表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏の日の出来事  作者: 夕部空波 
実幸の思い
10/12

10 花火

 夏休みの一週間前。七月十六日、海の日に夏祭りは開催されるそうだ。いつか母が着たという浴衣を引っ張りだし、着付けをしてもらう。髪は自分で上げて、浴衣とセットの髪飾りをつけた。


 夏祭り会場は活気にあふれていた。そういえばきちんとした祭りに参加するのは、生まれて初めてかもぁなと思いながら、背の低い真希をかわいっと思う。


「ね、焼きトウモロコシ買おっ!! 150円だし!」

「えっ、高いよ。わたしは、100円のしか買わない」


別に高くないだろうが、わたしは今、300円しか持っていない。母からこれだけしかもらえなかったのだ。(もうお小遣いは上げたからね! と言われ、わたしのお小遣いは溜まっているが、豚の貯金箱なので割るしか道がなく、仕方ないということでもらったのが300円)何ともくだらないエピソードだが、その最後に、「実幸は目が優しくなったね」と言われた。今迄きつい目をしていたのかな? と少し疑問だったが聞かなかったことにする。今は目の前の、最後の、祭りを楽しもう。


「花火上がるよ! わたし、穴場知ってるの」

「え、どこ?」

「こっち~」


右手をとられる。左に持っていた綿あめ(50円)を落とさないようになんとか器用に走った。丘の上へ、だ。


 ドンと花火が上がる。大きい。きれいだった。大きな音、光、輝き、がやがやとうるさい、祭り独特の雰囲気。目の前に大きな光が現れる。


「ほら」


そういって、真希は振り向いてくる。でもその続きの言葉はこなかった。初めての花火に感動して、真希の言葉が聞こえなかったのかもと少し後になってそう思う。大きな大輪の花火は、初めて見る。子供心に火がついたのかもしれない。ただ感動して、そこから一時も目が離せなかったのだ。


 気が付くと真希が隣に立っていて、わたしの手を握る。中二なのに恥ずかしいと少し思ったが、真希のその気持ちが、暖かみが、優しさが嬉しくて、わたしも真希の手をそっとしかし力強く握った。


夏祭り。一応二人は中学2年生です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