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いまは
「 あの、もうひとつだけ。 ホーリーがここにいないのなら、彼にさしだされたネイブも彼といしょですか? 彼はいつか、帰れるんですか?」
身をのりだしたロジーに、ティーカップをかかげたディークの、金色に光る眼がむけられた。
「 彼は、 ―― ホーリ―とはいっしょにいないし、この城にいる。 家に帰りたいというのはこのごろ聞いたことがないし、 ―― いまは、わたしの恋人だ」
「・・・・・・そ、」
「ああ、 強引にとか、脅して、などとしたつもりはないが。 それは、まあ、本人にあったときにでもきいてみてくれ。別に閉じ込めているわけでもないし、こんどのジャックの誕生祭りには、また、街にゆくだろうしね」
いにしえの種族が手にしたカップが、エスル・シンプソンのところにあったものと同じだと気づいたロジーは、複雑な気分で、ただうなずくしかなかった。




