異世界転移したら能力コピー持ちになったけど発動条件がキスな件
俺の名前は神崎レン。17歳の高校2年生。
特技はない。趣味もない。彼女もいない。
というか、女子と目を合わせるだけで緊張する。
そんな陰キャでコミュ障でお先真っ暗な俺だ。
朝、いつものように下を向きながら学校に向かう途中だった。
通学路を歩いてたら、なぜか突然足元が光った。
「え?」
そして次の瞬間、視界が真っ白になった。
気がつくと、見知らぬ場所に立っていた。
石造りの広場。
周りには西洋風の建物。
空は青く晴れて綺麗だが、今まで見ていたような空ではなく…。
空に人や物が浮かんで走っている。
「ここ...どこ?空に何か浮かんでるし…。」
周りをきょろきょろしながら混乱してる俺に、声がかかった。
「そこのお前。まさか転移者か?」
その声に振り返ると、銀髪でコスプレのような変わった服を着た美少女が立っていた。
「え、あ、その...」
俺は慌てて目を逸らした。
こんな美少女に声を掛けられてしかも顔を見るなんて無理だ…。
なんて話せばいいかわからないし、そんなことを考えていたら心臓が爆発しそうだった。
「私は氷室シズク。この学園の生徒会長だ」
「が、学園...?」
「ここはアルカディア魔法学園。異能力者を育成する教育機関だ」
魔法?異能力者を育成…?
「やはり君は転移者のようだな。稀な存在だが、前例は何件かある」
シズク…さんが俺をすごく見つめてくる。
やばい。視線が痛い。怖い…
「と、とりあえず...俺、魔法とかわかんないし、家に帰りたいんですけど...」
「それは無理だ」
即答された。
「異世界転移は一方通行。何をしても元の世界には戻れない」
「え...う、嘘だろ…?もう、家や元居た世界には二度と帰れない、のか…?」
「そうだ。だが、心配するな。君もこの学園で生活することができる。
転移者は必ず何らかの異能力を持っている。一度測定してみよう」
「よく漫画やアニメで出てくる能力者ってことか…
俺にも何か空中浮遊とか、手から火を出せるとか、かっこいい能力があればいいなあ…」
そんなことを考えながら俺はシズクに連れられて、学園の測定室に入った。
そこで、俺の能力が判明した。
「模倣、ミラーのような能力だな」
測定担当の先生が結果を読み上げた。
「他者の能力をコピーする能力だ。これは珍しいな」
「コピー...?」
「ああ。ただし、この能力には条件がある」
先生が資料を見て、少し黙った。
「...発動条件は、能力をコピーしたい相手との…キスだ」
「は?」
「キスをすることで24時間の間、相手の能力を使用できる」
急に判明した訳の分からない能力で俺の頭が真っ白になった。
キス?
キスって、あの顔をめっちゃ近づけて唇と唇を重ねる…キス?
「そんな恥ずかしいこと、俺には…む、無理ですよ!」
俺は叫んだ。
「俺、そんな...女の子とキスなんて...!」
「落ち着け」
シズクが冷静に言った。
「もちろん能力は使わなくても生活できる。これは強制ではない」
「そ、そうですよね..よ、よかった」
でも、その安心は長く続かなかった。
何だかんだで学園での生活が始まって3日目。
俺はなんとか授業についていけていた。
異能力の理論とか、魔物の生態とか、全然まだまだ分からないけど。
その日の放課後、校門を出たところで悲鳴が聞こえた。
「きゃあ!」
女子の声だ。
俺は走った。
校門の外、森の入り口に、巨大な狼のような魔物がいた。
そこに、赤髪の女子生徒が倒れている。
「やばい...」
でも、俺には何もできない。
能力もない。戦う力もない。
その時、女子生徒が俺を見た。
「そこの男!あんたの能力は!?どうにかしなさいよ!」
「え、あの...」
「早く言いなさい!」
なんか気の強そうな子だ…。
「模倣...です。でも、条件が...」
「条件?何よ!」
「その…その対象との、キ...キスです...」
女子生徒が目を見開いてドン引きしていた。
「は?キス?」
「その...相手とキスすると、能力をコピーできるんです...」
そんなことを話している間にも魔物は近づいてきている。
女子生徒が舌打ちした。
「最悪...でも、仕方ないわね」
「え?」
「私の能力、貸してあげる。炎の操作よ」
「あ、ありがとうございます...」
「ただし!」
女子生徒が顔を赤くして話した。
「これは緊急事態だから!べ、別にアンタのことなんて...どうでもいいんだからね!?」
すごくわかりやすいツンデレだ。
「と、とにかく早く!」
女子生徒が俺に近づいてきた。
「ちょ、ちょっと待っ...」
「うるさい!」
女子生徒が俺の襟を掴んで、強引に唇を重ねた。
「んっ...!」
俺のファーストキス。
何も考えれずに頭が真っ白になった。
しかし、体の中に熱いエネルギーが流れ込んできたのを感じた。
これが、コピーした能力...?
