5 友達
その帰り、わたし達は死ぬほど話した。今迄の三日のわだかまりを感じずに、そして、今までの時間を凝縮するように、まるで学校には初めから一緒で学校には行った時からの大親友のように。
「花火の最後、すごかったなー」
実幸があまりにも抽象的すぎる発言をしたのでわたしは少し笑った。
「なに? なんか変なこと言った?」
「いや、ただ、あんまり子供みたいな、抽象的な……」
笑いをこらえるのに必死だったので、言葉が震えた。初めて会った時の実幸とはかけ離れた顔だった。
「……ねぇ、真希ってさ、生まれてからずっとここに住んでるの?」
「えっ、うん。そうだよ」
実幸の真剣な表情にさっきまでの楽しさは何か吹っ飛んだ。何か大切な話をしてくれる。そんな、確証を持った。
「わたしね、真希が話しかけてくれた時、本当にうれしかったんだ。わたし、友達居ないから」
あぁ、やはり。わたしは黙って聞いておこう。勝手な解釈は間違ってはいない。ただそれは、とても悲しいことで、悔しいことだ。きちんと耳を傾けて聞こうと思った。わたしは、実幸の友達だから。
「だから真希が話してくれた時嬉しくて。でも名前を知らなくて。だから、わたしも話してみた。いっぱい質問してくるから。でもね、真希こういったよね。『何で転入早々に、〝仲良くしてくれなくていいです〟なんて言ったの?』って。わたし、今まで友達作ってこなかったんだ。ていうか、作れなかった。人見知りだし、話しかけられないし。それに作ってもすぐに、すぐに、わたしは転校して、きっと、作れた友達は私のことすぐに忘れる。一番の友達なんていないし、きっとこれからもできないと思ってたんだ」
そこで実幸は言葉を切って、息を吸った。一気に胸の内をさらしたのだろうか。きっと、何かを耐えている。誰にも話したことのない、実幸の気持ちだ。
「でも、この町でできた。この町が好きなんだ。もう、離れたくないんだ。どうしたらいいのかな……」
「実幸……」
実幸の言葉に、思わず名を呼ぶ。そういうことを考えたことがないわたしは、どう反応をとればいいのか。友達をすぐに作れるものだと思っていたわたしは実幸から見たらどう映ってしまうのだろうか。ふと、そういう感情に追われた。しかし、すぐに現実に戻される。
「いやでも、きっと引っ越す。またすぐに引っ越しちゃう。だからさ、真希」
ん? と返事をした。わたしは、実幸の友達だから。どんなことでも、受けれるように頑張る、という意味を込めて。実幸の必死な言葉にいつの間にか吸い込まれているみたいだった。
「これからもずっと友達でいてくれる?」
「……もちろん!!」