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【後編】

 



 ――ディーに別れを告げたその日以降、私が夢の中であの世界に行くことはできなくなった。



 夢をみることなく普通に朝を迎えられる日々に、最初は困惑もあったものの、仮にあの世界に行けたとしても自分にディーに逢う資格は無いと自覚してた。 



 大きくなるにつれて周りの環境は勉強や部活等どんどん変わっていき、いつしか罪悪感も薄れてディーの事を考える時間も減っていった。薄情なことだけど、私の中でこの出来事はもう終わった事となっている。


 きっとディーには私みたいな薄情な人間とは違って、良い恋人をもう見つけたかもしれないと勝手に願っていた。



 高校生活も終わり、来年には成人式もする予定で友達と振り袖とかの話をしていた際、ふとディーの事が脳裏に浮かぶ。 



『そうなんだ……じゃあ結婚の約束しようよ、お互い大きくなった時にできるように』


『コレは約束の印だよ……みずきがボクと結婚するためのね』


『そうなんだ! ありがとうディーっ』




 小さな頃にした約束――ちょうどそんなことを思い出した今日は、私の20歳の誕生日でもあった。けど、夢の中での出来事だったし、現実にはきっと関係無い……っ?



「ん? みずきどうしたの? 仕事疲れ?」


「分かんない‥‥急に‥‥眠くて……ッ」


「みずき?! すみません!! 誰か救急車を!!」 



 急に瞼が鉛をつけたように重くなって、何も考えられなくなり――友達の慌てる声を聞いたのを最後に、私の意識は薄れていった。





■□■□■□■





「ん……此処は……もしかしてっ」



 ゆっくりと意識が浮上し、あんなに重かった瞼が軽くなって目を開けると、視界に映ったのは森の中。その光景に、私は見覚えがあった。



 草むらに手を置いて立ち上がり、あの湖がある場所へと少しずつ自然と足が動く。


 この木々を抜けた先の湖にディーが待っているのだと、私の脳が無意識に告げてきた。



 湖のほとりに着き、その中心地に立っている人物に私は目を奪われる――長い水色の髪を頭の少し上で結わえ、あの頃よりも美しく成長した姿ではあるけどディーの面影が感じられた。




「みずき、おかえり……ずっと待ってたよ、みずきが大きくなるのを」


「ディー……」




 ふわりと花が咲くような柔らかな笑みを浮かべ、ディーが此方に歩み寄りそっと抱き寄せられる。


 胸の内がドキドキする以上に、チクチクと痛みだす……ディーを傷つけてしまったのに、彼は待っていたと言ったのだ。きっと、あの約束を果たすために。 



「あのねディー……約束はしたけど、私にはその資格無いと思ってるんだ」 



 ディーの胸元をそっと押し、首を左右に振りながら罪悪感から申し訳なさそうに告げると――柔らかな笑みが瞬時に無表情に変わった。


 その何の感情も現さない顔に無意識に恐怖を感じて、何とかディーから離れようと胸元を押し続けるも……寧ろ回された腕の力が強くて、離れるどころかさっきよりも互いの身体が密着する。




「……メだよ……」


「っ……ディー? 今……なんて?」




 震える声で何かを呟いたディーに、不安に駆られて焦ったように思わず返すと――さっきまでの無表情から、ゆっくりと口角が歪に上がり、ニンマリとした笑みを浮かべたディーが答える。






「約束は守らなきゃダメだよ、みずき」






 その答えを聞いた途端額が急激に熱くなり――その熱さに頭がガンガンと痛みだし、それらの衝撃に耐えきれなくなった私はその場に崩れ落ち意識を失う。



 意識を失う前にちらりと見えたディーの表情は――悦びに満ち溢れていた。




■□■□■□■





 森の中に暖かな陽射しが差し込み、朝がきたことを告げる……すごく気持ちの良い寝覚めだ。


 私が此処に来てどれくらい経っただろうか……そもそも私はどこで何をしていたのだろう? 今となっては何も思い出せない、そういった何かを考えると頭がかなり痛むため、こういう思考は止めることにした。




「みずき、おはよう……今日は何をしようか」


「ディー、おはよう……今日は温かいから、水浴びがしたいな」


「良いよ……ふふ、幸せだなぁ……毎日みずきと一緒にいられて」 



 ニコニコと嬉しそうに笑うディーにつられて、私も自然と口元が綻ぶ……私だって、充分ディーに幸せをもらってるんだから。



 だけど――不意に何かが違うのだと、意識的に感じる時がある。


 でもすぐにその想いは例の頭痛のせいで消えてしまい、心の内はディーへの想いでいっぱいになっていく。




「みずき、これからもずっとずっと一緒だよ……永遠に」


「うん、私はずっとディーと一緒にいる……約束したもんね」




 幼い頃にした結婚の約束……これだけは何故かしっかり覚えている。この約束を思い出す時は、頭が痛くなく、胸の内がドキドキと熱くなるから。




 でも、心の奥底から【この夢から早く醒めて!】という、誰かの声が聞こえた気がしたけど――私がその声に耳を傾けることはなかった。




ヤンデレはすごく好きなジャンルなのですが書いたのは初めてだった為、色々物足りない部分もあるかと思います(´`;)

もし需要があったら、ディー視点とかも書いてみたいです…しかし狂気的な描写が上手い作家様が羨ましい…私もあんな風に素敵なヤンデレ書きたいorz

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