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【新装版】枯れたおっさん、何もしないで異世界を救う  作者: アズマユージ


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第43話 巨象と蟻

巨大飛行戦艦ヤマット。


陽光を受けて輝くその姿に、

特区の住民たちは歓声を上げていた。


甲板を駆ける整備兵。

低く唸る魔導推進炉。

重厚な装甲に走る魔導回路。


それはもはや象徴だった。


ユージは腕を組み、感心しきりだった。


「……お前ら、ほんとすげえな」


リシュンが鼻を鳴らす。


「まだ試験航行段階だ」


アルノルトが静かに補足する。


「主砲出力も三割制限です」


「撃たないから関係無いけどな」


「あはは、そこは技術者の矜持ですよ」


軽口が飛び交う。


だが、その巨大な影は圧倒的だった。


空を支配する存在。


そのとき。


ユージが、ふと黙り込む。


ヤマットを見上げたまま。


「なあ」


二人が振り向く。


「これは、俺が元いた世界の話なんだけどな」


少しだけ遠い目になる。


「俺の国はな、昔、巨大戦艦に夢を見た」


「海を制する者が、戦を制するってな」


リシュンが興味深そうに腕を組む。


「それで?」


ユージは静かに言った。


「戦局が変わった」


「空中戦の時代になったんだ」


「巨大戦艦は、空から襲われた」


「まるで――巨象が無数の蟻に群がられるみたいに」


「戦闘機に囲まれ、撃沈していった」


沈黙。


アルノルトの目が光る。


リシュンがゆっくりと笑う。


「……なるほど」


「機動力が無ければ、巨象は倒れる」


ユージは肩をすくめる。


「歴史は繰り返す」


その瞬間。


二人の顔つきが変わった。


完全に、発明家の顔だ。


「アルノルト」


「ええ、高速・小型・多機運用ですね」


「数で制空」


「分散機動」


ユージが慌てる。


「ちょ、待て」


だがもう遅い。


二人は図面を広げていた。


イコタンが遠くから叫ぶ。


「予備予算、確保済みです!」


「……本当に?」


「未来への投資を惜しむのは無能です」


タケシトが笑う。


「さすがリーダー!十年先を見てやがる!」


「俺そんなつもりじゃないからな!?」


翌週。


朝。


ユージが何気なく空を見上げた。


高空に、白線。


いく筋も連なる飛行機雲。


轟音。


音速を超えた衝撃波が遅れて届く。


超高速戦闘機部隊――


《ホワイトタイガー》。


銀色の機体が編隊を組み、鋭く旋回する。


軽い。

速い。

そして致命的。


ヤマットの周囲を守る空の牙。


リシュンが満足げに言う。


「これで巨象は狩られない」


アルノルトが静かに続ける。


「制空権は我々が握る」


ユージは呆然。


「一週間でやるなよ……」


タケシトが肩を叩く。


「これで特区は盤石だ」


「王国も魔王国も焦ってるぜ」


ユージは苦笑する。


「なんでも俺のせいにすんなって……」


だが。


遠くの丘。


王国偵察兵が双眼鏡を落とした。


「飛行……機?」


魔王国側監視塔。


「ヤマット確認」


「小型高機動機、多数確認」


「幻影ではありません」


報告は走る。


王国。


魔王国。


両国の首脳は、同時に理解する。


特区は――


もはや緩衝地帯ではない。


独立軍事勢力だ。


均衡は保たれたのではない。


再定義されたのだ。


そしてその中心にいるのは、


自覚なき男。


ユージは空を見上げる。


白い虎が青空を裂く。


ぽつりと呟く。


「……抑止って、こういうことか?」


神楽耶が隣で言う。


「力を持たねば、平和は守れぬ」


少し間を置いて、続けた。


「じゃが、力を持った瞬間から――世界はおぬしを放ってはおかぬ」


風が吹く。


白い軌跡が、ゆっくりとほどけていく。


遠くの丘。


かすかな光がまた瞬いた。


誰かが、見ている。


ユージはまだ知らない。


自分が今、

世界の均衡点に立ったことを。


聳え立つ巨象。


空を裂く白い虎。


それは、守るための牙。


だが同時に――


新しい時代の幕開けでもあった。


――世界は、静かに動き出した。

新作『辺境ギルド長は、戦わないのに最強でした』も連載中です。

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