クロズ種族
そこから、あのころねえ、とためいきのような言葉がもれた。
「 ―― ジャックはもうカボチャをかぶっていて、世界はかたちを変えようとして、まいにちひどい嵐がつづいた。 あたしたち地下に住んでいた者たちも、地下の世界がなくなって上にでてくるしかなくてねえ。 そこでジャックが、自分のかぶってるカボチャみたいに、魔力をこめたこのシェードをつけてくれたんだ。まぶしさによわいあたしら《クロズ種族》にね」
かちかちと指先で水滴の顔をたたく。
「 ところが、 ―― やっぱり地上は、あたしらにはむいてなかったんだね。 仲間がどんどん死んでいった。そこでまたジャックが、この洞窟がある区域ををあたしらに与えてくれて、《紙の資料の管理と整頓》を、まかされたのさ。 地下とちがってここは水気がないけど、このシェードがあれば、問題ないし、いまじゃ古い《クロズ種族》は、あたししかいない。 ここの資料ももうすぐ、あの、図書館っていうところにうつされるだろうね」
あっちには新しい《クロズ種族》が働いているし、と疲れたように、そばにあった椅子に腰をおとした。




