第20話 めざとい奴らって、いるんだよね
村に、妙に立派な馬車が入ってきた。
装飾過多。
金属光沢。
無駄に多い護衛。
「……ああ、中央の面倒くさいやつだな」
ユージは、ため息をついた。
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馬車から降りてきたのは、
高そうな服を着た男と、
愛想だけは良さそうな商人風の男。
「失礼!」
官僚風の男が、胸を張って名乗った。
「王国中央開発局、第二監理課所属――」
(長いな…)
「……監査官だ」
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「で?」
ユージは、村の柵にもたれたまま聞いた。
「ご用件は?」
監査官は、少し不満そうに言った。
「辺境調停官殿に、ご協力願いたく」
「何を?」
「この地域の“有効活用”についてです」
(誰にとっての有効なんだか…)
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横にいた商人が、一歩前に出る。
「私は王国公認商会の代表でして」
にこやかだが、目が笑っていない。
「この村の土地と労働力を活用し、
交易拠点として再編する計画を――」
「ちょっと待て。何を言っている?
そんな計画、誰が決めたんだ?」
ユージが遮った。
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「……王国として」
「王国って、評議会で?」
「いえ、評議会にはかけていません」
「では、局内決裁?」
監査官が、言葉に詰まる。
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「まさか」
ユージは、首を傾げた。
「機関決定もしてないのに、勝手にやって来たのか?」
空気が、凍った。
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「王国の正式な決定とあらば、こちらも正式に抗議しよう」
ユージは、淡々と続ける。
「だが、お前らの茶番に付き合う気は」
ユージは一歩前に出る
「さらさら無い」
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監査官の顔色が変わった。
「き、貴様、調停官風情が偉そうに……」
「勘違いするな」
「俺には何の権限も無いし、真面目に働く気も無いが、抜け駆けを黙って見過ごすと、後が面倒になるんでな」
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商人が、焦って口を挟む。
「ですが!
この計画は王国にも利益が――」
「嘘だな」
即答。
「最も利益を得るのは、お前だ」
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「それに、この村で王国の威光を振りかざせば」
ユージは続ける。
「魔族は“王国の拠点”と認識する」
「そうなれば、ここは戦場になる」
「……お前たちは、その意味を理解しているのか?」
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監査官は、完全に青ざめていた。
「わかったら、作業の邪魔だから、とっとと帰ってくれ」
ユージは、そう言って踵を返した。
「ま、待ってくれ……!」
「もう一度言う、帰れ」
ユージは、穏やかに言った。
「お前たちの私利私欲による独断専行が、魔族との戦争を引き起こした」
「そんな報告書があがったら、どうなると思う?」
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「そ、それは……!」
「村には、今後一切関わるな」
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沈黙。
やがて、監査官は深く頭を下げた。
「……失礼します」
商人は、言葉を失っていた。
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馬車が去った後。
村人たちは、しばらく呆然としていた。
「……何が起きたのですか?」
「まあ、ああいう輩はどこにでも湧いて出るもんだ」
「でも、良かったのですか……」
「問題無い。
あんたらに迷惑はかけんさ」
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村長が、小声で言った。
「……また、助けられてしまいましたな」
ユージは、肩をすくめた。
「気にするな。俺は、何もしてない」
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その夜。
森の奥で、角の女が笑った。
「なるほど」
「権力には屈せずか」
「……実に頼もしい。だが、実に厄介だ」
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焚き火の前。
ユージは、木杯を傾ける。
「……あーあ」
「勢いで言っちゃったが、面倒ごとにならなきゃいいな」
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こうして。
おっさんは今日も、
剣も魔法も使わずに、問題が一つ潰れてた。




