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【新装版】枯れたおっさん、何もしないで異世界を救う  作者: アズマユージ
第一部 ユージア国誕生編

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第20話 めざとい奴らって、いるんだよね

村に、妙に立派な馬車が入ってきた。


装飾過多。

金属光沢。

無駄に多い護衛。


「……ああ、中央の面倒くさいやつだな」


ユージは、ため息をついた。


⸻


馬車から降りてきたのは、

高そうな服を着た男と、

愛想だけは良さそうな商人風の男。


「失礼!」


官僚風の男が、胸を張って名乗った。


「王国中央開発局、第二監理課所属――」


(長いな…)


「……監査官だ」


⸻


「で?」


ユージは、村の柵にもたれたまま聞いた。


「ご用件は?」


監査官は、少し不満そうに言った。


「辺境調停官殿に、ご協力願いたく」


「何を?」


「この地域の“有効活用”についてです」


(誰にとっての有効なんだか…)


⸻


横にいた商人が、一歩前に出る。


「私は王国公認商会の代表でして」


にこやかだが、目が笑っていない。


「この村の土地と労働力を活用し、

 交易拠点として再編する計画を――」


「ちょっと待て。何を言っている?

そんな計画、誰が決めたんだ?」


ユージが遮った。


⸻


「……王国として」


「王国って、評議会で?」


「いえ、評議会にはかけていません」


「では、局内決裁?」


監査官が、言葉に詰まる。


⸻


「まさか」


ユージは、首を傾げた。


「機関決定もしてないのに、勝手にやって来たのか?」


空気が、凍った。


⸻


「王国の正式な決定とあらば、こちらも正式に抗議しよう」


ユージは、淡々と続ける。


「だが、お前らの茶番に付き合う気は」


ユージは一歩前に出る


「さらさら無い」


⸻


監査官の顔色が変わった。


「き、貴様、調停官風情が偉そうに……」


「勘違いするな」


「俺には何の権限も無いし、真面目に働く気も無いが、抜け駆けを黙って見過ごすと、後が面倒になるんでな」


⸻


商人が、焦って口を挟む。


「ですが!

 この計画は王国にも利益が――」


「嘘だな」


即答。


「最も利益を得るのは、お前だ」


⸻


「それに、この村で王国の威光を振りかざせば」


ユージは続ける。


「魔族は“王国の拠点”と認識する」


「そうなれば、ここは戦場になる」


「……お前たちは、その意味を理解しているのか?」


⸻


監査官は、完全に青ざめていた。


「わかったら、作業の邪魔だから、とっとと帰ってくれ」


ユージは、そう言って踵を返した。


「ま、待ってくれ……!」


「もう一度言う、帰れ」


ユージは、穏やかに言った。


「お前たちの私利私欲による独断専行が、魔族との戦争を引き起こした」


「そんな報告書があがったら、どうなると思う?」


⸻


「そ、それは……!」


「村には、今後一切関わるな」


⸻


沈黙。


やがて、監査官は深く頭を下げた。


「……失礼します」


商人は、言葉を失っていた。


⸻


馬車が去った後。


村人たちは、しばらく呆然としていた。


「……何が起きたのですか?」


「まあ、ああいう輩はどこにでも湧いて出るもんだ」


「でも、良かったのですか……」


「問題無い。

あんたらに迷惑はかけんさ」


⸻


村長が、小声で言った。


「……また、助けられてしまいましたな」


ユージは、肩をすくめた。


「気にするな。俺は、何もしてない」


⸻


その夜。


森の奥で、角の女が笑った。


「なるほど」


「権力には屈せずか」


「……実に頼もしい。だが、実に厄介だ」


⸻


焚き火の前。


ユージは、木杯を傾ける。


「……あーあ」


「勢いで言っちゃったが、面倒ごとにならなきゃいいな」


⸻


こうして。


おっさんは今日も、

剣も魔法も使わずに、問題が一つ潰れてた。

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