連撃
オマハがクレバスの縁をよじ登り、ひょこっと顔を出した瞬間―――
正面で咆哮を上げるパゴクロークスを見て、苦笑する。
「パゴクロークス……君はとことん厄介事に巻き込まれるタイプだね」
「そうみたいです……」
「爪、気を付けて。鋼鉄より硬いから」
鋼鉄の爪……ウルヴァ◯ンみたいだ。
―――いやいや、気にしない、考えたら負けだ。
エマは深呼吸し、両手の剣を握り直す。
狙うはただひとつ。
首。
一息で切り上げる。
一撃で終わらせる。
「レンデルム流双剣術 雛帯」
雛の尻尾のように、長く、太く、しなやかに。
双剣だからこそ可能な“挟み斬り”。
相手の首に挿し込み、左右へ開く―――
ガァンッ!!
「っ……!! 防がれた!?」
鋼鉄の爪は伊達じゃない。
パゴクロークスは片腕でエマの双剣を受け止め、そのまま力任せに跳ね返す。
相手は言わば巨大な熊。
だが―――熊とは比べ物にならないほど体さばきが速い。
重いくせに動きは軽やかで、雪上を滑るように踏み込んでくる。
いける……まだ、見えてる。
「オマハさん!! こいつのランクは!!」
「A!!」
その一言に、エマの心臓が一瞬だけ跳ねる。
Aランク。
Bランクですら、あのスピードだった。
AとBでは、数倍から十数倍の力量差がある。
その割には…あまりにもスピードが遅い。
なら―――
この魔物、さっきまで手を抜いていた?
エマが思考を巡らせたその瞬間。
目の前にパゴクロークスの爪が迫る。
空気が切り裂かれ、頬に冷たい風が刺さる。
―――っ!!
いや、避けられる。
見えてる。
やっぱり……こいつ……こいつ!!
さっきの攻撃、明らかに速さを抑えていた!
本気ならもっと速い。
今の一撃は―――“その片鱗”。
でも、それは同時に―――
大きな隙。
「オマハさん!! クレバスの中から覗いてないで加勢してください!!」
「いや……だって……そのスピードに……追いつけるわけないじゃん……?」
オマハの声は完全に諦めの響き。
まぁ…Aランクの魔物は1体でAランクパーティーで倒すことが推奨されてるからね…
パゴクロークスが低い姿勢になる。
エマの脚を狙っている―――
しかし、エマからすればそれは絶好の機会。
一瞬で勝負を決める。
…連撃で!!
足元の雪を蹴り、一気に踏み込む。
初撃。
「レンデルム流双剣術 岩喰らう蒼天」
地面に片刃を突き立て、そのまま地面ごと持ち上げるように大きく切り裂く。
飛び散った氷片が蒼天のようにキラキラと舞い、その切っ先がパゴクロークスの顎を強打した。
巨体が僅かによろめく。
その背後に、もうエマは回り込んでいる。
二撃目。
仕留めの一撃。
「レンデルム流双剣術 二弧 顎」
双剣を逆手に構え、背後から同時に突き刺す。
二本の刃が弧を描きながら、そして―――




