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【新装版】枯れたおっさん、何もしないで異世界を救う  作者: アズマユージ


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第6話 初任務は、静かな誤解から始まる

今日も、2話投稿の予定です!

 特別観察官。


 聞こえだけは立派だが、実態は“放し飼い”に近かった。


「要するに、街を歩いて、気づいたことを報告すればいいんだよな?」


「はい。危険を感じた場合は、無理に介入せず――」


「そのまま逃げろ、だろ?」


 ユージの即答に、ナーチャンは小さく頷いた。


「ええ。ユージ様に戦闘能力はありませんから」


 きっぱり言われて、逆に清々しい。


「正直で助かる」


 そんな軽口を交わしつつ、二人は城下を歩いていた。


 今日の目的地は、東区画の倉庫街。

 最近、小さなトラブルが増えているらしい。


「盗難や価格トラブルが多発しています」


 ナーチャンが説明する。


「原因は?」


「流通量の急増です。魔族領との交易が始まり、従来の管理が追いついていません」


 ユージは頷いた。


(システムが変わったのに、運用が旧来のままか)


 典型的な“過渡期の歪み”。


 倉庫街に入ると、空気が変わった。

 人の数が多い割に、視線が鋭い。


「……ここ、みんな疑心暗鬼だな」


「え?」


「信用が担保されてない。

 だから、少しのことで疑う」


 ナーチャンはメモを取る。


 その時。


「おい! その箱、勝手に触るな!」


 怒号が響いた。


 見ると、若い商人と、荷運びの獣人が揉めている。


「触ってない!」


「嘘つけ! 減ってるんだ!」


 周囲がざわつき始める。


 ユージは、ため息をついた。


(またか)


「ちょっといい?」


 声をかけると、二人が同時に睨む。


「誰だお前!」


「関係ないだろ!」


 ユージは箱を指差した。


「中身、香辛料だよな?」


「……そうだが」


「この倉庫さ、乾燥してるよな?」


 二人が怪訝な顔をする。


「この倉庫は、香辛料の保管に適した湿度を保っていないんだ。

 つまり、重量が減ったんじゃなくて、乾燥して軽くなってるってことさ」


「……!」


 商人が慌てて箱を開ける。


「……本当だ。量は減ってない」


 獣人が鼻を鳴らした。


「だから言っただろ」


 場の緊張が、一気に抜ける。


 ユージは肩をすくめた。


「原因が“人”じゃないなら、犯人はいない。

 だったら、責める相手もいないだろ?」


 商人は頭を下げた。


「すまなかった……」


 獣人も、ぎこちなく頷く。


「香辛料を保管するには、適度な湿度が必要なんだ。

湿度が高すぎると腐敗するし、低すぎると乾燥して風味が飛んだりする。

商品を高く売りたけりゃ、そのへんのところに気を配った方がいいぜ。」


「なるほど、それはいいことを聞きました。」


 ナーチャンは、その一部始終を黙って見ていた。


(盗難ではなく、環境要因)


(しかも、双方が納得)


 その後も、似たような事例がいくつか続いた。


 帳簿の食い違い。

 納期の誤解。

 言葉の行き違い。


 ユージは一つ一つ、淡々と整理していった。


 夕方。


 城へ戻ったナーチャンは、即座に報告書を書き上げた。


 ――翌日。


 王城会議室。


「倉庫街のトラブルが、ほぼ沈静化しただと?」


 近衛騎士団長が目を剥く。


「はい。原因は盗難ではなく、管理体制と環境の問題でした」


「衛兵を増やす必要は?」


「不要です」


 魔術顧問が低く唸る。


「……つまり、力で抑えずに解決した、と」


「はい」


 マイヤン王女は、資料を閉じた。


「昨日、倉庫街の商人組合から礼状が届いたわ」


「礼状?」


「“最近、空気が軽くなった”そうよ」


 誰かが小さく笑った。


「ユージという男……」


 王女は考え込む。


「本人は、これを成果だと思っていないでしょうね」


 ナーチャンは静かに頷いた。


「はい。

 ですが――」


「ですが?」


「このまま放っておけば、周囲が勝手に評価を積み上げます」


 その頃。


 当の本人は、宿でベッドに倒れ込んでいた。


「……疲れた」


 今日の成果?

 本人の感覚では、“揉め事に巻き込まれただけ”。


 だが――。


 この静かな誤解は、

 やがて大きな期待へと膨らんでいく。


 そしてその期待が、

 ユージを、さらに厄介な立場へ押し上げることになるのだった。

大雪が降っている地方の方々、大変ですね。

私も、8年前に金沢に住んでいた時に、大雪でうんざりする毎日を過ごした経験があるので、身につまされます。

止まない雪はありません!頑張りましょう!

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