【第二章】~禁止エリア編~ ②幽霊さん~ご注文は?レイコー~
サンカクター酔いでぐったりしているオイラをリカさんは心配してくれて、しばらく付き添ってくれた。
付き添っている間、リカさんはやること無いのか、部屋の中で、何やら奇妙な動きをしている。何やっているんだろ?と思い
「何をしているんですか?」
と聞いたら、リカさんは、ビクっと驚いた感じで
『あ~起きちゃった?ごめんごめん。今、身体を動かすゲームをしていたところ。身体が最近なまっちゃってね~。』
へ~身体がなまって、あのストレートですか・・・
「いえいえ、続けてください。そういえばゲームってどうやるんですか?」
『ゲームは普通にゲームしたいと思えば、その人にあったゲームが目の前で始まる感じだし、こういうゲームをしたいと思えば、そういうゲームが始まる感じよ。』
「そうなんですね。」
とりあえずこの世界にあるかわからんけど、「リバーシやりたい」って考えてみた。異世界で行うゲームの定番だしね。といっても昔の異世界だけど。
そうすると、目の前にリバーシのボードが現れてスタートを選択すると、リバーシが始まった。
「お~!」
少し感動しながら、リバーシをやってみる。
「YOU LOSE!!!」
負けた・・・もういっちょ!
「YOU LOSE!」
負けた・・・
「YOU LO・・」
負け・・
「YOU・・」
負・
「Y・・」
・・・
・・・さて、次は何のゲームしようかな?
そう思うと、リカさんは、あ、時間だ、帰らなきゃっと言って戻っていった。
ゲームってあっという間に時間が過ぎていくよね~。
もう少しリカさんと話せばよかった。
なんて後悔と、こういう体の弱った時の看病って、彼女のありがたみがわかるよな~なんて思った。彼女じゃないけど・・・
とりあえず、サンカクター酔いから、幾分か落ち着いているし、ゲームも出来ているので大丈夫だという感覚はあるのだが、この異世界、何が起きるかわからないので、とりあえず夜は身体をキレイにして、お風呂は入らず、ゆっくりとベットに横になった。
~~~数時間後~~~
草木も眠る丑三つ時。むくっと目が醒めるオイラ。
この世界に草木はあるかはわからないけど・・・
とりあえず五右衛門ぶろに入って、頭をシャキッとさせる。
五右衛門風呂に入りながら、この世界シャワーないのかな?
なんて思ってしまう。
たぶんシャワーがほしいと思えば、シャワーも出てくるんだろうし、乾けと思えば、乾くんだろうけど、一時的に部屋は水でびしゃびしゃになりそうだし、何となくやめておこうという結論になった。
それより禁止エリアの中に入るには、どう対策を立てていこう?
こっちの方が重要だ。
こっちの人はルールに従うことが普通みたいで、まあ、日本人もそうだけど、、、
こっちはさらにルールへの絶対感があるみたいで、ルールを破るという発想自体がないみたいだし、こういう風に考えているオイラは異端みたいな感じだしな~。
ただ、リカさんは慣れるといったけど、どうしても「食べない」という行為に慣れることはできず、「食べる」という行為を、どうにかして行いたいと思ってしまう。
今日は、「禁止エリア」でやっちまったが、「禁止エリア」の中に行けば、その「食べる」という行為が行える可能性があるのだ。
日本人に生まれて、まさか「食べる」ということに、あこがれるようになるとは思わなかったが。
ただ、「禁止エリア」の中に入る場合にバレてしまうと、銃殺?される可能性があるらしい。それをどうにかしないとな~。
ということで五右衛門風呂から出た後、例のゲジゲジTシャツを着て、敵情視察するか~っていう感じで「禁止エリア」に行くことにした。
~~~~~
「禁止エリア」につくと、この時間にも関わらず、先ほど来たときと同じで、壁によっかかっている人もいれば、談笑している家族などもいる。
ただ種族が異なる感じだ。
主に夜行性と思われる猫族?の人や、フクロウのような鳥族?の人や、ネズミ族?の人などがいる。
ネズミ族は、まんま顔がネズミな感じで、決して夢の国にいる方々のような可愛さはない。
着ている服装も、流行りなのかゲジゲジTシャツ来ているし。。。
ネズミにゲジゲジって、地球上だと発狂レベルだろうな~・・・
ついでに、先ほどいなかったカブトムシみたいなのも、ところどころにいた。
虫って、脳みそないけど会話できるんだっけ?
