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異世界転移したら能力コピー持ちになったけど発動条件がキスな件

作者: 桜木ひより
掲載日:2025/10/15

俺の名前は神崎レン。17歳の高校2年生。


特技はない。趣味もない。彼女もいない。

というか、女子と目を合わせるだけで緊張する。

そんな陰キャでコミュ障でお先真っ暗な俺だ。


朝、いつものように下を向きながら学校に向かう途中だった。

通学路を歩いてたら、なぜか突然足元が光った。


「え?」


そして次の瞬間、視界が真っ白になった。


気がつくと、見知らぬ場所に立っていた。


石造りの広場。

周りには西洋風の建物。

空は青く晴れて綺麗だが、今まで見ていたような空ではなく…。

空に人や物が浮かんで走っている。


「ここ...どこ?空に何か浮かんでるし…。」


周りをきょろきょろしながら混乱してる俺に、声がかかった。


「そこのお前。まさか転移者か?」


その声に振り返ると、銀髪でコスプレのような変わった服を着た美少女が立っていた。


「え、あ、その...」


俺は慌てて目を逸らした。

こんな美少女に声を掛けられてしかも顔を見るなんて無理だ…。

なんて話せばいいかわからないし、そんなことを考えていたら心臓が爆発しそうだった。


「私は氷室シズク。この学園の生徒会長だ」


「が、学園...?」


「ここはアルカディア魔法学園。異能力者を育成する教育機関だ」


魔法?異能力者を育成…?


「やはり君は転移者のようだな。稀な存在だが、前例は何件かある」


シズク…さんが俺をすごく見つめてくる。

やばい。視線が痛い。怖い…


「と、とりあえず...俺、魔法とかわかんないし、家に帰りたいんですけど...」


「それは無理だ」

即答された。


「異世界転移は一方通行。何をしても元の世界には戻れない」


「え...う、嘘だろ…?もう、家や元居た世界には二度と帰れない、のか…?」


「そうだ。だが、心配するな。君もこの学園で生活することができる。

転移者は必ず何らかの異能力を持っている。一度測定してみよう」


「よく漫画やアニメで出てくる能力者ってことか…

俺にも何か空中浮遊とか、手から火を出せるとか、かっこいい能力があればいいなあ…」


そんなことを考えながら俺はシズクに連れられて、学園の測定室に入った。

そこで、俺の能力が判明した。


「模倣、ミラーのような能力だな」

測定担当の先生が結果を読み上げた。


「他者の能力をコピーする能力だ。これは珍しいな」


「コピー...?」


「ああ。ただし、この能力には条件がある」

先生が資料を見て、少し黙った。


「...発動条件は、能力をコピーしたい相手との…キスだ」


「は?」


「キスをすることで24時間の間、相手の能力を使用できる」


急に判明した訳の分からない能力で俺の頭が真っ白になった。


キス?

キスって、あの顔をめっちゃ近づけて唇と唇を重ねる…キス?


「そんな恥ずかしいこと、俺には…む、無理ですよ!」

俺は叫んだ。


「俺、そんな...女の子とキスなんて...!」


「落ち着け」

シズクが冷静に言った。


「もちろん能力は使わなくても生活できる。これは強制ではない」


「そ、そうですよね..よ、よかった」


でも、その安心は長く続かなかった。



何だかんだで学園での生活が始まって3日目。


俺はなんとか授業についていけていた。

異能力の理論とか、魔物の生態とか、全然まだまだ分からないけど。


その日の放課後、校門を出たところで悲鳴が聞こえた。


「きゃあ!」

女子の声だ。


俺は走った。


校門の外、森の入り口に、巨大な狼のような魔物がいた。

そこに、赤髪の女子生徒が倒れている。


「やばい...」


でも、俺には何もできない。

能力もない。戦う力もない。


その時、女子生徒が俺を見た。


「そこの男!あんたの能力は!?どうにかしなさいよ!」


「え、あの...」


「早く言いなさい!」


なんか気の強そうな子だ…。


「模倣...です。でも、条件が...」


「条件?何よ!」


「その…その対象との、キ...キスです...」


女子生徒が目を見開いてドン引きしていた。


「は?キス?」


「その...相手とキスすると、能力をコピーできるんです...」


そんなことを話している間にも魔物は近づいてきている。


女子生徒が舌打ちした。

「最悪...でも、仕方ないわね」


「え?」


「私の能力、貸してあげる。炎の操作よ」


「あ、ありがとうございます...」


「ただし!」

女子生徒が顔を赤くして話した。


「これは緊急事態だから!べ、別にアンタのことなんて...どうでもいいんだからね!?」


すごくわかりやすいツンデレだ。


「と、とにかく早く!」

女子生徒が俺に近づいてきた。


「ちょ、ちょっと待っ...」


「うるさい!」

女子生徒が俺の襟を掴んで、強引に唇を重ねた。


「んっ...!」


俺のファーストキス。

何も考えれずに頭が真っ白になった。


しかし、体の中に熱いエネルギーが流れ込んできたのを感じた。

これが、コピーした能力...?


