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みんなが守る理由
「・・・知らなかったよ。 おれ・・・」
「いや、その《契約》はどうでもいいんだ。 たしかにおれたちのじいさんの世代は、それのせいで、あんたたちや城を恐れて悪くも言ってたが、 ―― おれたちは、あんたたちが悪い人たちじゃないってのを、よく知ってる」
「そうよ。 薬だって《種族》によって、よく効くものを分けてくれるし、うちの子どもが夜中に苦しみだしたとき、城をたずねたら中に入れてくれて、薬をもらったから治ったのよ。 そんなふうに、みんな一度は世話になってるし、ウィザナだって、ちいさなこどもが川に落ちそうになったとき、魔法で助けてくれた。 ―― みんな、あんたたちのことが好きだから、《契約》をまもりつづけてるの」
「・・・ほんと?」
え、ちょっとなんか泣きそう、と、真剣な夫婦の顔をみる。