そもそも樹液ないのに何でいるんだろ?
まあ、異世界だしな~なんかあるんだろな。
そして、なんか透明・・・というかうっすら見えて、背後の岩などが透き通って見える人がいる・・・
なんだ?これ???
あ
これ
幽霊か・・・
そういやリカさんが幽霊がいるって言っていたな。
幽霊は異世界転生ものだとレイスとかそういった感じの敵だか味方だかのキャラクターだったけど、これ、まんま幽霊ですわ。
幽霊は、前の世界で見たこともなくて、見たら確実に逃げ出すだろうな~怖いな~なんて思っていたけど、オイラもつい先日、幽霊になったばかりだったためか、そんなに怖く感じない。
なんかマジマジと見ていたら、パッと消えた。
異世界だし、これは移動したのか・・・
と思ったら、後ろから『何か用ですか?』と、頭に声が響いてきた・・・
「うわ!」
と、思わず声が出たのだが、ここは異世界、ここは異世界、、、と頭の中で何度も復唱して、落ち着け~落ち着け~とブツブツ言って、幽霊は発声器官がないはずだ~と冷静に考えて、オイラも頭の中で
「失礼しました。私はみやびと申します。昨日こちらの世界に転生してきたばかりで、右も左もわからず、この「禁止エリア」に来たのですが、こんな透き通るような(透き通っている)キレイなお肌をもった方を見たのは初めてなので、思わず見とれてしまいました」
『まあ、肌がキレイなんて言われたの、何百年ぶりかしら。ありがとう。わたしは、レイコ~よ。』
まったく見えないけど、何となく頭に響く抑揚で喜んでいる感じがする。
女性だろうな。
というか、名前が関西のアイスコーヒー・・・
ただ、この世界に来てから、リカさん以外と話すのは初めてだ。
すこし嬉しいな。ここは情報収集につなげていこう。
「ここに来るのも初めてなんですけど、この奥は、なんか雰囲気が違いますよね・・・」
『あ~この奥は、禁止エリアの中ね。と言っても、何もないけどね。』
「そうなんですね~何もないんで・・・」
ん?
「っていうことは、中に入ったんですか?」
『中に入るというか、、、私、幽霊じゃないですか~。
こういうジメジメしたところは好きなんです。
奥にいくと、よりジメジメして居心地いいんですよね~。
本当は、あそこより奥には入っちゃいけないみたいで、実際あの暗くなっているところより奥には、なんか見えない壁みたいなのがあって入れないんですけど、道具の展示場から壁をすり抜けて行ってみたんですよ。』
あ~その方法があったか~。って、通り抜けることはできないけど・・・
「さすが幽霊さんですね。通り抜けなんか簡単に出来ちゃうんでしょうね~。」
『いや~それほどでも~。生活の一部というか、そんな感じですので~』
なんだか幽霊さんは、嬉しそうにしている。。。感じがする。
「それで中に入ったら、どんな感じだったんですか?」
『中に入ったら、ほら見えない壁で空気が遮断されて、よどんでいるじゃないですか~。
そのせいかイイ感じでジメジメしていたので、しばらくいたんですけど、特に何もない感じでしたわ~。』
!!!
