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【新装版】枯れたおっさん、何もしないで異世界を救う  作者: アズマユージ


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第30話 タスクフォース、王命により結成さる

第三辺境防衛砦の朝。


いつものように鉄を叩く音が響き、魔導装置の低い唸りが通路を震わせている。


その喧騒を切り裂くように――


「王都より、急使!」


外門から怒号が響いた。


兵士が駆ける。

階段を上る足音。


ほどなくして、息を切らした伝令兵がユージの前に跪いた。


「辺境調停官ユージ殿に、王都より緊急召喚状です!」


羊皮紙が差し出される。


赤い封蝋。

王家の紋章。


ユージは、嫌な予感しかしなかった。


「……開けなくても内容がわかる気がする」


「開けてください」


ナーチャンが淡々と言う。


渋々、封を切る。


短い。

だが重い。


――辺境調停官ユージに告ぐ。

  王命である。

  至急、王都へ出頭せよ。


「……終わった」


リシュンが横から覗き込む。


「王命か。派手だな」


「派手とか地味とかの問題じゃないだろ!」


ユージは頭を抱えた。


「絶対あれだよ!ヤマットだよ!あの黒歴史砲だろ!」


リシュンが満足げに頷く。


「いい演出だった」


「まったく良くない!」


ナーチャンは冷静に分析していた。


「理由は三つ考えられます」


一本指を立てる。


「第一に、魔族軍撤退の詳細確認」


二本目。


「第二に、兵器の真偽確認」


三本目。


「第三に――あなたの利用価値が、さらに上がった」


ユージは遠い目になった。


「それ、あかんやつや……」


伝令兵が固い声で言う。


「即時出発を!」


拒否権なし。


ユージは深くため息を吐いた。


「……俺、面倒ごと嫌いなんだけどな」


「存じております」


即答。


こうしてユージは、再び王都へ向かうことになった。


王命なのだから。


---


王都――謁見の間。


重厚な扉が閉じられた瞬間、空気が張り詰めた。


玉座には王女マイヤン。


左右には、老魔導士ニシダト・シユキ。

近衛騎士団長ヒロ・サナディ。

そして宰相ゲユタカ・マツシ。


中央に浮かぶ魔導投影。


――戦艦ヤマット。


白光を溜め込む主砲。


そして、発射直前で止まる一撃。


続いて、魔族軍の撤退。


映像が止まる。


ユージは目を閉じた。


(誰だ、撮影したのは)


マイヤンが微笑む。


「よく来てくれたわ、ユージ」


優しい声。

だが逃げ場はない。



「撤退した時の状況は?」


「知らん。勝手に引いて行った」


「では、今見た兵器が幻想だというのは?」


「事実だ。リシュンが開発した装置だ」


「いや、俺はリーダーのアイデアを実現しただけだ」


「なるほど、良くわかりました。

ユージ殿、魔族軍を撤退に追い込んだ手腕、お見事でした」


「いや、だからあれは隣のリシュン――」


「お見事でした」


速攻で被せて来やがった。


相変わらず人の話を聞かない女だ。


そして、マイヤンは立ち上がって言った。


「国王に代わり、あなたに王命を下します」


背筋が冷えた。


「対魔族特別戦略タスクフォースを編成します」


「その長を、ユージ殿、あなたに命じます」


沈黙。


「……は?」


本音が漏れた。


「待て!俺、魔力ゼロだぞ?」


「武力もないし」


マイヤンは微笑みも崩さず、首をわずかに傾ける。


「――それが何か?」


空気が、ぴんと張る。


「魔力も武力もないあなたが、魔族軍を退かせた」


「それが事実です」


沈黙。


ニシダトが目を細める。

サナディの指が、鎧の柄にかかる。


マイヤンは微笑みを崩さない。


ユージは必死に抗う。


「今砦にいるのだって、俺とナーチャンとリシュンの三人だ!」


「俺たち三人で出来る訳ないだろ!」


その瞬間。


マイヤンが、意味ありげに微笑んだ。


「そうね」


静かに告げる。


「宰相ゲユタカ、かの者たちを」


扉が開く。


三つの影。


ユージは知らない。


だが――


隣で、ナーチャンの顔が引きつった。


「……え」


小さな声。


ユージが囁く。


「誰だ?」


ナーチャンが低く答える。


「王国の切り札級です」


「ケル・サトータ――調整能力に秀でた天才」


「マリナ・イコ――人事財務のスペシャリスト」


「タケシト・ミザワ――詳細不明ですが、危険人物です」


三人の視線が、ユージに向く。


値踏み。

分析。

評価。


まるで、解体される家畜の気分だった。


マイヤンが告げる。


「あなたは、戦わずに魔族を退かせた」


一歩、前に出る。


「ならば次は――」


微笑む。


「被害を出さずに終わらせなさい」


沈黙。


誰も異論を唱えない。


唱えられない。


ユージの喉が、ひくりと鳴った。


(いや無理だろ)


だがマイヤンは、ゆっくりと言い切る。


「それが、あなたへの王命です」


完全に詰んだ。


ゲユタカが静かに告げる。


「それでは、準備を」


逃げ場はない。


ユージは、深く息を吐いた。


「……無理ゲーだ」


だが、誰も笑わない。


マイヤンの笑顔だけが、変わらない。


こうして――


タスクフォースは、王命により正式に結成された。


戦はまだ始まっていない。


だが。


今度の戦場は、剣でも魔法でもない。


外交という名の、


逃げ場のない最前線だった。

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