「ほら、早く戦いなさいよ!」


女子生徒が俺を突き飛ばした。


俺は慌てて魔物の方を向いた。

魔物に向かって手を伸ばすと、炎が現れた。


「い、いっけーー!」


炎を魔物に向けて放つ。

見事に命中し、魔物が燃え上がって塵のように消滅した。


「や、やった...」

俺は気が抜け、その場で膝から崩れ落ちた。


「ふん、まあまあね」

女子生徒が立ち上がった。


「私は紅蓮院アヤ。覚えておきなさい」


「あ、はい...神崎レンです...」


アヤが顔を赤くした。


「さっきのキスは...緊急事態だったからよ!勘違いしないでよね!」


「は、はい...」


「じゃあね!」


アヤが走って行った。


俺は一人、ぽかんとしてた。

俺のファーストキスが...こんな形で...。




翌日、生徒会室に呼び出された。


「神崎レン、入れ」

シズクの声。


緊張しながらドアを開けた。


「あ、あの...」


「座れ」


シズクが書類を見ながら言った。

「君の能力についてだが、学園側も注目している」


「そ、そうなんですか...」

ぜひ

「模倣は戦略的にとても有用だ。ぜひ協力してほしい」


「協力...?」


「明日、学園の演習がある。まずは私とペアを組んでほしい」


「ペア...」


「私の能力を使えば、演習は楽に終わる」


シズクが俺を見た。


「つまり、キスが必要だ」


「え...!?あ、あの...その...キスですか…!?」


「嫌か?」


「い、いえ!嫌じゃないです!でも、その...恥ずかしいというか...」


シズクが立ち上がった。

そして、俺の前に立った。


「時間がない。もう今済ませてしまおう」


「え、今...!?」


「何か問題でもあるか?」


「あ、あります!こ、心の準備が...」


「そんなもの要らない。無駄だ」


シズクが強引に俺の顎を持ち上げた。


「ちょ、ちょっと...」


「動くな」


シズクの唇が、俺の唇に触れた。


冷たい。

でも、柔らかい。


また俺は頭の中が真っ白になってしまった。


そして、冷たいエネルギーが体に流れ込む。

氷の力だ。


「...以上だ」

シズクが離れた。

無表情のまま。


「あ...あの...」


「明日、よろしく頼む」

シズクが席に戻った。


俺は顔が真っ赤なまま、生徒会室を後にした。


少し離れた廊下でまずは深呼吸した。


「やばい...やばい...」


また女の子とキスした。


しかも、あの美少女生徒会長と。


俺の心臓、もう限界かも…。




演習の翌日。


俺は保健室にいた。

演習で少し怪我をしたからだ。


「あら、神崎くん」


優しい声がした。

振り返ると、金髪の女子生徒が立っていた。


「私、保健委員の白鳥ユナです」


「あ、よろしく...」


ユナが笑顔で近づいてきた。


「その怪我、見せてください」


「あ、大したことないです...」


「ダメですよ。ちゃんと治療しないと」


ユナが俺の腕を取った。

軽い擦り傷がある。


「これ、治癒魔法で治せますよ」


「え、そうなんですか?」


「はい。でも...」


ユナが少し困った顔をした。


「私の能力、発動に条件があるんです」


「条件...?」


まさか。嫌な予感が…


「相手とのキス、なんです」


やっぱりだ。


「あ、あの...」


「神崎くんの能力も、キスが条件なんですよね?」


「は、はい...」


「じゃあ、もう慣れてますね♪」


「慣れてない!全然慣れてないです!」


「大丈夫ですよ。すぐ終わりますから」


ユナが笑顔で顔を近づけてきた。


「ちょ、ちょっと...心の準備が!」


「はい、目を閉じて♪」



俺は押しに負け、目を閉じた。


ユナの唇が、優しく触れた。

温かい。

そして、体に温かいエネルギーが流れる。


これが治癒の力…

腕の傷と痛みが消えていく。


「...はい、これで終わりです」

ユナが離れた。


「治りましたね♪」


「あ、ありがとうございます...」

顔が熱い。


「神崎くん、可愛いですね」


「え...」


「顔、真っ赤ですよ」

ユナがくすくす笑った。


その時、保健室のドアが開いた。


「レン、いる...」


あの時魔物から助けてあげた女子生徒、アヤが入ってきた。

そして、俺とユナを見て固まった。


「...何してるの?」


「あ、アヤさん...」


「これは治療ですよ」

ユナが笑顔で答えた。


「治療で、なんでそんなに顔が赤いのよ」


「それは...」


その時、またドアが開いた。

シズクが入ってきた。


「神崎レン、演習の報告書を...」


シズクも俺たちを見て止まった。


「...何をしている」


「氷室先輩...」


三人の視線が俺に集中した。

やばい。


「ちょっと、レン」

アヤが近づいてきた。


「アンタ、誰とキスしたの?」


「え、あ、その...」


「私とキスしたのは、緊急事態だったからよ!」


「それは、俺もですけど...」


「私とのキスは、任務のためだ」

シズクも俺の前に立って牽制するように近づいてきた。


