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プロローグ
僕は、初めて泣いた。こんな美しい景色を見れば仕方ない。青々と茂った森、今にも引き込まれそうなほど青い海、海の青さを吸い取ったような青い空。全て僕が生きる世界とは色が違っていた。僕は恋をした。この美しい仮装世界に。
僕の家は貧しくもなく、何処にでもある普通の一般家庭で生まれた。生まれた頃は親も僕が色覚異常という事には気付いていなかった。僕の小学校では、3年生の時に強制で色覚検査があったため、その時色覚異常であると診断された。現在は、その制度が無くなり気付かないまま成人を迎える人も少なくないようだ。僕は色覚異常を抱えつつも、一日一日噛みして生きた。