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悪役令嬢だって悪くない  作者: めめんちょもり
この不条理を変えてみせる
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レティシア様、スパルタの始まりです

翌朝。

「―――ではレティシア様、今日から本格的な体力向上メニューを始めます」

「え、今日から!? 心の準備が……」

「準備など昨日のうちに済ませておくべきです。さぁ参りましょう」

「いあぁぁぁぁ……!」


屋敷裏の訓練場。まだ日が低いのに、レティシアの表情はすでに死にかけだ。


「まずは腹筋五十回」

「えっ、五十!? 五……じゅ……」

「レティシア様、一緒にやりましょう」

「うぅ……」


エマはまるで何でもないようにひょい、ひょい、と腹筋を始めた。

背筋が一直線に伸び、動作に無駄が一切ない。

一方レティシアは―――


「っ……は……っ、かはっ……エマ、こんな……苦しいの……」

「まだ二十回です」

「嘘でしょ!? 今ので四十八くらい行ってたでしょ!?」

「お嬢様、幻覚です」


そのあと腕立て伏せ。スクワット。

どれもエマは淡々と、ほとんど汗さえかかずにこなしていく。

対してレティシアは、途中から声にならない呻き声しか出ていなかった。


「では最後にランニング十キロです」

「最後じゃなくて死の宣告だわ……」


二人は村外れの河川沿いを走り始めた。

序盤こそレティシアは根性でついていくが、五キロ半ばで膝ががくんと折れ、地面にへたり込んでしまう。


「エマぁ……もう無理ぃ……」

「あと半分です。十分休憩してから再開します」

「十分で回復すると思ってるの!? 私、今なら寝たら一生起きないかもしれない……」


そんな弱々しい言葉を吐いていた、その時だった。


「あら、まぁ。こんなところでお会いするなんて」


ふわりと金色の髪が揺れ、整った笑みを浮かべて現れたのは―――アリーゼ=ディ=ボルドール。相変わらず気品が滲み出ている。

しかし今日は珍しく、スポーティな軽装だった。


「……」

レティシアは呼吸も視界も霞んで声が出ない。

仕方なくエマが応対する。


「体力づくりのためにランニングをしておりました」

「あら、それは素敵ですわね。実はわたくしも今走ってきたところなの」

「アリーゼ様も、ですか。今日はベラ様はご一緒ではなく?」

「わたくしが勝手に屋敷を抜け出しているだけよ? ベラには内緒内緒」

「左様でしたか」

「ところで、私は今からあちらへ行くのですが、あなた達はどちらへ?」


「私達も……そちらへ―――」


そこへ、死体のようだったレティシアが突然むくりと顔を上げた。

「私達もそっちに行くわ!?」


明らかに無理を押し通す声。

アリーゼはくすっと笑って、


「それなら一緒に走りましょうか」

「え……走るの……?」

「えぇ、もちろん。あと五キロほどね」


 レティシアの魂が抜けかけた。


「……五キロ……あと五キロ…………」

「レティシア様、参りますよ」

「は、はいぃ……」


こうして地獄の後半戦が始まった。


アリーゼは思いのほか速度が速く、エマと並走して会話まで楽しんでいる。

対照的にレティシアはふらふらで、後ろから見ていると倒れそうで危ない。


「お二人とも、どうしてそんな……余裕そうなの……?」

「日頃から鍛えておりますから」

「しっかりと運動してますもの」

「人間じゃない……」


涙目で呟いた直後、ついにレティシアはゴール地点で崩れ落ちた。


「し、死ぬ……ほんとに死ぬわ……今日はもう喋れない……」

「レティシア様、立派に走り切られましたね」

「あなたにとっては散歩よね……!?」


アリーゼも優雅に息を整えながら、


「でも楽しかったわ。またご一緒しましょう?」

「え…………?」


そのひと言が、レティシアの精神に確実に深いダメージを与えた。

なお、その光景を見ていたエマは静かにこう思っていた。


意外と余裕かもな……

久しぶりに書かせていただきました。

文体などが少し変わっていて違和感を覚える方もいるかも知れませんが、どうかご了承ください。

現在1話目から見直して再学習(?)している時期ですので執筆に少し時間がかかりますがよろしくお願いします。

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