7 品定め
とっても短いです。
1年前の夏の日です。わたしは、父の仕事の異動で峡守町に引っ越してきました。
初めての景色。初めての学校。転入生だからかざわざわと騒がれる。こういうのが嫌なのだが、その町に市に、一人でとどまる理由もない。新しい制服を着て、下を向いて先生の後ろを歩く。もうすぐホームルームだ。わたしの自己紹介が始まる。
先生が長い連絡事項を述べ終わる。ガラッと扉があく。時計を見るともうすぐ鐘が鳴るようだ。
「今日から、二年B組のクラスメイトになる、紫原実幸さんです。みなさん仲良くしてくださいね。…紫原さん、何か一言」
少しざわついているが、何度も味わうのはこの、どんな子だろうかと、品定めをされている感じ。全身を物凄く見られる。思いっきり見られる。この感じが居心地が悪くて嫌いだ。
何か一言。そんなもの、決まっている。いつも新しい場所へ来た時に言う決まり文句だ。
「……紫原実幸です。またすぐに引っ越してしまうと思うので、あまり仲良くしてくれなくていいです。よろしくお願いします」
また教室がざわつく。わたしは一番後ろの席に案内された。
どこへ行っても、ここら辺の席だというのが、小学校からの決まりだ。ガタンと音を立て、椅子を引き席に着く。もう引越しなんてうんざりだ。どこもかしこも、おんなじ目でわたしを見るのだから。