逃亡
「火事...ですか...?」
「そう、火事。しかも放火だな」
いつもの警視庁捜査一課には
いつもとは違う空気が流れていた。
「いや、放火って...。そんなんすぐ捕まるもんでしょ。」
「捕まんなかったからこっちに来たんだろ。つべこべ言わず行って来い」
「面倒く...」
「つべこべ言わず行って来い」
「はい...」
と、結局、(基本仕事したくない)山崎渡はいつものように(基本自分からは動かない)柳翔平【課長】の命令を受け、事件現場へと向かうのだった
「ここか...」「そうみたいですね」
「そうだな...なんでお前がいるんだよ...」
「なんで、って渡さんあるところに自分ありですから」
「帰れ...」
「いや!自分にもなにか出来ることがあるはずです!」
「勝手にしろ...」
山崎もこの原口にはなにを言っても通じないことはわかっていた。彼はまだ新人。現場で出来ることも限られる。しかしあの課長は「原口には現場に触れてもらって、経験を積んでもらう。ってなわけで山崎頼んだ」
どこまで無責任なんだ...
とか考えていると、鑑識がやって来て、
「現場検証終わりました」
「ご苦労さん」
さて、捜査一課がなぜここにいるかお分かりだろうか...火事だけなら捜査一課の仕事ではない。
そう、【放火】しかも中では人が死んでいた
つまり、捜査一課の出番となったわけだ。
...迷惑な話だ...
などと考えていると、再び鑑識がやって来て
「遺体の身元が判明しました。Sマンションに住んでいる、谷本一樹34歳だそうです」
「Sマンション?この家の家主じゃないのか?」
「あ、はい。この家の家主は水原弥生28歳
だそうです。事件発生後は彼女を見た者はこの近辺にはいないようです。」
「なんだそりゃ。確実に彼女が怪しまれるだろ。なんでそんなことを。」
(鑑識の調べた結果から推測すると、どう考えても彼女が怪しいだろう...しかし、自分の家に放火し、そのまま逃亡するなんて、疑ってくれと言っているようなものだ...)
納得のいかないまま、事件現場へと山崎と原口の二人は入って行った...