「私とは治療のためです♪」

ユナも笑顔のまま。


三人に囲まれた。


「あ、あの...」


「で、誰が一番だったのよ!」

アヤが詰め寄る。


「一番...?」


「キス!キスのことよ!」


「そんなこと聞かれても...」


「答えなさい!」


「私は気にしないが」

シズクが無表情で言った。


「でも、知りたい」


「私も知りたいです♪」

ユナが笑顔で。


これって修羅場ってやつか…?俺は完全に詰んだ。


「あ、あの...みんな...」


「「「答えて」」」


三人のハモり。


「う...」


その時、俺の頭に名案が浮かんだ。

「み、みんな素敵でした!」


「は?」

三人が同時に言った。


「だから、その...みんなとのキス、全部...良かったです...」


なんでこんなこと言ったんだ俺は…でもこの場を収めるにはこれしか…

恥ずかしすぎて顔から火が出そうだ。


アヤが真っ赤になった。

「な、何言ってるのよ...」


シズクも少し頬を染めた。

「...そうか」


ユナが嬉しそうに笑った。

「良かった♪」


「じゃ、じゃあ...」


アヤが腕を組んだ。

「これからも、私の能力使いなさいよね」


「私もだ」

シズクが頷いた。


「私も、また治療しますね♪」

ユナが微笑んだ。


俺は三人を見て、思った。


これって...もしかしてハーレム...?

いや、でも俺...


「レン、明日も演習あるから」


「私も明後日、依頼がある」


「私は毎日会えますよ♪」

三人が笑顔で言った。


俺の心臓はもう限界を迎えていた。




それから一週間。


俺の生活は、完全に変わってしまった。


毎日、誰かしらとキスしてる。


アヤとは戦闘訓練。

シズクとは生徒会の任務。

ユナとは保健室で治療の練習。


「レン、今日も来たわよ」

アヤが訓練場で待ってる。


「あ、うん...」


「ほら、早くキスしなさい!もう時間ないんだから!」

顔を赤くしながら、強がるアヤ。


「う、うん...」


俺がキスすると、アヤも赤くなる。

「べ、別に嬉しくないんだからね...」


嘘だ。絶対嬉しそう。


生徒会室では、シズクが待ってる。


「神崎レン、今日の任務を説明する」


「はい...」


「その前に」


シズクが立ち上がった。


「能力の共有を」


「あ、はい...」


シズクとキスする。

相変わらず無表情だけど、最近少し頬が赤い気がする。


「...では、任務に向かう」


「は、はい...」


保健室では、ユナが笑顔で待ってる。


「神崎くん、今日も来てくれたんですね♪」


「あ、うん...」


「じゃあ、いつものしましょうか」

ユナが顔を近づけてくる。


「う、うん...」


ユナとキスする。


「ふふ、神崎くん、慣れてきましたね」


「そ、そうかな...」


全然慣れてない。

毎回心臓が爆発しそうだ。




そんな日々を送ってたら、ある日。

三人が同時に俺の教室に来た。


「レン」


「神崎レン」


「神崎くん♪」


急に俺の教室に3人が俺を呼び出しに来た。

その光景を見ているクラスメイトが騒ぎ出してしまった。


「神崎、お前...」


「ハーレムかよ...」


「違う!誤解だ!これは能力のせいで...!」


「放課後、屋上に来なさい」

アヤが言った。


「話がある」


「私もだ」

シズク。


「私も♪」

ユナ。


やばい。これは修羅場の予感。


放課後、屋上に行くと、三人が待ってた。


「レン」

アヤが腕を組んだ。


「アンタ、誰が一番好きなの?」


「え...」


「私か?」


「私か?」

シズクも。


「私ですか?」

ユナも笑顔で。


「あ、あの...」

俺は返事に困ってしまった。


正直なところ…3人とも好きだ。

俺には選べない。


「その...みんな...」


「みんな?」

三人が同時に言った。


「う、うん...みんな大切で...」


アヤが顔を赤くした。

「な、何言ってるのよ...」


シズクも少し頬を染めた。

「...そうか」


ユナが嬉しそうに笑った。

「じゃあ、これからもみんなで一緒に過ごしましょう♪」


「え?」


「私も...まあ、仕方ないわね」

アヤがそっぽを向いた。


「私は構わない」

シズクが頷いた。


「じゃあ、決まりですね♪」

ユナが俺の手を取った。


「これからも、よろしくね、神崎くん」


「あ、うん...」

アヤも手を取った。


「べ、別に...仕方なくよ」

シズクも手を取った。


「...よろしく」

三人に囲まれた。


俺は思った。


異世界に来て、能力がキスとか、最初は最悪だと思った。

でも、今は...美少女3人に囲まれて、毎日能力のためとはいえキスをして…

こんな生活、元の世界では絶対に味わえなかっただろう。


「こんな生活も悪くないな…」

俺は小声でつぶやいた。


俺の異世界ハーレム生活は、まだ始まったばかりだ。


【完】

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