。如月はサッチィンに話を切り出すタイミングを計っていた。


サッチィン「マーチャン、みんなは大喜びよ。これ見てー、水晶よ」

如月誠「いやー、サッチィン、台所終わるから…。

さっそく神田じいちゃんにもらったペンダントを付けてるのか。

似合うな。

ところであのじいさんなんだけど、サッチィンだけには、本当のこと言わないと…」

サッチィン「わかってる。神田さんはマーチャンの身近な友人ではないのね」

如月誠「どうしてわかったんだ。おれはまだ何も言ってないぞ」

サッチィン「マーチャンと神田さんのしぐさを見ていて、なんとなくわかったわよ。でも、神田さんのマジックすごかったわね。マジックはタネがあるじゃない。できれば私も教えてもらいたいな」

如月誠「そうだな。ああ、赤の他人だ。それも仕事の帰りに多摩川の河原で会った。明日の土曜日に警察にいってみる。それと、変なことを言っていた。『わしの姿が見えるのか?』だ」

サッチィン「それどういう意味かしら。いずれわかるかしら…」



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