表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢だって悪くない  作者: めめんちょもり
この不条理を変えてみせる
42/54

体力測定

王立学園受験まで、あと五ヶ月。

勉強面だけでなく、体力面も引き上げなければならない。

そう判断したエマは、屋敷の訓練場の一角にレティシアを連れてきた。


突然並べられた器具。

引きばかり式の握力測定器、押しばかり式の体重計、そして測定用の時計。


「……なによこれ。まさか体力測定?」


レティシアは目を丸くする。

エマは頷き、手帳を開いた。


「現状を把握しなければ、課題は見えません」


そう言うと観念したレティシアは制服のジャケットを脱ぎ、訓練用の服に着替える。



体重計は床に据えられた鉄製の古式装置。

エマがメモリを読み取りながら淡々と告げる。


「身長……163センチ。体重……54キロ」


何とも女性らしい数値ではある。

だがエマは一切褒めない。


次は握力。

取っ手付きの引きばかりを握り、力いっぱい引く。


ガチィィィ


目盛りが動き、エマが読み上げる。


「右……33。左……31」

「剣やってるからね……意外とあるでしょ」


レティシアは得意げだが、エマは無表情。


「では次。上体起こし」


合図と同時に、レティシアは勢いよく腹筋を始め――


「……18回。お疲れ様です」


続いて長座体前屈。

計測用台に座り、レティシアは胸を張って前屈する。


「61センチ」


思ったより柔らかい。

エマは少しだけ目を細めた。


「バレエやダンス経験があるのですか?」

「子どもの頃、貴族のたしなみで少しだけ……」


ここだけ高い訳ね……


反復横跳び。


「41回」

「50メートル走、準備お願いします」


ここでエマが腕時計をちらりと見る。

精密な目盛り。

この世界、数学が発展しているため、腕時計は0.1秒単位で計測可能だ。


魔法があるくせに……時計はやたら現代的よね……


エマが前方に手を上げる。


「位置について――」


レティシアが体勢をとる。


「……よーい、スタート」


レティシアが駆け出す。

風に髪が揺れ、スカートがひらりと舞う。


ゴール。


エマは時計を見て静かに告げる。


「7秒9」


女子なら十分速い……けど受験で戦う相手は訓練してる令嬢ばかり


エマはそう判断し、次へ。


「では……ハンドボール投げ」


この世界では訓練兵科にも使われる標準測定だ。

レティシアは助走をつけ、全力で投げた。


「いけぇぇぇぇぇ!!」


ボールは美しい放物線を描いて飛ぶ。


ドスッ


「18.3メートル」


エマが淡々と記録する。

最後に1000メートル走。


レティシアは既に汗だく。

しかしエマは容赦ない。


「……では1000メートル」


再びストップウォッチが構えられた。

レティシアは深呼吸し、走り出す。


「はぁ……はぁ……!」


途中、太腿が重くなり、肺が焼ける。

脚はもつれかけ、息が上がる。


やっば……体力無さすぎ……っ!


ゴール。

レティシアは地面に手をつき、肩を上下させながらエマの声を待つ。


「6分4秒」


終わった。

レティシアの表情が「ご臨終」のそれだった。


だがエマは手帳を閉じ、淡々と評価を始める。


「――全体的に、持久力・瞬発力が不足しています」


わかってはいた。

しかし実際に言われるとグサッと来る。


「改善目標を設定します」


エマが手帳をめくり、次々と数値を読み上げた。


「握力 右40 左37

長座 65センチ

上体起こし 30回

反復横跳び 55回

50メートル走 7秒4

ハンドボール投げ 25メートル

1000メートル走 4分30秒」


レティシアは聞いた瞬間、叫んだ。


「私ムッキムキになっちゃうよ!?

ていうか!!

これ五ヶ月で届くの!?」


エマは無表情。


「なんとかなります」

「返答になってないぃぃぃ!!」


エマはまるで学術研究を発表するように言った。


「レティシア様が達成できるようにするため、私考えてまいりました」


レティシアは寒気が走るのを感じた。


「な、なにをよ……」


エマは静かに宣告した。


「――毎日ランニング10キロ

腹筋・腕立て・スクワット50回ずつ」


レティシアは絶叫した。


「死んじゃうわよ!?」

「適度に休憩を入れます」

「そういう問題じゃないのよ!!

それより!!

私にやれやれ言うけど!!

エマの体力はどうなの!?」


エマは瞳を細める。


「……では」


淡々と髪を結び、上着を脱ぎ――


レティシアの前に立った。


「今から私が測ります」

「えっ――」


こうして、次はエマ自身の測定へ。


だがその結果は次回へ持ち越しとなる――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