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【新装版】枯れたおっさん、何もしないで異世界を救う  作者: アズマユージ


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第46話 歴史的会談前夜

特区――ユージア中央広場。


普段は市場として使われているその場所は、

今や巨大な式典会場へと変貌していた。


高く組まれた演壇。


三つ並んだ旗。


王国の紋章。

魔王国の紋章。

そして――


新たに掲げられた旗。


ユージアの旗。


青い空と、大地を象徴する黄金の麦穂。


作業員たちが慌ただしく動き回っている。


「椅子をもう一列追加!」


「各国使節団の席を確保!」


「通路を塞ぐな!」


その様子を、丘の上からユージが眺めていた。


腕を組み、感心したように言う。


「……すげぇな」


隣に立つナーチャンが微笑む。


「世界史に残る式典になりますから」


神楽耶が腕を組む。


「王国と魔王国が、同じ席に座るのじゃ」


「百年の戦が終わる」


少し間を置いて、


「前代未聞じゃな」


ユージは肩をすくめた。


「まあ、こういうのはな」


振り返る。


「ぱーっと派手にやった方がいいんだよ」


ナーチャンが首をかしげる。


「派手に、ですか?」


ユージは笑う。


「ある種のお祭りだ」


「その方が、人の記憶に残る」


遠くの演壇を見ながら続けた。


「歴史ってのは、案外そういうもんなんだ」


神楽耶がくすりと笑う。


「お主は、本当に変わった男じゃ」


そのとき。


空の向こうに、小さな影が現れた。


飛空船。


王国の紋章。


神楽耶が目を細める。


「来たの」


やがて特区上空に、複数の飛空船が現れる。


王国使節団。


その旗艦がゆっくりと着陸する。


タラップが降りた。


最初に姿を現したのは――


マイヤン。


白い外套を翻し、ゆっくりと歩き出す。


その後ろには、


ニシダト。

ゲユタカ。

サナディ。


王国の中枢が勢揃いしていた。


特区の人々がざわめく。


「王国の……」


「本物だ」


マイヤンは周囲を見渡した。


広場。


水路。


市場。


そして――


広大な麦畑。


黄金色に揺れる穂。


唇を噛む。


「……本当にやってしまったのね」


ニシダトが低く言う。


「この規模の穀倉地帯……」


「王都周辺にも無い」


ゲユタカが続ける。


「しかも防衛力も完備」


遠くの空。


巨大な影。


飛行戦艦ヤマットが静かに巡航していた。


さらにその上空。


白い軌跡。


ホワイトタイガーが哨戒飛行している。


サナディが苦い顔をする。


「軍事国家ですな」


マイヤンが静かに答えた。


「いいえ」


視線を遠くに向ける。


丘の上。


そこに立つ男を見つけた。


「……抑止国家よ」


その頃。


別の方向から、もう一つの艦隊が近づいていた。


黒い旗。


魔王国。


飛空船が着陸する。


最初に降りたのは――


魔王アサダ。


若き魔王は静かに周囲を見渡した。


「ここが……」


「ユージア」


サムが横に立つ。


「ええ」


冷静に言う。


「この世界の均衡を塗り替えた場所です」


アサダは遠くの麦畑を見る。


風に揺れる黄金。


「……美しいですね」


サムが小さく頷く。


「ええ」


そして低く続けた。


「恐ろしいほどに」


丘の上。


ユージは両国の到着を見ていた。


「よし」


伸びをする。


「主役が揃ったな」


神楽耶が笑う。


「お主が言うと、芝居のようじゃの」


ユージは肩をすくめた。


「だって、実際そうだろ?」


広場を見渡す。


三つの旗。


世界が変わる場所。


「明日から、歴史の教科書が書き変わるんだ」


ナーチャンが静かに言う。


「ええ」


そして微笑む。


「あなたのせいで」


ユージは即座に否定した。


「違う違う」


「俺は何もしてない」


風が吹く。


黄金の麦が揺れる。


遠くで鐘が鳴った。


和平締結式――


前夜。


世界が息を潜めて、その瞬間を待っていた。

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