9 自分勝手
あれから三日たった。真希らしき視線を遠くから感じるがやはり、話しかけてはこなかった。何とも思わないと言ったらうそになる。少し寂しい、でも元の自分に戻っただけ。そう言い聞かせようとしても、初めてできた友達を失ったような喪失感。真希はどこか自分からも逃げているような気がする。するとさらにそれは重なり合って、重くのしかかってくる。なんか、失うことも、離れることも、怖くてできなくなりそうだ。
真希と話さなくなって、ぼーとする時間が増えた。
真希がほかの人と話している。真希って、やっぱり友達多いんだよね。ここに住んでいるだけある。友達がたくさんいて、明るくて、活発で、いつも笑顔。なんか憧れる。ぼーとそんなことを思う。真希といつも一緒に居たいと思ってしまう。そんな気持ちを持ったままで、また引っ越すことってできるの? 自問自答なんてできない。答えにならない。否、答えは決まっている。
真希が近づいてくる。何事かと本を読む目と手を止めた。顎に机が乗るぐらいにしゃがんで、謝ってくる。
「ごめん。なんかわからないけど、わたし、無神経なこと言った、よね」
優しいんだ。ふと思う。明るくて、活発で、いつも笑顔で、そして真希は優しいのだ。真希の顔を見て、何か、嬉しかった。話せることが、友達みたいで。自分をきちんと見てくれる人が、ここにいるのだと感じて。
「……別に。真希は悪くないと思う」
少し、声が張った。自分が思いのほか素直になれていなかった。ちょっとだけぶっきらぼうな言葉つきになったのを後悔する。
「わたし、自分勝手だからさ。あの時なんか嫌な感じがして。あの時もその、勝手にだまってわたしの方こそ、えとごめん」
言ってすぐに恥ずかしくなる。こんな言葉、言ったことはなかった。みんなが言っているありふれていた言葉が、自分にとってとても手の届かない憧れだった。
ただ、自分勝手だよね、とすぐに思った。もう引っ越すからって、そんな理由で真希の行為に何か、臆した。何かに、―――きっと失うことに―――怯えて、真希を無視した。真希の質問に、自分で、《話さなければいい》なんて思ったんだ。そう思うと自分が少し情けないかもしれない。未練を残さないように、そう思い続けた結果、わたしには友達も、話しかけてくれる人もいないのかもしれない。全てが自分のせいだとわかっていた。とてつもない恥ずかしさと、衝動的な憧れ。目の前にいる光に、輝きにすべてを持って行かれそうになった。すると、真希に抱きしめられた。温かい。涙腺が緩んで何かが伝った。これが涙か。そんなことを思った。
「ごめんね!! ホントごめん! わたしも、聞きたいこと聞いてさ。なんか何も教えてないよね。何も、わたしのこと知らないよね。ごめんね。無神経なこと聞いて。勝手に……」
最後のほう、真希は涙声になっていた。わたしみたいなもののために、泣いてくれている。確かな涙を流していた。その事実があるだけで嬉しくなった。
真希が今度の夏祭りにいっしょに行こうと誘ってくれた。嬉しかった。勿論、OKを出した。自然と口角が上がるのを感じた。