オープニング=開幕
皆様、お早う御座います。
殻空というものです。
今回、初投稿となります、「空の空」、私の柄に合っていないと自称する恋愛ものです。
これはあくまでオープニング、所謂、開幕の部分です。あまり長くは書いていませんので、ご了承の上でお願いします。
―――梅雨の季節。
ジメジメした教室は、酷く居心地が悪かった。
汗をかいているわけでもないのに、肌はベタベタするし、うっと
うしいし、そのおかげで寝ようにも寝れないし…。
一番嫌いな季節は?っと聞かれたら、梅雨!っと叫んで答えれる
自身さえあった。
一番好きな季節は?っと聞かれたら、当然、夏と冬だ。
雨は止むことなく降り続ける。いつしか止むが、いつ止むかは分
からない。
梅雨の季節が来たと言って、一体どれだけの人が喜ぶだろうか。
俺は誰一人として喜ばないと思う。
喜んでいるやつがいたとするなら、そいつはきっと、相当な物好
きか、結構頭がヤバイやつだ。
ガラガラガラ
まだ八時半のチャイムが鳴っていないのに、何故か先生が教室へ
と入ってくる。
お喋りをしていた生徒や、じゃれていた生徒は一瞬にして鈴の音
のようになり、なにかを察したのか、みんな自らの席へと移動する。
俺は元から席に座っていたので、動かなくて済んだが、この状態
に頭を傾げていた。
「はい、おはよーねー」
いつもと変わらず気だるそうに挨拶をする先生。
真ん丸のメガネにシワクチャなワイシャツ、まだ歳は若いはずな
のに何故か曲がった腰、そして固有のハスキーな声。
苗字を白鳥といい、名前は難しくて小学生の俺には読めなかった
記憶がある。
「んーっとね、今日は前々から話してた転校生が来てます。が、み
んなに先に言っておきたいことがあります」
少し教室がざわめくも、数秒足らずで静寂が帰ってくる。
「えぇー、みんな、身体障がいって聞いたことあるよね?目が見え
なかったり、耳が聞こえなかったり、足が不自由だったり。転校生
は生まれつき声が出せません。……みんな、仲良くできるかな?」
『はーい』
元気よく返事をする生徒達。
でも、俺は知っていた。先生が少し黙り込んでから、言葉を発し
たその理由を。
「それじゃ、ここに立って、自己紹介」
先生は廊下に向かって手招きをし、廊下で待機していた転校生を
教卓の隣へと呼ぶ。
転校生は黒板に名前を書きはじめる。
静樹 凛音。しずき りね、と読むらしい。
だが、先生がそれだけだと寂しいな、と言い始め、好きなものと
嫌いなものを黒板に書いていく転校生。
書き終わったのか、チョークを置き、こちらに一礼する。
「それじゃあ、静樹さんの席はあそこね」
俺の目の前の空席へと近づいてくる転校生。
外を眺めていて好きなものと嫌いなものを見ていなかった俺は、
転校生が目の前の席に着席すると同時に黒板へと目を向ける。
「え…」
雨の音さえかき消して響き渡る。
全員の目線がこちらに向けられるが、俺は転校生を見たまま硬直
していた。
「どうした千葉ー。一目惚れでもしたか~?」
教室に笑いが充満する。
その笑い声で正気に戻った俺は、こちらをキョトンとした顔で凝
視している転校生から目を逸らし、ふてくされながら席に着く。
―――有り得ないと思った。
…普通じゃないとも思った。
だって、転校生が黒板に書いた「好きなもの」が、「梅雨」だっ
たから―――
まだ、「どうだったでしょうか?」と聞くには早過ぎますね。
次回から投稿するのが「本編」となります。
気に入ってくれた方や、ちょっと読み続けてみようかな、っと思ってくれている方、有難うございます。
まだ生まれたての子鹿ですので、どうぞ面倒を見てやってください。
それでは、また会う日まで。