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密室監禁事件(仮称)

作者: 破舛青樹

 

 私がここで目を覚ましたのは半年前の花火大会の日だったような気がする。自分の目で確かめることはできなかったけれど、遠くから鼓膜を揺さぶるような爆発音が聞こえてきて、ああ、これは花火か、って思った程度だった。


 四角い、窓がひとつあるだけの簡素な部屋だった。そんな状況に私が一人っきり。部屋の中心に小さなテーブルが一つ。向かって右側には廊下につながっているかもしれないドア。調度品はそれだけ。殺風景っていう言葉はこの部屋のためだけにあるんじゃないかな、って思うぐらい。


 窓の外には川が流れてた。窓の外をもっとよく見ようと身を乗り出したかったけれど、填め殺しの窓だったみたいで開けることもできなかった。


 ドアを開ける勇気はなくて、その奥に何が広がっているかも判らない場所に足を進めるのはやめておこう、っていう気持ちが私の行動を阻んでた。


 時間が流れているのもわかるけれど、時計も何もないから今が何月何日で、西暦何年なのかも判らない。初めのうちは壁に爪を立てて経過時間を記していたけれど、やる意味の無いことがわかってやめた。


 だから半年っていう時間は、私が壁に傷をつけていた時間。実際にはもっと時間が経っているはず。でも私の中での経過時間は花火大会から半年だけ。


 時々、窓の外で瞬く星たちを見て、いつまでここに居続けなければならないんだろうかって思う。何回も何回も考えるけれど、因数分解も習いたての私の頭じゃまだその答えに辿り着けない。だから結局その問題は後回し。それでまた忘れた頃にやってくる。


 今まで、そうやって暮らしてきた半年間だけれど、ドアの外に何が広がっているんだろう、って思う気持ちが強くなってきてる。だんだんと私の行動を阻んでいた恐怖心とかその他の気持ちが薄れてきて、好奇心が勝ってきてる。


 ドアのノブに手を触れた瞬間にこの部屋ごと私が消えてなくなってしまってもいい。どうせ存在したところでなかったようなものだもの。


 でも今日は眠たいから開けない。


 開けるのはまた明日。明日も眠たかったら、また明後日。それでも無理だったら、うーん、いつになるんだろう?


 考えてたらますます眠たくなってきた。今日の私はこれでおしまい。


 いつか、永遠の半年間から抜け出せる日がくるといいな。


 おやすみ、私。


 そして、さようなら、今日の私。


       ー以上が、被害者の主観記録となりますー


 捜査本部が置かれた会場に、マイクを通した刑事の声が響く。


 被害者の主観記録、という特異なモノが残っていた理由は簡単。


 彼女はデータとして保存されていたから。

 

 コンピュータの中に、彼女は閉じ込められていた。高性能な演算装置が、彼女をシミュレートし、存在しない彼女の意識を模倣し続けている。


 周りから見れば、彼女は、「生きた」データとして存在しているが、彼女としての彼女はもう居ない。


 そして、誰が何のために彼女を機械の中に閉じ込めたのかは判らない。本物の彼女が今どこにいて何をしているのか、もしかして死んでいるのかさえも判らずに、この事案は事件と呼べるかどうかも怪しい。


 ぼくは、アップルのノートに差し込まれているフラッシュメモリを引き抜く。


 捜査を行うにあたって、捜査官全員に配布された証拠物品のコピーだけれど、このちっぽけな媒体に彼女が入っているだなんて想像もつかない。神様だって自分以外の誰かが勝手に新しい分類の人類を創造するだなんて思ってもいなかっただろう。


 誰かが思い付くことは、遅かれ早かれ科学技術によって実現される。

 

 僕らは、彼女が模倣されてはいけない理由を探し出すためにパトカーに乗った。


                           end


 思い付いたことをやや粗めに書きなぐったものです。やっぱり一人称で書いた方が書きやすいし、見ている方も読みやすいと思いました。

 結局これは何が伝えたかったのかはわかりませんが、この話と設定を一緒にした長編を現在構想中です。

 もしかしたらこの話の続きがあるかも?

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