「ほら、早く戦いなさいよ!」
女子生徒が俺を突き飛ばした。
俺は慌てて魔物の方を向いた。
魔物に向かって手を伸ばすと、炎が現れた。
「い、いっけーー!」
炎を魔物に向けて放つ。
見事に命中し、魔物が燃え上がって塵のように消滅した。
「や、やった...」
俺は気が抜け、その場で膝から崩れ落ちた。
「ふん、まあまあね」
女子生徒が立ち上がった。
「私は紅蓮院アヤ。覚えておきなさい」
「あ、はい...神崎レンです...」
アヤが顔を赤くした。
「さっきのキスは...緊急事態だったからよ!勘違いしないでよね!」
「は、はい...」
「じゃあね!」
アヤが走って行った。
俺は一人、ぽかんとしてた。
俺のファーストキスが...こんな形で...。
翌日、生徒会室に呼び出された。
「神崎レン、入れ」
シズクの声。
緊張しながらドアを開けた。
「あ、あの...」
「座れ」
シズクが書類を見ながら言った。
「君の能力についてだが、学園側も注目している」
「そ、そうなんですか...」
ぜひ
「模倣は戦略的にとても有用だ。ぜひ協力してほしい」
「協力...?」
「明日、学園の演習がある。まずは私とペアを組んでほしい」
「ペア...」
「私の能力を使えば、演習は楽に終わる」
シズクが俺を見た。
「つまり、キスが必要だ」
「え...!?あ、あの...その...キスですか…!?」
「嫌か?」
「い、いえ!嫌じゃないです!でも、その...恥ずかしいというか...」
シズクが立ち上がった。
そして、俺の前に立った。
「時間がない。もう今済ませてしまおう」
「え、今...!?」
「何か問題でもあるか?」
「あ、あります!こ、心の準備が...」
「そんなもの要らない。無駄だ」
シズクが強引に俺の顎を持ち上げた。
「ちょ、ちょっと...」
「動くな」
シズクの唇が、俺の唇に触れた。
冷たい。
でも、柔らかい。
また俺は頭の中が真っ白になってしまった。
そして、冷たいエネルギーが体に流れ込む。
氷の力だ。
「...以上だ」
シズクが離れた。
無表情のまま。
「あ...あの...」
「明日、よろしく頼む」
シズクが席に戻った。
俺は顔が真っ赤なまま、生徒会室を後にした。
少し離れた廊下でまずは深呼吸した。
「やばい...やばい...」
また女の子とキスした。
しかも、あの美少女生徒会長と。
俺の心臓、もう限界かも…。
演習の翌日。
俺は保健室にいた。
演習で少し怪我をしたからだ。
「あら、神崎くん」
優しい声がした。
振り返ると、金髪の女子生徒が立っていた。
「私、保健委員の白鳥ユナです」
「あ、よろしく...」
ユナが笑顔で近づいてきた。
「その怪我、見せてください」
「あ、大したことないです...」
「ダメですよ。ちゃんと治療しないと」
ユナが俺の腕を取った。
軽い擦り傷がある。
「これ、治癒魔法で治せますよ」
「え、そうなんですか?」
「はい。でも...」
ユナが少し困った顔をした。
「私の能力、発動に条件があるんです」
「条件...?」
まさか。嫌な予感が…
「相手とのキス、なんです」
やっぱりだ。
「あ、あの...」
「神崎くんの能力も、キスが条件なんですよね?」
「は、はい...」
「じゃあ、もう慣れてますね♪」
「慣れてない!全然慣れてないです!」
「大丈夫ですよ。すぐ終わりますから」
ユナが笑顔で顔を近づけてきた。
「ちょ、ちょっと...心の準備が!」
「はい、目を閉じて♪」
俺は押しに負け、目を閉じた。
ユナの唇が、優しく触れた。
温かい。
そして、体に温かいエネルギーが流れる。
これが治癒の力…
腕の傷と痛みが消えていく。
「...はい、これで終わりです」
ユナが離れた。
「治りましたね♪」
「あ、ありがとうございます...」
顔が熱い。
「神崎くん、可愛いですね」
「え...」
「顔、真っ赤ですよ」
ユナがくすくす笑った。
その時、保健室のドアが開いた。
「レン、いる...」
あの時魔物から助けてあげた女子生徒、アヤが入ってきた。
そして、俺とユナを見て固まった。
「...何してるの?」
「あ、アヤさん...」
「これは治療ですよ」
ユナが笑顔で答えた。
「治療で、なんでそんなに顔が赤いのよ」
「それは...」
その時、またドアが開いた。
シズクが入ってきた。
「神崎レン、演習の報告書を...」
シズクも俺たちを見て止まった。
「...何をしている」
「氷室先輩...」
三人の視線が俺に集中した。
やばい。
「ちょっと、レン」
アヤが近づいてきた。
「アンタ、誰とキスしたの?」
「え、あ、その...」
「私とキスしたのは、緊急事態だったからよ!」
「それは、俺もですけど...」
「私とのキスは、任務のためだ」
シズクも俺の前に立って牽制するように近づいてきた。
「私とは治療のためです♪」
ユナも笑顔のまま。
三人に囲まれた。
「あ、あの...」
「で、誰が一番だったのよ!」
アヤが詰め寄る。
「一番...?」
「キス!キスのことよ!」
「そんなこと聞かれても...」
「答えなさい!」
「私は気にしないが」
シズクが無表情で言った。
「でも、知りたい」
「私も知りたいです♪」
ユナが笑顔で。
これって修羅場ってやつか…?俺は完全に詰んだ。
「あ、あの...みんな...」
「「「答えて」」」
三人のハモり。
「う...」
その時、俺の頭に名案が浮かんだ。
「み、みんな素敵でした!」
「は?」
三人が同時に言った。
「だから、その...みんなとのキス、全部...良かったです...」
なんでこんなこと言ったんだ俺は…でもこの場を収めるにはこれしか…
恥ずかしすぎて顔から火が出そうだ。
アヤが真っ赤になった。
「な、何言ってるのよ...」
シズクも少し頬を染めた。
「...そうか」
ユナが嬉しそうに笑った。
「良かった♪」
「じゃ、じゃあ...」
アヤが腕を組んだ。
「これからも、私の能力使いなさいよね」
「私もだ」
シズクが頷いた。
「私も、また治療しますね♪」
ユナが微笑んだ。
俺は三人を見て、思った。
これって...もしかしてハーレム...?
