赤雪
今は読み切りしかかけんがなんだろうこれはw( ^ω^)
カーコ
僕が住むこの街には昔から赤雪が降る。
ある人から見ればそれは美しい光景で、ある人から見ればそれは呪いの光景。
彼女はそれを綺麗といった。
「おーい、紙袋の人いる?」
街外れの山小屋、僕が住む場所。いつもの彼女が雪宿りに来た。
『紙袋の人って何?』
「あたしあんたの名前知らないしそれに紙袋かぶってるしだから紙袋の人」
『安直すぎない?まぁ、名前教えてないから、仕方ないけどね』
「あたしもあんたに名前教えてない」
その瞬間目と目があった。何かがおかしくて、僕らは笑いあった。
「赤雪ってさ、なんで呪いの光景って言われてるの?」
『それは、まるで誰かの血のようだ。これだけ多くの赤い雪、どれだけの人の血が、流れたのだろう。そういう言い伝え。そもそも、ここには殺人鬼が住んでいた。何人、何十人も殺した最悪の殺人鬼』
「そのひ孫だからあんたはこんな山奥で紙袋なんかかぶって住んでるの?」
『……うん』
僕は何もしていない。けれどもそれはほかの人から見れば殺人鬼の主張。
何もしていなくても、血が繋がっている、ただそれだけで危険とみなされた。
「……あ、綺麗な顔」
『ちょ、何してるの!』
ボーッとしているあいだに彼女に紙袋を取られていた。
「綺麗だね」
そう言って無邪気に笑った。殺人鬼の孫らしく醜く傷つけられた顔を。
『…君は本当に、変わっているね』
「そう?イカレタ殺人鬼ってやつだからかな」
返り血まみれの顔で彼女は無邪気に笑う。
「まぁ人の意見や評価なんて気にしなくていいよ。誰も殺してないあんたが殺人鬼扱いで、本物の殺人鬼のあたしは普通の女の子って思われてるんだし」
『……そう…だね』
「ねぇ、もっと赤をたしたらもっと綺麗な赤い雪になるかな」
『…かもね』
傷をつけて欲しい。なぜかそう思った。消えない傷を、深く、深く。
こんな傷じゃまだ足りない。
「………今日はこのくらいにしとく?」
『…んー、もう少し』
「あんたってマゾ?」
『かもね』
街の人に付けられた傷が痛むとき、その痛みを彼女が付けた傷が癒してくれる。そんな気がするんだ。
「あ、赤雪降ってきた」
窓の外には赤雪。それを見ながら、僕は僕の上に乗っている彼女の頭を撫でた。
『なんか今日はいつもより赤いね』
「あんたの血だったりして」
『そうかもね』
街外れの山小屋で、白は赤になっていく。