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エピローグ 1 聖女がみた夢は


「ウォン、ウォン」


「ホウホウ」


 ジュエルは燃え尽きた。


 扉の向こうのパーティー会場からは歓声が聴こえる。会場の一同はフラワーに釘付けのようだ。


 ジュエルは嬉しくもあり、何故だか悲しくもあった。ジュエルは、とてもパーティーには参加する気になれずトボトボと帰宅した。


 外には第二王子デニッシュがベンチに腰を下ろし佇んでいた。


「なんで、あんたの従者に譲ったのよ。あんたもフラワーお姉さまのことを好きだったんでしょ」


 ジュエルのその感情は怒りだったのか、情けなさだったのか、八つ当たりだったのか、王子相手に無礼だったが自然と言葉を口にしていた。


「……さあな、なんでだろうな」


 デニッシュは、泣きはらしたジュエルに優しくいった。


 デニッシュはハンカチを差し出したがジュエルはその優しさが気に食わなかった。


 ジュエルは逃げるようにその場から駆け出した。


 清々しい顔をしていたデニッシュを見たら、自分が物凄くみじめに思えたからだ。


「ウォン、ウォン」


「ホウホウ」


 ジュエルには少し時間が必要だった。




2


 ジュエルは一年間引きこもった。


 定期試験の日だけは出席して最速で全教科終わらせた。


 薬の作成は部屋で続けた。他家の貴族に配る必要もなかったので手慰み程度の数しか作らなかった。マロンが工程の九割を行いジュエルが仕上げをした。マロンの薬師としての腕が上がった。


 そのうち、マロンの縁談が決まった。ダイヤモンド公爵家が用意した縁談だった。マロンの実家は、元は商会だったが、潰れてしまい実家には病弱の母が独りで暮らしていた。仕送りをしていたマロンの家に婿として入ってくれるとのことだった。相手は、男爵家の五男で家督からも遠くダイヤモンド公爵家の寄子であった。平均以上の生活は望めるであろう。


 ジュエルは個人資産の半分をマロンに譲渡した。マロンは絶対に受け取りませんといった。


「私が課金できる相手はもうマロンしかいないの」


 マロンは受け取らざるを得なかった。


 マロンがジュエルの元を去ってからしばらくして、ジュエルは《回復》が使えなくなった。




3


 それからさらに一年が経過した。


 ジュエルは本当になにもしていなかった。

この二年の間にジュエルへの面会を求める客は絶えなかった。ダイヤモンド公爵家ではもはや、グルドニア王国の世界中で聖女と名高いジュエルが《回復》を使えなくなった等とは公表できず箝口令を敷いて様子を見るしかなかった。



 聖女ジュエルは、神の御心を悟るため千日の業に入った。世話付き以外の面会は叶わない。



 ダイヤモンド公爵家からの返答はこうする以外になかった。


 ドガアァァァァン


「社会勉強に行くよ、()()()


 ある日ジュエルの部屋の扉を破壊して魔女がやってきた。


「……」


 ジュエルはどうでもいいと返事をしなかった。


「選びな、このまま腐っていくか、聖女のままでいるか」


「なっ! 魔女殿、あまり乱暴ごとは」


 ダイヤモンド公爵が魔女を止めようとした。


「もう一度言うよ。ここで一生腐るか、聖女の人生を歩むか、ああ、そうだね。別人として生きる道もあるよ。背負うもの全部捨てて、ただのジュエルになるんだ。楽になるさね」


「……」


「とりあえず、連れていくからね。弟子なんだから師の手伝いぐらいはしなよ。身体うごかしてから考えな」


 魔女はジュエルを猫のように首を掴んで《転移》の準備をした。


「魔女殿、どうか、どうか! 穏便に」


「公爵殿や、いいかげんに子離れしな。半年後の定期試験には帰って来るよ。各所の言い訳、考えときなね」


 魔女とジュエルは《転移》の光に包まれて消えた。

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