【第一章】~未来異世界転移編~ ⑤玉の輿
「大きな違い?」
『そう、みやび君のいる社会と、たぶんここが一番大きな違いじゃないかしら。
私も知識としてあるだけなんだけど、みやび君のところは(いわゆるお金)を使う、貨幣経済なんでしょ?
あ、(いわゆるお金)って石で出来た丸いやつね。』
なんだか旧石器時代の貨幣と何かと、盛大に勘違いしていらっしゃる様子だが、ここは触れないでおこう。
「そうですよ。貨幣経済。ほしいものがあったらお金を支払って手に入れる感じの」
『それが、この世界には無いよの』
お金がない世界?どうやってものを手に入れるの?
この発達した社会で、まさかの物々交換?
「お金がないっていうことですか?」
『そう、「いわゆるお金」はないわね。っていうのも、この社会は、みやび君は道具を使えるようになったからわかると思うんだけど必要に応じて、いろんな物が自動的に送られてくるのよ。
それと同様に欲しいものがあったら、国から自動的に送られてくるの。』
「自動的に送られてくるって、欲しいものは、何でも送られてくるんですか?」
『そうね。何でも自動的に送られてくるわよ。』
たしかに欲しいものが自動的に手に入るなら、その対価であるお金は不要になる。普通に考えてみたら納得はできる。
そして貨幣が必要ないなら、貨幣を得るための労働が不要となる。
ということは、全国民ニートでスローライフ万歳という衝撃的展開!?
いやでも、音楽とかゲームを作っている人は多いって言っていたような気が。。。
「え?そうなんですか?そうだとすると、ここでは働いている人はいないんですか?」
『いや普通にみんな、それぞれ出来る分野で働いているわよ?』
全国民ニートでスローライフという理想的な状況は、すぐに打ち砕かれた・・・
『みやび君の世界では、働いて、その対価として「いわゆるお金」を手に入れて、手に入れた「いわゆるお金」を使って色々なものを手に入れると思うんだけど、ここでは、人からの賞賛や、感謝の大きさが価値観で一番大きなものになるのよ。
そのため、たとえば働いてそのことで感謝されたり、作った道具で人から賞賛されたりすることが一番大事なことになるの。』
まじで?
人からの賞賛や感謝が価値基準の一番大きなものになるなんて、なんか理想的な社会だ。そんな世界あるんだな。神様頑張った。
「めっちゃいい世界ですね。自分たちの世界でも当然、賞賛とか感謝っていうのは、仕事を行う上での大きなモチベーションになりますけど、それと同様にお金を得ないと生活ができないので常に天秤にかけている感じだし。
だいたいのケースで、お金に天秤は傾くんですけどね・・・」
『そうなのね。それって凄いストレスにならない?私なら無理だわ~。』
たしかに、現代地球はストレスが溜まりまくりな社会なのです・・・
「この世界では、どんな職業があるんですか?」
『色んな道具を作ったり、道具の機能を考えたり、さっき言った音楽家やゲーム作家もあるわよ。この辺は人気職業になってるわね。
というのも、例えば音楽やゲームが流行したら一気に人から賞賛や感謝を得られるから。』
あ~それで、音楽家であったりゲーム作家が人気あるのか~。
その話しをしていると、またリカさんが何故だか怒りだしてきた・・・
また、白い顔に青い血管が浮かんできている。
何かやったか?また、ストレートくるのか?
さっとタンコブをガードしつつ
『へ、へ~、音楽家とか人気あるのか~オイラもなんか音楽を作ってみようかな・・・』
少し話しをずらしてみる。
『そうね、みやび君は、もう音楽とかゲームとか、そっちの方面「くらい」しかないわね。』
すみません。旧石器時代なもので・・・
『そもそもこの国は、転生・転移で来た人間がもたらした魔法とか科学の力を元に発展してきた国なの。
そのため、転生・転移で来た人間は手厚く保護されるって言ったわよね。』
また、何か思い出し怒りをしだした・・・
『そのため、転生・転移してきたら、元々滅多にないけど事件・事故にあわないように真っ先にこういう「異世界小屋」に転送されるわけね』
あ、それで「異世界小屋」に転送されたみたいなことを言っていたのか。
『その「異世界小屋」に転送された人間は、何もわからないことが多いの』
その通りです。ただのモブキャラです。
『それで異世界から来た人をお世話する人間がいるんだけど、その世話人になりたい人間は多数いて倍率がもの凄いことになっているの。』
ん?そうなの?この世界について知らない人のお世話なんて、ただ、めんどくさいだけな感じがするけど・・・
『なんで多いかって言うと、まず、人から感謝とか賞賛されることが、この世界の絶対的価値判断になっているっていうのは話したわよね。
そして、異世界人は、この世界の無いものをもたらすことが多い。
つまり、この世界に異世界人が新たに、もたらしたもので賞賛とか感謝される確率は非常に高いの』
その絶対的価値観である賞賛とか感謝される人間の、お世話をしたいみたいな感じかな。。。
『例えばさっき言った定吉さんも、今では凄い賞賛とか感謝とかされて亡くなっているけど「ポイント」が凄い高いのよ。』
「ポイント?」
何やら聞きなれた言葉に思わず聞き返してしまった。
『そうポイント。この世界では人からの感謝とか賞賛が可視化されていて、それがポイントとして反映しているの。
