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忘れられた城
「 あの・・・それで、ホーリーは? まだ生きてて、ここにいるんですか?」
『ディーク』に『魔法使い』がまだいるとなれば、いるのかもしれない。
「ホーリーは・・・いまはここにはいない。 ―― が、しぶとく生きてはいる」
「いない、って・・・じゃあ、どこに?」
ティーカップをゆうがにつまみあげた男は肩をすくめた。
「わたしはディルとちがうから、これ以上はきみにしゃべらないよ」
「ああ、でも、ひとつだけ、教えてください。 あなたなら知ってると思うんですけど、ずっとジャックのそばにいる女は、スナー種族ですか?」
「 ―― スナー種族なら、この城にいるが、・・・ジャックには、用もないからそばには行かないだろう。 ディルがどういうことを言ったのかはしらないが、ここは、いにしえの種族がおとなしく暮らす、《忘れられた城》だ」




