真夜中のラジオ
執筆者:雪村夏生。
先日、ファンタビを映画館貸し切りで見てきました。ただ偶然他のお客さんがいなかっただけなんですけどね。ニュート(あれ? 主人公の名前合ってるかな?)の顔が好みです。
一台のトラックが、暗い暗い山道を走っております。もうすっかり真夜中でして、もちろん街灯などは立っておりますがまばらですし空も曇っておりますから、光はかなり乏しいと言えましょう。危険極まりありません。
さて、ぐんぐんと上っていくトラックからはラジオが流れております。少し聞いてはみませんか。
どうやら、都内のビル内で行われたという社員説明会に出ていた人々が、戻ってこないとの話でございます。捜索願が出されているらしいのです。なにせ、三日も前の話ですから、ご家族の方々がご心配になるのも無理はありません。社員説明会と言いましても、アルバイト採用の説明会のようなものでございました。参加者は五名。説明のために二名程の社員が会場にいらっしゃったとのことです。事実、その社員は説明会の日に会社を休んでおられます。会社側の説明としましては、そんな説明会を企画した覚えはないとのことでございます。
おやおや、雲行きが怪しくなってまいりました。天気の方も、空からぽつぽつと雨が降り出してきました。
一瞬にして七人もの人間が消えるというのは可能なものなのでしょうか。不可能性がつきまとうように思われます。
説明会の会場は、ビルの三階でございました。四、五階を占拠している他の会社がありまして、その日に引っ越しのために荷物を移動しておりました。トラックにたくさんの荷物を積まれておられたそうなのです。
そういえば、今追いかけているトラックは、その会社が依頼した引っ越し業者のロゴが入っておりますね。まさか山中にお引越しなされるのでしょうか。
説明会で何が行われることになっていたのか、被害者の親族たちは知るよしもありませんでした。説明会と聞けば、それで納得してしまうのが普通の人間の反応でしょう。
雨の勢いが増してきました。おや? なんだかトラックのロゴがはがれそうになっております。
運転席には人影が二人見受けられます。そろそろ山の中に消えてしまいそうですね。
これ以上の実況はやめておきましょう。眠くなってまいりました。そろそろ日づけをまたぎます。トラックは山中へと入りました。
さて、ここからは大人の時間ですから、よい子はおやすみになりましょうね。