たとえば、現在のみやび君のポイントは、「1001」ね。
このうち「1000」ってのは転生・転移される時に神様にあった人間が、神様に使命を与えられた時に与えられるポイントで、残り「1」は私ね。』
ポイント経済みたいなもんかな?使えないポイントだけど。。。
というか、あの神様からは何の使命?も受けていないんだが・・・
『みやび君も、ポイントって考えてたら、頭に浮かんでくるわよ。』
ポイントって考えてみるとたしかにオイラの名前と、その横に「1001」って浮かんでいる。
『このポイントについては、他の人のポイントも考えたら見れるからポイントの大小で、その人が敬われるっていう感じね。』
ためしにリカさんのポイントも見てみる。
リカさんの名前の横に「105123」という数字が書かれている。
お~10万越している。凄いな。。。。いや凄いかわからんけど。
『そうよ、10万を超える人ってなかなかいないわよ。
本当に大変だった・・・』
リカさんは何か遠い目をしている。
『なんで10万ポイントためたかって言うと、10万ポイントを超えないと、このお世話係に応募できないのよ。』
あ、それで・・・
『応募して当選したら、旧石器時代だった・・・』
目から血の涙をながしていらっしゃる・・・
なんかすんません・・・
「ま、まあ、10万ポイントあれば、凄いってことは、相当敬われているんでしょうし、良かったじゃないですか・・・」
リカさんは、オイラをキッとにらみつけ
『良くないわよ。異世界人が何か一つ新しいものを持ち込んで、それが広まれば、それだけで数千万、数億ポイントも夢じゃないんだから。』
異世界人って凄いんだな~。モブキャラなオイラは他人事に感じてしまう。
ん?でも、別に異世界人が凄いんであって、お世話する人には、そんなにメリットないのでは?
『メリットだらけなのよ。その感謝とか、賞賛の「ポイント」については、その人のパートナーや奥さん、旦那さんにも適用されるのよ。』
ほ~「ポイント」は、夫婦の共有財産みたいなもんか?
『それで、ぶっちゃけるけど異世界から来た人間とお世話した人は、結ばれる確率が高いのよ。定吉さんも、ルシファーさんも、キューポーさんもそう』
え?定吉さんやルシファーは、なんとなくわかるけど、キューポーも結婚できたの?この世界の人間は守備範囲広いな・・・
『だから、異世界人のお世話係に当選した時は、よっしゃ~玉の輿!って喜んだのよ。
それこそ家族でパーティーなんか開いちゃったりして・・・
それでなんで旧石器時代が来るのよ・・・』
あ~なるほど。だからキレていらっしゃったんですね。
本当に、こんな人間(旧石器時代のモブキャラ)が来てしまってすみません。
神様もオイラを何でこんな世界に転生させたのか。
あ、中世がどうこう言ったから、気を利かしたのかな?
『まあ、来てしまったものはしょうがないわ。悪い人ではなさそうだし。
それでは、外について案内するわね。』
リカさんは気を取り直したようで、ベットから立ち上がると扉をあけて二人で外に出た。
部屋の中は、ウッド調のログハウスっていう感じで、窓の外を見ると外には大きな木が生えていたため、この世界は自然豊かな環境っていう感じだと思っていた。
しかし外に出ると、足の下には何も無かった。
「うわ!落ちる!」
思わず言ってかがんでしまった。
が、落ちない・・・
頭の中が???となっていると
『あ~、ここから驚くのか~。さすが旧石器時代。
この世界は、1つ1つの家が空間に浮いていて、外はこんな感じになっているの。
全ての空間を歩くことができるよう、国が一人一人の重力を操作しているから、落ちることはないわよ。』
かがんでいるオイラを見て
『とりあえず足場が欲しかったら、こんな風にすることもできるわよ?』
ひゅん!と音がしたら、すごい小さな星のようになった。
地球でいうところの界〇星みたいな感じだ。
いや地球上には、無いけど・・・
まあ、この星は映像かなんかでしょうし、足は地にはついてないだろうけど、これぞまさに地に足がつく生活って感じで安心するわ~
意味違うけど。。。
少し落ち着いたので、家の方をそっと見てると、ウッドな家だったのに木はどこにも使われていなくて丸っぽい銀色の建物が建っている。さっき窓から見えていた木もない。
『「異世界小屋」は異世界人が来ても安心できるよう、その人間の一番落ち着く環境に自動的に変化するようになっているの。』
あ~、ログハウスみたいで確かに落ち着いたわ。
自動的に変化するのか。窓については映像とかかな?なんて思っていると
『さっきから映像って思っているみたいだけど、ほんと旧石器時代ね~。』
と、リカは手を引っ張って、また、部屋の中に入る。
少し照れるオイラ。
『ほら、窓を開けてみて』
リカさんが窓の方を指さして言うので窓を開けてみると
めっちゃ気持ちいい風が入ってくる。木のいい香りもする。
そして家の中に木の葉っぱも入ってきた。
さっきそこにあったのは単なる空間だったような・・・ふたたび頭の中に???の文字が浮かんでくる
『それは、その人の考えを簡単なものなら実体化する技術を使っているものね。大分昔からある技術よ。それ・・・』
少しあきれる顔をしているリカさん。
「すんません。旧石器時代出身なもので・・・」
この先、暮らしていけるのだろうか?と少し不安になるオイラであった。