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僕にも見分けられない。
あれから何事もなく家に着いた。買ってきた食料を棚に入れ、冷蔵庫から黒い液体を取り出し、やかんにその液体を入れる。やかんを火にかけ僕は椅子に座った。なんで、僕は薄汚い世界しか知らないのに、彼女はあんなにも輝いて見えたのだろうか。
「プシュー!」
やかんが鳴った。買ってきたカップ麺に沸騰した黒い液体を入れ、食べ頃まで待つ。先程彼女に貰った果実を手に取り、かじりつく。
「これ、上手いな」
彼女は林檎か梨か分からないと言った。でも、それは僕も同じだった。僕は、林檎が何色で梨が何色など知らない。だから、林檎がどんな味で、梨がどんな味なのかを知っていたとしても、色が分からなければ、彼女と同じように林檎という果実、梨という果実を見分けることは出来ない。もし、彼女とひとつになれたら、僕達はこの得体の知れない果実を見分けることが出来るのだろうか?いや、そんな事はどうでもいい。僕にはこの世界があるのだから。