木枯らし斬り
赤く染まり上がった紅葉が右に左に落ち始め、空気の中で凍てつくような鋭さの風が吹き始めた。葉が地面をカラカラ、パラパラと転がり、そこに佇む二人の女の足元を通り過ぎた。刀を腰にこしらえた一人の女が、身長の高い女によって、今まさに殺されるか生かされるかの二択を迫られていた。身長の高い女が「お前の父を殺すのだ」と、刀を持つ女に耳元で言った。女の見下ろす女の首には、ピ、ピ、と音を立てている首輪が取り付けられていた。「父を殺さない、殺せないのならば、すぐに首が吹き飛ぶぞ」と女は言う。
刀の女は、ひどく葛藤していた。幼いころから、愛情を持って、時に厳しく、時に優しく育ててくれた父親が、まさか村を壊滅に導く悪党だなんて信じたくなかった。いつも正義を背負って、この刀の鍛錬に励み、村の治安を守るために、尊敬する父に近づくために生きてきたのだ。簡単に、殺すことなどできなかった。ただ、首に取り付けられている、この首輪が、どうも怖くて仕方がなかった。爆発したとき、痛いのだろうか、といらないことを考えると、鈍い汗が体から噴出した。また、落ちた葉と共に風が吹き、鞘に手をかけた。目の前には父が立っているが、女二人は覆面をしていたために気づかれることはなかった。父は刀を構えて、いつでもいいというような風貌で立っている。
先手を切ったのは父だった。女から手を出すことはできなかった。剣技は、互角だった。父に打ち込まれた技や型が、そのまま形になり、父には負ける力も、しなやかな体捌きで対抗することとなった。両者、足が土埃を上げて、葉っぱを舞い上がらせる。舞い上がった葉が、刀によって切られて、その空間からやってきた刀を、女は鞘で受け止める。女は覚悟を決めた。父を殺すことに決めた。自分の正義を貫くことにしたのだ。それが父の教えであり、また自分の導きとなった。
また冬の音を含んだ風が吹いたとき、女の鞘から、一切の摩擦を受け付けずに刀身が身を乗り出した。木の葉の流動に任せられたそのひと振りは、父の胴体を腰から肩に、斜めに切り上げた。
首輪は爆発しなかった。身長の高い女が、後ろで高笑いをしていた。父の生き様が付いた刀を鞘に納めた女は、落ち着かない様子で佇んだ。
「見事だ……琴葉……」
父のその言の葉が、また木枯らしと共に風に運ばれた。膝をついた女は、冷たい地面に手をついて涙を落とした。飛んだ葉が、その染みを隠した。




