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来客
「 こんにちは。 こちらに、ロジーさんはいらっしゃる? 」
とつぜん、ドアのむこうからよばれて顔をあげると、黒い髪に白い肌が映える女が立っていた。
ドレスの仕立てからみて、金持ちのぶるいだなと見当をつけ、立ち上がる。
「 ―― ぼくですが? なにか?」
新聞社のせまい部屋には、いまロジーしかいなかった。
入ってすぐ接客用のテーブルと椅子があるので、そちらへ女をまねきいれる。
靴音もたてない、すべるような動きで移動した女は、ロジーに微笑みかけながら、椅子にこしかけた。
「 ―― あたし、昼間に《城》をでて街を見物することがなくて。 どこか楽しいところはあるかしら? できれば、若い人たちが集まるところがいいわ」
「・・・・・えっと・・」
『観光案内所』と間違えてますか?というまえに、女が発した『城』という単語にひっかかった。