いや、でも俺...
「レン、明日も演習あるから」
「私も明後日、依頼がある」
「私は毎日会えますよ♪」
三人が笑顔で言った。
俺の心臓はもう限界を迎えていた。
それから一週間。
俺の生活は、完全に変わってしまった。
毎日、誰かしらとキスしてる。
アヤとは戦闘訓練。
シズクとは生徒会の任務。
ユナとは保健室で治療の練習。
「レン、今日も来たわよ」
アヤが訓練場で待ってる。
「あ、うん...」
「ほら、早くキスしなさい!もう時間ないんだから!」
顔を赤くしながら、強がるアヤ。
「う、うん...」
俺がキスすると、アヤも赤くなる。
「べ、別に嬉しくないんだからね...」
嘘だ。絶対嬉しそう。
生徒会室では、シズクが待ってる。
「神崎レン、今日の任務を説明する」
「はい...」
「その前に」
シズクが立ち上がった。
「能力の共有を」
「あ、はい...」
シズクとキスする。
相変わらず無表情だけど、最近少し頬が赤い気がする。
「...では、任務に向かう」
「は、はい...」
保健室では、ユナが笑顔で待ってる。
「神崎くん、今日も来てくれたんですね♪」
「あ、うん...」
「じゃあ、いつものしましょうか」
ユナが顔を近づけてくる。
「う、うん...」
ユナとキスする。
「ふふ、神崎くん、慣れてきましたね」
「そ、そうかな...」
全然慣れてない。
毎回心臓が爆発しそうだ。
そんな日々を送ってたら、ある日。
三人が同時に俺の教室に来た。
「レン」
「神崎レン」
「神崎くん♪」
急に俺の教室に3人が俺を呼び出しに来た。
その光景を見ているクラスメイトが騒ぎ出してしまった。
「神崎、お前...」
「ハーレムかよ...」
「違う!誤解だ!これは能力のせいで...!」
「放課後、屋上に来なさい」
アヤが言った。
「話がある」
「私もだ」
シズク。
「私も♪」
ユナ。
やばい。これは修羅場の予感。
放課後、屋上に行くと、三人が待ってた。
「レン」
アヤが腕を組んだ。
「アンタ、誰が一番好きなの?」
「え...」
「私か?」
「私か?」
シズクも。
「私ですか?」
ユナも笑顔で。
「あ、あの...」
俺は返事に困ってしまった。
正直なところ…3人とも好きだ。
俺には選べない。
「その...みんな...」
「みんな?」
三人が同時に言った。
「う、うん...みんな大切で...」
アヤが顔を赤くした。
「な、何言ってるのよ...」
シズクも少し頬を染めた。
「...そうか」
ユナが嬉しそうに笑った。
「じゃあ、これからもみんなで一緒に過ごしましょう♪」
「え?」
「私も...まあ、仕方ないわね」
アヤがそっぽを向いた。
「私は構わない」
シズクが頷いた。
「じゃあ、決まりですね♪」
ユナが俺の手を取った。
「これからも、よろしくね、神崎くん」
「あ、うん...」
アヤも手を取った。
「べ、別に...仕方なくよ」
シズクも手を取った。
「...よろしく」
三人に囲まれた。
俺は思った。
異世界に来て、能力がキスとか、最初は最悪だと思った。
でも、今は...美少女3人に囲まれて、毎日能力のためとはいえキスをして…
こんな生活、元の世界では絶対に味わえなかっただろう。
「こんな生活も悪くないな…」
俺は小声でつぶやいた。
俺の異世界ハーレム生活は、まだ始まったばかりだ。
【完】




