「ッッッシャア!! 乙女ゲー転生じゃん!」
皆さんもすなる異世界転生というものを私もしてみむとてすなり。
初投稿なので、お手柔らかにお願いします。
ゆるく読んでもらえたら嬉しいです。
「ッッッシャア!! 乙女ゲー転生じゃん!」
目覚めた瞬間、わたしは異世界転生してた。
教会に併設された孤児院の女子部屋。相部屋の子から「リーナうるさい!」と怒られて、わたしはベッドの中でガッツポーズした。
孤児院転生。
毛布の中に見える髪の毛はピンク色で、くるくるのふわふわ。
これはもう、夢にまで見た乙女ゲー転生ではないですか!!
どうやらわたしの前世はオタクだったらしい。
王道の乙女ゲームはもちろん、小説やマンガ、悪役令嬢逆転もののアンソロジーまで、大体履修ずみだ。
孤児院に鏡がなかったので、教会のガラス窓に映った自分を確認してみる。
これはわりと、悪くないんじゃない?
窓に貼りついて自分の顔を見ていたら、同じ孤児院で幼馴染のテオが後ろにいた。
「ねえテオ、わたしって結構かわいいと思う?」
「えっ……ま、まあ、悪くないんじゃないか」
「だよねー!」
これは、ワンチャン、いけるかも?!
乙女ゲームといえば魔法!
特待生で学園に入って王子様と恋に落ちるやつ!
「ねーテオ、この世界に魔法とかってあるの?」
「魔法? そんなものお貴族様しか使えないぞ」
よっしゃこれ聖魔法に目覚めるパターン!
「でも、聖魔法ってどうやったら目覚めるんだろ」
とりあえず教会の周りをウロウロしてたら、神父様に見つかって掃除とおつかいをさせられた。
空いた時間には礼拝堂で女神さまにもめっっっちゃお祈りした!
聖魔法には目覚めなかったけど、神父様が飴ちゃんをくれた。
「ぜんぜん聖魔法に目覚めない……」
ほっぺの中で飴ちゃんをコロコロさせながら、わたしは落ち込んでいた。
「だからお貴族様しか使えないって言っただろ」
「だってわたしたち孤児じゃん? ワンチャンどっかのご落胤とかあると思ったんだよぅ~」
「ねえよ」
そう言うテオもほっぺをコロコロさせている。
「で、もうやめんの? 神父様の手伝い」
「え、やるよ。飴ちゃんもらえるし」
「そうかよ」
異世界といえば飯テロ!
うまい! こんな食べ物あったのか! って溺愛されるやつ!
でも何作ればいいんだろう! やっぱとりあえずポテチ?!
「夜遅くまで明かりつけてるだけでも怒られるのに、そんな食用油なんかいっぱい使えるわけないだろ」
「ええ~異世界の食糧事情厳しすぎじゃん……」
テオとふたりで半年かけてお小遣いを貯めて、小瓶一本分の揚げ油を買った。
たっぷりの油で揚げるとはいかなくて、揚げ焼きみたいななんちゃってポテチになった。
パリパリパリ
「うまいな」
パリパリパリ
「ううん~美味しいけど~コレジャナイ感」
「そうか? 充分だと思うが」
「あっテオそれじゃ足りないでしょ。余ったお芋落ち葉で焼き芋してあるから半分こしよ」
油が少なすぎて揚げられなかったじゃがいもの残りをふたりで分け合う。
「焼き芋もおいし~。じゃがバターにできたら最高なんだけどな」
「おやつにバターとか王侯貴族かよ」
「いや~どうしても欲しいわけじゃないけどさ。やっぱ異世界転生したからには王道は履修しておきたいじゃん」
「そうかよ」
「おまえ、他のやつに異世界転生とか言ってないだろうな」
「えっ言う訳ないじゃん。ワンチャン悪役令嬢ものの可能性もあるし。転生者ムーブするピンク髪はざまあされるんだよ! 身辺はキレイに! 好感度は高く!」
「俺はいいのかよ」
「えっテオは別だよ。テオがわたしにざまあする訳ないじゃん」
「……そうかよ」
「テオ、孤児院を出ていくって本当?」
「ここには15歳までしかいられない決まりだからな。住み込みの職人見習いの仕事見つけてきた」
そう言ってテオは木切れで作ったペンダントをくれた。
「ここ押すと、ほら。開くから。物入れになってる」
「えっすごい。チートじゃん。テオ天才?!」
わたしが驚くと、テオはなぜか照れくさそうにわたしの頭を撫でた。
「俺がいなくなったら飴ちゃん余るだろ。ここに入れとけ。あんま他のやつを餌付けすんな」
テオが行ってしまったので、わたしはひとりで乙女ゲーム計画を実行した。
前世のデザイン使って服飾チート?
メイク用品を発明して革命起こす?
じつは冒険者の素質あるかも?!
いろいろ試してみたけど、イマイチ乙女ゲームっぽい展開にならない。
それに「そうかよ」って言ってくれる人がいないとなんだか盛り上がらなかった。
テオが久しぶりに里帰りしてきたとき、わたしはひどい顔だった。
「目の下、すげえクマだな。飼ってんのか」
「王子様が結婚したんだって……」
「知ってる。それで祝日になったから帰ってきた」
「乙女ゲームの主人公、わたしじゃなかった! ピンク髪だしいけると思ったのに! 魔法使えて、学園の特待生で、実は貴族の落とし胤のピンク髪と結婚だって! わたしじゃなかった……。ピンク髪だしいけると思ったのに……」
「この世界にピンク髪何人いると思ってるんだ。なんでピンク髪だけでいけると思った」
テオはため息をついて台所の椅子に腰かけた。
「おまえ、もうすぐ15だろ。アホなことばっかやってて、就職どうするんだ」
「教会の下働きとパン屋と食堂から声がかかってる……。好感度頑張ってたおかげでよりどりみどり」
「じゃあパン屋にしろ。俺の工房からも近いから家が探しやすい」
「えっ」
テオはペンダントを差し出してきた。傷だらけの職人の手の上にあるのは、孤児院を出る時にもらったものよりもずっと複雑で繊細な細工だ。
「えっすごい。超キレイ。上達したんだね。テオ立派な職人さんになったね」
「……やる」
「ありがとー! あっコロコロ鳴ってる! やった~飴ちゃん入ってるの? 一緒に食べよ」
「……あけてみろ」
わたしが組木細工のペンダントを開けると、出てきたのは。
「……指輪」
「工房でもだいぶ1人前になってきたし、所帯を持とう。あんまり贅沢はできないけど、たまにはポテチとか飯テロとか、させてあげられるように頑張るから」
わたしは涙目になってうなずいた。乙女ゲームのヒロインにはなれなかったけど、等身大の幸せがここにあった。
「……ちょっとまって。わたし、飯テロって言葉テオに教えたっけ……」
続く言葉は、テオの唇に塞がれて消えてしまった。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!!




