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ジャックの頭
「『ヌシ』って・・・まさか!ホーリーの!?」
ウイザナが主とよぶのは、《主従》の契約をしているアルルか、この城の主であるキラ種族のたったひとりの生き残りである、ホーリーしかいない。
キラ種族のホーリーは《最大級の呪い》をつかうことで、みんなに怖れられていたときく。
「 ウイザナ、そうやってネイブをからかうのはよせ」
すぐに信じこむからな、とアルルがテーブルを指先でたたき、お茶の支度を催促した。
ウイザナの使い込んだ真鍮のようなたてがみが、すこしだけ逆立つと、テーブルにポットとカップのセットがあらわれた。
おくれてあらわれた焼きたてのスコーンとジャムに手をのばすディーク種族の男が、あれはジャックが好きで被ってるんだ、と教える。
「 たしかにホーリーは、一度《呪い》でジャックの頭をふっとばしたことがあるが、また生えたジャックの本当の頭は、あのカボチャの中にある」
「『またはえた』!? だって・・・ジャックっておれと同じノーム種族じゃないの?」
そんなことできるかあ?とうたがわしげにネイブもスコーンをかじる。