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12-1

ヴァリアスの屋敷を囲っている柵が見え始めたところで、シドはいつかの子供達にまた遭遇した。

「まだ生きてるぞ。このにーちゃん」

 リーダ格のキーザがきっぱりと言い切った。


 突然横から現れたかと思ったら、三人の子供は両手を大きく開いて通せんぼうをしながら、疑わしそうな目でシドを無遠慮に眺めている。

「そ、その目は、ちょっと傷つきそうなんだけど……」

 子供達の視線に耐え切れなくなったシドが、ぼそりと零すも子供達には届かない。


「やっぱり~、このおにーさんは~お化けの仲間なんじゃないですか~?」

「……こわいね…」

 独特な間延びした口調でアーロウが言い、小首を傾げると、広げていた手をおずおずと口元に持っていき、怖がり屋のウィンが小さな声で呟いた。

「……だから、僕はお化けの仲間じゃありません」

 シドがそうはっきりと言うも、ふんと鼻息荒く見たり、ポケッとしていたり、おどおどとしたりと子供達は三者三様の表情をしているが、そのどの顔にも、シドの言葉に「うそだー」と訴えたげな眼差しをしていた。


「このお屋敷は~呪われていて~夜になると~しりょうが現れて~悪い子は食べられてしまうんですよ~」

「……ぼ、ぼくは、きのうちょっとよふかししちゃったけど、わ、悪い子じゃないよ!」

「よふかし~? 暗くなったら眠くなる~ウィンが~? めっずらし~」

「そこじゃないだろアーロウ。このにーちゃん何日も幽霊屋敷でせいかつしてんだぞ? なのにまだ生きているんだぜ。やっぱり、幽霊の仲間だぞこのにーちゃん。捕まえて新聞社に売ったらしゃれい出るか?」

 のんびりしたアーロウを嗜めるようにいい、ガキ大将気質のキーザはキラキラした目でシドを見つめる。

 シドが金貨にでも見えているのだろうか。したたかなキーザにシドは内心複雑な心境になった。


 頬を掻いてから、シドは三人の子供の目線にあわせるように腰を折る。

「あのな。この屋敷は幽霊屋敷みたいな見た目だけど、ちゃんと人が住んでいるんだ。別に夜な夜な人を食べるような人じゃないんだぞ」

 目に力を入れて真面目な顔をして、言い聞かせるようにゆっくりと話すシドに向かって、子供達は三人ともそろって疑いの眼差しだ。

「「「え~?」」」

 と、間髪いれずに疑問の声を上げて、年上の言葉を信じようとはしない。


 これは、根深い問題だと思うも、外観があれだし、屋敷の主も周りの住民と交流を持とうとするような性格ではないので、どうにもなら無そうだとシドはため息をついたその時、屋敷の周りの家の一つから小柄な人物が飛び出してきた。

「こら! あんた達、朝早くからどっかに行っていると思ったら、なにしてんのよ!」

「あ! おねーちゃん」

 ウィンは近づいてきた人物に向けて嬉しそうに手を振った。彼女の年齢は13歳くらいだろう。鼻の上にそばかすがあり、左右をおさげにして、勝気そうな瞳でシドを睨みつけるように見上げた。

「あんた誰? 弟達になんのよう?」

 彼女は完璧に不審者を見るような目つきをシドに向けた。

「……ここの屋敷に最近勤め始めた掃除係です」

 年下の少女なのに、視線が怖い。シドは引きつった表情のまま、ここ、と屋敷のほうを指差しながら自分は怪しい人物ではないことを証明しようとした。だが、幽霊屋敷に勤めているなそ、ご近所さんからすれば怪しさしかない。


「じゃあ、幽霊なのね!」

 少女は驚きの表情のまま、素早くウィンの手を掴んで強引に引っ張り、残りの二人にも急いでついてくるようにいいながら、早足でシドの傍から離れていこうとする。

 その際、ちらりと見えた少女の爪の先だけが赤く染まっていたのが印象的だった。


「あんたたち、朝っぱらから幽霊なんかと知り合うんじゃないわよ! 今日は家の手伝いをしなさいってお母さんに言われていたでしょう。さっさと帰るわよ!」

「お、おねーちゃーん」

「うわー。相変わらずウィンのねーちゃんはこえーなー」

 歩幅の違う姉に手を引かれ、必死についていくウィンの後を追うように、キーザが頭の後ろで手を組みながらついて行く。

 アーロウはそんな三人を少し眺めてから、シドに向き直り、

「まあ、そういうことなんで~ぼく達帰りま~す。幽霊のおにーさん、ウィンが泣いちゃうから~夜中まで仕事はしないでくださいね~」

 と、言ってペコリと頭を下げてから先に行ってしまった三人の後を追うように駆け足で行ってしまった。


 一人取り残されたシドは悲しいんだか、空しいんだか、空笑いをしながら子供達の後姿を見送ることしか出来なかった。

「…………僕の仕事に夜間はアリマセンヨー……」

 小声で主張しても、最早誰も聞いてくれる人はいなかった。がっくりと肩を落としながらシドは正門をすでに慣れた手つきで開けて敷地の中へと入った。

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