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第一次異世界大戦 武装神器リバティ・ギア  作者: 振木岳人
◆ 作戦名「ブギーマン」 編
42/72

42 第3護衛隊 東へ


 秋晴れの朝。水平線から昇る太陽の祝福に向かって、その足を進める四隻の船がある。

 進路を東に向けて進むそれらは、船の顔とも言うべき艦橋をオレンジ色に染め上げている海上自衛隊の護衛艦。

 日本へ亡命して来た旧日本共和国空軍最後の巡空艦神州と合同作戦を行うために、日本海の荒波を今駆けているのだ。


 神州に合流しようとしているのは海上自衛隊第3護衛隊群所属の一個艦隊四隻。第3護衛隊とは京都の舞鶴基地を基点とした、護衛艦隊2グループの総称である。


 ヘリコプター搭載型護衛艦の「ひゅうが」を旗艦として、イージス艦「みょうこう」「あたご」「ふゆづき」の合計四隻で編成された第3護衛隊。

 そして護衛艦ゆうだち、まきなみ、すずなみ、しらぬいからなる、第7護衛隊の合わせてニ個艦隊の総称が第3護衛隊群なのである。

 その2グループのうち一個艦隊が出撃した。


 海上自衛隊横須賀基地にある護衛艦隊司令部の命を受けて、第3護衛隊群 第3護衛隊が異世界から来た船と肩を並べて命運を共にする。

 突如日本海に現れた異世界のソ連軍を呼称する巨大なリバティ・ギアから自国領海を守るために、そしてレアアース採掘基地の武力占領を宣言した彼らに対し自国の資源を守るために、防衛出動と言う名のもとに(いかり)を上げたのだ。



 数キロの幅を作りながら横一線となって海を進む第3護衛隊の四隻。

 雲一つ無い綺麗な夜明けに船体を輝かせていたのだが、時間が経つにつれ様子がおかしくなって来た。東の空がみるみる暗くなり、まるで太陽が消し飛んだかのように夜の闇が広がっているのだ。


 それは第3護衛隊の旗艦「ひゅうが」にだけ起きた現象ではない。護衛隊全ての艦がその現象を目の当たりにして色めき立っている。


「太陽光をヘラが遮断している。そう言う事なのか……」


 旗艦ひゅうがに乗船し、艦橋から海原を見ながらそうつぶやいた槙島1等海佐は、ひゅうがの艦長ではなくこの第3護衛隊の艦隊司令である。

 本来ならひゅうがの戦闘指揮所に開設された第3護衛隊司令部において、艦隊の指揮権についてのみ裁量をふるうのだが、今は戦闘状況から1ランク下げた第2配備中。機械に囲まれた航海は息が詰まるからと、外の景色を求めて艦橋に上がったのだ。


「常識的には考えられませんね。小官は今でも夢の中にいるのではと錯覚しています」


 槙島司令の呟きに反応したのか、船務長で副長も兼務する木村3等海佐が隣でそう答えた。


「夢の中、夢物語か。しかしそれは現実となって我々人類の目の前に現れた」

「空飛ぶ戦艦やら巨大ロボットに巨大空中要塞……あまりにも大きな文明の差を感じて正直戸惑っております」

「珍しいね、鬼の木村が弱音を吐くか」

「鬼はやめてください、鬼はウチの艦長ですから」

「あはは、違いない」


 自衛隊の現有兵装では歯が立たないと分析された敵リバティ・ギアと、それらを取り巻く未知の兵器。それを目前にした木村3等海佐が不安を吐露するのは臆病ではなく、むしろ正常な感覚である事は理解している。

 郵便制度がやっと普及した時代に突如スマートフォンが現れ、通話やネット検索可能でカメラ機能付きに動画が見れますよと言われても、理解出来る方がおかしいのだ。


 ただ、槙島司令はそこで思考を諦めてはいなかった。別の切り口をもって木村3等海佐に光明を見出させたのである。


「木村3佐 (階級の略式呼称)、F1レースの車は速いかね? 」

「そりゃあまあ……最速の自動車と言われるぐらいですから、速いですね」


 何を意図した質問なのか全く理解出来ずに、木村は呆けた顔で答えながら首をひねった。


「そうかね、速いかね。ならばキャタピラを履いたバックホーよりも速いんだろうね」

「はい、バックホーと競争しても比べ物にならないくらいに速いです」

「ならば、バックホーは大量の土砂をすくい上げる能力があるが、F1レースの車はそれが可能かね? 」

「……あっ! 」


 木村はここで気付いた

 目的が違うものを比べても、比べる意味が無い事を。

 例えがひどくて理解するのに努力が必要な言葉ではあるが、未知の高度文明と言ったところでそれが万能では無い事を知れと、諭されているのに気付いたのだ。


「先ほど神州の艦長と連絡を取ってね。ヘラもまた人間が操縦している兵器だから、そこが狙い目だと言っていたよ」

「なるほど、文明の差がある訳ではなく、違いと言う事ですね」

「秘匿事項で多くは語れんがそんなところだ。それにね、人間としての進化に差も無いよ。彼らはUFOに乗って来た頭でっかちの宇宙人じゃないからね」


 目からウロコが落ちる木村3佐。ーーその発想は無かったわ と感心する。

 だからと言って巨大リバティ・ギアを前に圧倒的に不利である事に変わりは無く、こちらの兵装は効果が期待出来ず、敵の攻撃手段は謎のままでは見通しが暗いまま。

 槙島司令もその点は心得ているのか、あえて当事者としての立場では無く第三者を装いながら、巡空艦神州と味方のリバティ・ギアと共闘するのは悪い話じゃないと思うよと、穏やかに言い放った。


 それにしても、この人は相変わらず例えも下手だが比喩も下手だなと内心苦笑する木村3佐。しかし司令が尊敬する人物の一人である事に変わりはなく、我々は我々のやり方で活路を見出しましょうと不敵に笑う。


 すると艦長卓に据えてある艦内電話が鳴り、木村が受話器が取り上げて通話を始める。どうやら戦闘指揮所に詰めていた御子柴艦長から、槙島司令宛ての伝言を受けたようだ。


「司令、CICの御子柴艦長から伝言です、内容は二つ。アスロック対潜ミサイルのデータ書き換え完了、ヘラに着水出来るそうです」

「そうか! それは良かった。これで攻撃の幅が広がる」

「もう一つの伝言は……あれです。ヘラの予想防衛圏に迫りつつあるので、CICにお戻りいただきたいと」

「それを直接言いたくないから伝言にしたのだね」


 槙島司令は苦虫を噛み潰したかのような顔で、悪い上官を持ったなと木村に同情してみせるのだが、ひゅうがの御子柴艦長は槙島司令の優秀な一番弟子であり、木村にとっては優秀な師匠である事から、これまた槙島司令のセンスの無いジョークであるのは明白。

 木村は勉強させて貰っていますと笑って濁しながら、槙島司令に艦橋からの退出を促した。


「木村3佐、もうすぐ第2配備から第1配備へ上がる。船乗りは船乗りらしく決して諦めずに作戦を完遂させるぞ。“護衛隊第1配備、ワレ二続ケ”だ! 」


 “護衛隊第1配備、ワレ二続ケ”


 第1配備とは海上自衛隊の自衛艦における戦闘航海・戦闘配置の事を言う。

 そしてワレ二続ケとは、文字通り皆の模範となるように常に先頭に立って困難に立ち向かう事を指す。


 槙島司令は木村の二の腕をポンポンと叩きながら、操艦任せたよと力強く言い残して艦橋から出て行った。



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