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16-4

 シドは思わぬ援護に目を瞬かせて頭を上げた。

「レン、ライ……」

 双子の言葉にじんと胸が熱くなった。今なら、号泣してしまいそうだ。


「どうして! 兄さんがまた怪我をしてもいいのか!」

「怪我をしないようにがんばればいいのです」

「怪我は軽傷で済ませればいいのです」

 うんうんとお互いの意見にうなずいて答える双子。シドはたった二日で、兄弟達の新たな一面を発見したのは何度目だろう。鼻がつんとして、眼は潤んでいる。シドは泣くまいと必死に耐えた。


 ランカは暫く双子を睨みつけるように見ていたが、双子の表情はいつも通りの無表情で何を考えているのか、把握できていないようだ。ランカが双子の真意を探るように、眉根を寄せながら問いかける。

「本気で言っているのか?」

「本気です」

「本気ですね」

「……………分かったよ」

 ランカは暫く熟考したのち、大仰に長息をついて、仕方がないといった風に双子の意見に賛同した。

 シドはもう一言感激できる言葉があれば、泣いてしまう一歩手前の状態だ。


「おまえら……」

 くっと喉を一度引きつらせて、涙は見せまいとがんばるシドに双子はさらに言葉を続けた。

「それに、良く考えてくださいランカ兄さん。両親失踪の今、我が家でまともに働ける年齢はシド兄さんだけです」

「そのシド兄さんは不幸でしょっちゅう仕事をクビになる天才……」

「うん?」

 双子の言葉に引っかかりを覚えたシドは内心首をかしげた。

「いや、僕もあと数ヶ月もすれば働ける年齢になるけど……」

 ランカは賛同したが納得はまだしていないようだ。


「ランカ兄さんはシド兄さんと違って特待生で学校に通っているじゃないですか」

「確か、特待生は勉強第一で休学は病気怪我以外は認められていませんでしたよね?」

「だから、働けるのはシド兄さんだけです」

「その通りです、そして……」

「そして?」

 なんだか、嫌な予感がしないでもないが、シドは合いの手を打つ。 

「そんなシド兄さんの不幸っぷりを知りつつ」

「それでも働いてもいいというのはウィルフズ家のような大金持ちの貴族くらいじゃないですか」

「……ライ君、レン君?」

 ひくひくと口元が痙攣するのが分かった。シドは双子たちの言い分に、流れそうだった涙は引っ込み、この先の言葉を聴くことを拒絶したくなったが、双子はお構いなしだ。


「つまり、これを逃がすと、シド兄さんのような自他共に認める『不幸少年』を雇ってくれるなんて偉業を成し遂げられる雇用主はそうそういません」

「つまり、逆説的に言うと『不吉伯爵』がいるからこそ、『不幸少年』は仕事を首の皮一枚で繋がっているのです」

「「受けた恩は返すべきです!」」

「…………」

 しんと家が静まった。

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