UNKNOWN
高坂 祈、17歳。
今年の夏に、新しくできたテーマパークのオープン日に彼は来ていた。
「あー、暑っちぃ…」
なんでこんな行列に並んでんだ、俺…。
「お次の方、こちらへどうぞー!」
笑顔の爽やかな受付の女性に案内され、ようやく入場できた彼の目の前に待っていたのはーー
巨大な門だった。
「はい! これからみなさんには、殺し合いをしてもらいまーす!」
「…はぁ!!?」
こうして普通の高校生、高坂 祈はいきなりバトルロワイヤルに参加させられることになったのだった。
異世界モノです。物語を書くのも、考えるのも全くの初心者なので、暖かい目で見守って下さると嬉しいです。
では、『UNKNOWN』という物語を紡いでいきますのでこれからどうぞ宜しくお願いします。
猛暑真っ盛りの夏。普通の高校生である高坂 祈は、今年の夏にできたばかりのテーマパークの行列に一人で並んでいた。友達がいないわけではないが、「今年の夏までに彼女を作って、一緒にテーマパークでデートする!」と意気込み、何故かチケットを2人分予約してしまった祈は結局彼女ができないまま、オープン日がきてしまい慌てて友達を誘ったが誰も予定が空いておらず一人で、もとい独りで並んでいるという訳だ。
行列の最後尾あたりで、バイトの大学生が「三時間待ち」と書かれた看板をだるそうに掲げている。祈の並んでいる場所的にだいたい2時間ほどで入場できるだろう。
「無理だ。帰りたい。暑すぎて溶ける……」
折れかけている心から出る弱音をそのまま口に出す。こうでもしないと本当に心が折れてしまいそうになるのだ。
前と後ろにカップルか若い夫婦か、男女が無言で並んでいる。
「リア充爆散しろ……」
小声で呪いをかけながら、嫉妬の怨念を辺りに漂わせる。
梅雨が明け、じめじめした暑さから解放され、焼くような日差しがアスファルトに降り注ぐ。靴が溶けないか心配になるほどアスファルトは高熱になっており、それが足の裏にまで伝わってきている。
手をかざし、空を見上げていると受付の女性から声がかけられる。
「お次の方こちらへどうぞー!」
案内され、受付へ向かう。
「チケットをお預かりいたします! ……はい!ありがとうございます!では、あちらの門へとお進みください!」
笑顔の爽やかな女性で、見ていると気持ちをリフレッシュできる。
「どうも」
軽く会釈をしながら、入場門へと歩を進める。
ようやく中に入ることができる達成感と高揚感が混ざって思わず、普段より歩くスピードが速くなる。一応、高校で陸上部には所属していて(幽霊部員になりかけだが)多少歩くスピードには自身があるが、いましているのは早歩きに近い。
「でも、ここまで人が多いとアトラクションもろくに乗れなさそうだなぁ……」
入る前からネガティヴなことを考えながら、入場門へたどり着いた。子供らしい可愛らしいデザインが施された門をくぐるとそこで待っていたのはーー
巨大な門がそびえ立っていた。
先ほど、入場門の外から見えていた景色と違うことに困惑する。
そもそも何故、門の向こう側にまた門が?
ハッとして後ろを振り返ると、果てしない草原が広がっていた。
「どうなってる……? もしかして、どこかに転移したのか……?」
頭は冷静ですぐに転移という単語が浮かぶ。心臓は高鳴っているが、こうして平静を装っていられるのは普段、祈が異世界ファンタジーや非現実的な物語のライトノベルを読んでいるためである。恐らく、何らかの原因、目的があってどこかに転移してしまったのだと結論を出した。
しかし、
「あの門に進むべきか……?」
このまま、ここに立ち尽くしているだけで元の場所に戻れる保証はない。前に進んだ方がよほど不安は解消できる。
とりあえず門へと向かおうとしたその時、後ろから声が聞こえた。
「うお! どこだここ!」「な、なんだよこれ……?」「あれ!? どうなってるの!?」
次から次へと何も無い空間から人が現れていく。現れる瞬間、水面が揺れたような波紋が広がっていて、やはりあの門から転移しているのかと祈は確信した。
「あの門はここに繋がるゲートになっていて、人数を見る限りここにやってきた人たちはランダムか……? いや、目の前に門があるのは不自然だし、なにより……そうであってほしい! まさか俺が、異世界に導かれる非日常的なイベントに出くわすなんて……最高だ!」
最近のライトノベルは異世界召喚ものが流行っている。だが問題は、「殺し合いとかそういう物騒なのは嫌だなぁ……能力や魔法は使いたいけどひたすら美少女とイチャイチャしたい……」
クラスメイトに聞かれたら間違いなくドン引きされる内容の独り言を呟く。生まれてこの方、彼女は……できたことはあるが、ろくにイチャイチャできなかった上にそこまで可愛くなかった。
「異世界には美男美女が多いはずだ。能力なんかがもらえればいくらでもやりようはあるさ……ゲへへへ」
ゲス笑いをしながら卑猥な妄想をしているとかなりの人数が集まってきていた。ざっと五千人くらいだろうか。
「力が欲しいか……」
門の方から禍々しい声が聞こえた。全員は声のする方へと一斉に顔を向け、先ほどまでの話し声が嘘だったかのようにしんと静まる。
どす黒いもやのようなものが門の前に漂っている。そのもやの真ん中に人影が見えなくもない。
「なーんてね! えへへ! ご紹介が遅れてすみません! どうも、私は受付のお姉さんこと柏木 奈々(かしわぎ なな)と申します! 早速ですが、ここに皆さんが集められた理由と目的を説明致します!」
どす黒いもやが一瞬で消え、中から現れたのは先ほどの笑顔が爽やかな受付の女性だった。
「まず、貴方達は選ばれてここにやってきました! いわゆる、転移やワープと呼ばれるものを使って。選ばれた理由、それは優秀なアビリティの素質です!」
「ア、アビリティ?」 「なんなんですかこれは! 元の場所に帰してください!」 「ふざけるな! 元の場所に帰せ!」
次々と集められた人たちから女性へ怒号が飛びだす。
当然だろう。突然、本人の許可もなしに連れてこられたのだ。不満も出る。だが、
「申し訳ございませんが、元の場所に帰すことはできません。あなた達に拒否権はありません。私の指示に従ってもらいます。いえ、指示に従わねばならないようになります。」
意味深なことを言い、受付の女性は指を鳴らす。
すると受付の女性の頭上に複数の3Dモニターが出現した。そこには家事をしている若い女性や子供、お爺さんやお婆さんなどが映し出されている。
「皆さんのご家族やご友人を調べ、監視させていただいております。もし貴方がたが反抗的な態度をとったり、行動をしたりすればここに映っている人たちを殺します。」
受付の女性は先ほどの爽やかな笑顔を浮かべ、
「要するに脅迫です! 嫌でも指示に従っていただきますのでご了承ください」
「分かった、分かったから妻には手を出すな!」「息子にだけは!」「俺の大切な人なんだ! だから殺さないでくれ!」
「はい、指示に従ってくれさえすれば危害は加えません。
では、これから皆さんにしてもらうことの説明をしますが、よろしいですか?」
集められた人たちは、真剣な決意を固めたような表情に変わる。
「よろしいですね。はい、これからみなさんにはここで殺し合いをしてもらいまーす!」
「……はぁ!!?」
こうして、高坂 祈は強制バトルロワイヤルに参加させられることになった。