レイコ~さんは、なんか大事なことを言った気がするが、ここは慎重に話しを進めていこう。
「たしかにジメジメしている感じですよね~。この世界は空調がバッチリで逆に、自然とそういう場所ってないですもんね~。」
『そう!それ!たしかに私たちの周囲は、私たちに過ごしやすいようにジットリしているけど、やっぱり自然とそういういう風になっている場所の方が好きなのよね。
今は、そういう場所って本当にないから、この「禁止エリア」は、私たちにとって人気スポットなのよ。』
「たしかに。僕も昨日こっちに来たばかりなんですけど、なんか全体的に人口的で、お風呂があった時には、すごい嬉しくて。」
『あら、あなたたちってお風呂に入るの?なんだか嬉しいわ。』
「え?レイコ~さんたちって、お風呂はいるんですか?」
少し驚くオイラ。
『いや~私たちは、お風呂に入ることはないけど、お風呂を沸かして、その部屋を湿気で充満させて暗くしてジメジメさせてっていう、極力自然に近い形でジメジメしている空間が好きなのよ』
はい、お風呂という道具を使うのが、幽霊さんと判明いたしました。
『むか~しに転移して来た人族の方に、自然とジメジメとする環境を発生させるものはないかって相談した結果、ジメジメを自然と発生させるには、こういうものがいいと幽霊の知人に伝えて、広まったらしいわよ。』
「それって絵本とかに出てくる定吉さんですか?」
『あら、来たばかりなのによく知っているわね。定吉さんも色々この世界に役立つものや知識をもたらしてくれたけど、その一つがお風呂よ。』
現代のお風呂の役割っていうより、湿気を出すという目的と、その当時の道具で作れるお風呂っていうことで、五右衛門風呂っていう感じになったのか。
というか、そんな昔から、人間と幽霊って交流あるんだな・・・
まあ、定吉さんは考古学者だから、幽霊とかも、あるものとして受け入れたっていう感じかな?
「ところで、奥の部屋には、なんか昔の道具があると聞いたんですけど、何もなかったんですか?」
『そうなのよね~。私も昔の道具が置いてあって、すごい危険って聞いていたから、なんか怖いものあっても触れないようにって思っていたんだけど、、、って幽霊だから触れられないけど、、、特にそういったものは無かったわよ。行ったのと別の部屋なのかしらね~』
衝撃の事実を受けるオイラ。
いったい何のために、こういう観光施設まで作って、さらに侵入した人間は、射殺までする感じで、実際に亡くなった人間もいたと書いてあったのに、道具が何もないなんて・・・頭の中が???になる。
「なんか中に入ると射殺されるみたいなことを聞いたことありましたけど、そんなことなかったんですか?」
『いやですよ~私、幽霊ですよ~。銃を撃たれたところで、銃の弾なんか通り抜けますわよ~。そもそも弾なんて飛んでこなかったけど。』
レイコ~さん笑っていらっしゃる。気がする。
ん?でも、いる位置とかは、国に把握されているんだよな?
入ったら、いる位置から国が判断して、速攻で射殺されるんだよな?
『だから、危険もないですし、私たちも、一部の幽霊だけど、たま~にですけど、この奥のジメジメ部屋に行こうと来ているのですのよ~』
「へ~一部の幽霊さんしか来ないんですね~。こない幽霊さんたちもいるんですか?」
『そうね~私たちの中でも、上の年代だと、禁止エリアの中はけっこう好きなんだけど、下の年代だと、どうもルールに厳格でね~』
へ~ルールに厳格じゃない方もこの世界にいるんだな~と新たな発見。
というか、幽霊さんたちも年齢ってあるんだ。そりゃそうか。
でも、レイコ~さん、たぶん女性だし、なんか年を聞くのもあれだよな~
「そうなんですね~。そういう水分の多い場所によく行かれるので、レイコーさんは、お肌がみずみずしいんですね~(見えないけど)」
『いや~だ~本当にお上手なんだから~』
レイコーさん嬉しそう。やはり女性だろうな~。
『あ、そういえば・・・』